メモリーズコネクト!~プリンセス達の四方山話~   作:上月 ネ子

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嵐の前に立たされるキミたちの進む道は

「これで止めよ――スプラッシュダイブッ‼

 

 

跳び上がったミフユが力強くハルバードを叩き下ろす。

その一撃は強力な雷撃のようで叩きつけられた音は雷が落ちたような轟音だった。

 

衝撃によって騎士達は吹き飛び、地面に墜落して気絶する。

動ける敵はいないことを確認してからミフユは大きくため息をついた。

 

 

「……国家公務員に刃を向けるなんて。まったく、大義名分が無かったら逮捕じゃ済まないわ」

 

「まだそんなことを言っているんですの、ミフユさん?」

 

 

後ろからアキノが呆れたように声を掛ける。

 

 

「サレンさんも言っていたでしょう? 今の【王宮騎士団】に正義はありませんわ。言わばわたくしたちは正義を取り戻すために戦うのですわ!」

 

「その正義がどれだけ強くても世間体には勝てないものよ……」

 

 

あくまでリアリストの視点をやめないミフユ。

 

それをよそに、倒れた騎士達にミサトが駆け寄る。

 

 

「アオイちゃん、彼らを治療するから手伝ってくれるかしら?」

 

「は、はいっ」

 

 

アオイは急いでポーチから薬草を取り出す。

それを見てユカリは不思議そうに声を掛ける。

 

 

「わざわざ回復させるなんて、本当に聖女のような方ですね」

 

 

敵対している相手を助けようとする精神に、ユカリは尊敬の念を感じるが同時にそこまでするものなのか、とも感じてしまう。

 

 

「……彼らは本当にそれが正しいと思って職務を全うされてますから。何も悪いことはしていないんですよ」

 

「……わかりました。なら私も手伝います」

 

「ちょっとちょっと、回復させるのは良いですけど、せめて動きを封じてからにしてもらえますか?」

 

 

倒れた騎士達を回復させようとしているミサト達を見て、ミフユは慌てて騎士達を一人ずつ拘束する。

 

 

「あらあら、流石にそれは可哀想かと……」

 

「何言ってるんですか! 私達は敵対してるんですから、利敵行為はせめて対策してからに……」

 

 

言い合っていると、遠くから雷が落ちたような轟音が地響きと共にここまで届く。

 

 

「……す、凄い魔力だね……」

 

「今の方向って……」

 

 

轟音を聞いて、それが魔法だったと気づいたハツネは冷や汗をかく。

ユカリは息を呑んで、感じた魔力の方向を見る。

 

 

「……間違いないわ。あっちはユウキ君達が潜入してる方よ」

 

「えっ⁉ で、ではユウキさん達は……」

 

 

雷のような魔法を使ったという結論が出て、一同は向こうで何があったのかを察する。

向こうにいるのは……。

 

 

「件のキャルさん、という方でしたか……」

 

「とんでもないわね……これだけ離れても命の危機を感じるほどの威力を出せるなんて」

 

「………………」

 

 

一同が話し合っている中、ハツネは魔力の反応をじっと見つめている。

その表情は何かを思い詰めているようで……。

 

 

「行ってきていいわよ、ハツネちゃん」

 

「えっ⁉」

 

 

それを見透かしたように、ミサトは微笑んでハツネの背中を押す。

何のことかとハツネは惚けようとするが、

 

 

「キャルちゃんの名前を聞いてから、ハツネちゃん随分と気にしていたみたいだから。会いに行きたいんでしょう?」

 

「え、と……。でも」

 

「こっちはもう大丈夫よ。……皆さんも大丈夫ですよね?」

 

 

許可を求めるように、ミサトは【メルクリウス財団】の面々に振り返る。

 

 

「……まあ、粗方障害は振り払えたから、問題ないとは思うけれど……」

 

 

防衛地点へ妨害襲撃する自分たちの役目は、王宮門前の広場に防衛地点から増援を寄越さないようにするため。

防衛には【リッチモンド商工会】は加勢していない以上、精鋭部隊はほぼ全て広場の方に回っているようだから、防衛には増援に人を寄越さないとカスミが推測している。

 

つまり、逆に自分達が広場の襲撃担当に少しずつ加勢していく事も、別の防衛地点へ加勢することも不可能ではない。

 

 

「ほ、ホントにいいのかな……?」

 

「大丈夫よハツネちゃん、ここは先生たちに任せてちょうだい」

 

 

うんうん、とミサトは力強く頷く。

ハツネは少し躊躇ったが、決心したように頷いた。

 

 

「分かった! ミサト先生、行ってきます‼」

 

 

ハツネは背を向け、ビュン、と空を飛んでユウキ達がいる方向へ飛び立っていった。

 

 

「まあ……!」

 

「え、え? ま、魔法を使ってないのに飛んだ??」

 

「ふふふ、不思議な力ですよねぇ」

 

 

【メルクリウス財団】の疑問に対し、ミサトは微笑んで誤魔化すのだった。

 

ただ、ユカリは騎士達を治療しつつも、王宮の方向を見ながら一つ、呟く。

 

 

「タマキさんは上手くやっているかしら……」

 

 

 

 

 

 

 

「オラァ‼」

 

 

カリザは魔力の鞭を器用に使い、騎士を掴まえてそのまま振り回す。

周りにいた騎士達は巻き込まれ、もみくちゃになりながら吹き飛ばされる。

 

 

「ほへ〜。器用だべな〜」

 

「ちょっとカリザ、やり過ぎよ! あたし達はあくまで妨害のために来てるのよ!」

 

 

マヒルはカリザの戦いぶりに感心するが、サレンは過剰な攻撃を咎める。

 

 

「温ぃこと言ってんじゃねえよ。結局やることは変わんねえだろうが」

 

「そうでもないわよ。この人たちはまだ話がわかる方みたいだからね」

 

 

サレンは襲撃の際に、騎士達が自分を見てかなり狼狽えていたのを思い出す。

頭が冷えたところを話をしようと思っていたところに、カリザが過剰に攻撃していたので止めたのだった。

 

 

「それに、八つ当たりみたいにボコボコにするのを放っておけるわけないでしょ?」

 

「……ッ! 見透かしたように言いやがって」

 

 

分かりやすくカリザは顔を顰めるが、それ以上何も言えず、サレンに背を向けるのだった。

 

 

「……ったく、ユウキの知り合いにはこんな乱暴なやつもいるのね」

 

「あ? 喧嘩売ってんのかチビガキ」

 

「だ、誰がチビガキですって⁉」

 

「け、喧嘩は駄目よ〜!」

 

 

サレン達に加勢してくれた【ルーセント学院】の一人ミサキはキッ、とカリザを睨みつける。

喧嘩が始まろうとしているのを傍にいたイオが止める。それを横目で見て、サレンは蹲る隊長格の団員に声を掛ける。

 

 

「話せるかしら?」

 

「……元副団長。何故ですか?」

 

 

何故。

それはサレン達がこうして妨害襲撃していることを指すのだろう。

元副団長がこのようなテロ行為じみた事をするのがよほどショックなのか、話しかけられた騎士は声が震えている。

 

 

「これ以上、あなた達に罪を重ねるような事をしてほしくないからよ」

 

「我々が罪を……? それはどういう」

 

「あなた達は本来守るべきお方に対して刃を向けてしまっているの。元騎士として、それは絶対に止めなければならないわ」

 

 

サレンが騎士を説得している最中、シオリは一歩引いて一息ついている。

 

 

「……何とかこちらの戦いは収まりそうかも」

 

「そだね。話し合いで済むなら楽に越したことはないね」

 

 

ふう、とリンはその場に腰を下ろす。

 

 

「リンちゃん、お行儀悪いよ?」

 

「え〜、疲れたんだからこれくらい許してよ。リマがここにいればもたれ掛かりたいくらいなのに……」

 

「リマ、ってさっき別れたあのモフモフした娘のこと?」

 

 

スズナは【牧場】の面々から別行動した二人のうちの片割れを思い出す。

 

 

「ちょ~キレイなお姉さんもそうだけど、あの二人ってヒデサイのところに向かってったんだよね?」

 

「はい。あちらには、とても強い方が防衛についてますから……」

 

 

シオリはマコト達から聞いたクリスティーナの話を思い出す。

彼女の実力はマコトとカオリの二人がかりでも手も足も出なかったらしく、そんなクリスティーナに対抗できるのはそれこそ()()くらいしかいないだろう、とリマと共に駆けつけることになった少女を思い浮かべた。

 

 

「そういえば、ミソラっちの方は大丈夫かな〜?」

 

「アイツ戦うの苦手って言ってたし、巻き込まれてないと良いけど」

 

 

スズナとミサキは足手まといになると言って戦いから辞退したミソラの事を思い出す。

学院の生徒たちが巻き込まれないようにいざというときは避難誘導すると言っていたが……。

 

 

「ユウキさん達も大丈夫でしょうか……」

 

 

ユウキ達の話になって彼らの事も心配になり、スズメは彼らがいる方向に目を向けた。

その時、空から菫色の光が目にも止まらぬ速さで落ちた。

 

 

「へ……」

 

「うわ、今あっちの方ピカーって光ったし!」

 

「いや、ピカー、どころの話じゃないでしょ‼ 雷みたいだったわよ‼」

 

 

魔法が使えるミサキは過剰に反応し、そちらの方向を向いて顔に焦りが出る。

 

 

「今の、凄い威力の魔法よ。本当に雷が落ちたと思うくらい……」

 

「雷……まさか……」

 

 

それを聞いたサレン、スズメ、カリザは表情が変わる。

一つは剣呑、一つは戦慄、一つは嫌悪。

 

 

「まさか、ユウキ達はキャルに……」

 

「…………っ!」

 

 

ふるふるとスズメは肩を震わせる。

それを見たサレンは何か思うところがあったのか、一つため息をついてその背中に声をかけた。

 

 

「行ってきていいわよ、スズメ」

 

「えっ……?」

 

「スズメは時々【美食殿】の皆と色々やってたわよね。キャルのこともなんとかしたいって、スズメも思ってたんでしょ?」

 

「それは……」

 

 

スズメは迷う。

サレンの側を離れていいのか。自分がキャルを助けようとすることに、彼女は思うところはなにもないのか。

そんな思いはお見通しなのか、サレンは苦笑いして続ける。

 

 

「言っとくけど、たとえ洗脳されてるからってキャルのしたことは許されることじゃないわ」

 

「……っ」

 

「でもね、それ以前に……戻って来ないと言いたいことも言えないのよ」

 

「…………!」

 

 

スズメは目を見開いて、意を決したように強く頷く。

そしてスズメは深く頭を下げて、振り返って駆け出した。

 

スズメを見送ったサレンは、同じく遠くなるスズメの背中を静かに見つめていたカリザにふと目を向ける。

 

 

「意外ね」

 

「……あ?」

 

「あんたならスズメについていってキャルをぶっ飛ばす、みたいなこと言いそうだったけど」

 

「……ほざけ」

 

 

さっきまで激情に駆られて暴れ回っていたのが嘘のように、カリザの声は低く冷たいものだった。

 

 

「仲間を裏切ったヤツの面なんざ誰が好き好んで見るかよ」

 

「……っ??」

 

「ど、どうしたのよアンタ……」

 

「カリザ君……?」

 

 

サレンだけでなく、周りの仲間たちもその冷たい態度に困惑するのだった。

 

 

 

 

 

一方、王宮内。

 

広場や防衛地点で戦いが始まっている頃、王宮内の防衛騎士の死角を辿りながら猫の獣人族――タマキは保管庫を目指していた。

 

 

「アユミには感謝しなきゃいけないにゃ……」

 

 

タマキはたい焼き屋台を営んでいるその裏で、義賊としてランドソルの影を渡り歩いている。

だがそんな彼女にとって、アユミの情報収集能力とスニーキング能力は自身が井の中の蛙であったことを自覚するには十分すぎるほどのものだった。

 

 

「けど、あたしだって王宮に潜入したことないのに、どうやってアユミは潜入ルートを見つけたのにゃ……?」

 

 

正直タマキは今でも騎士団員に見つからないかヒヤヒヤしている。

だがアユミは何てことはないかのように、自分に潜入ルートと死角の取り方を教えてくれた。

その時のアユミの平然とした態度にどこか薄ら寒い何かを感じながら、タマキは奥へと進む。

 

地下へと進む通路を気配を殺しながら進み、タマキはそこで足を止める。

保管庫の傍に誰かいるからだ。

 

マントを羽織った青い服装の男。

あの外見は確か……。

 

 

「……ん、おっと。どうやら同じ考えをしたどら猫がいるみたいだね」

 

「…………っ」

 

 

タマキは声を出しそうになった。

男はこちらを振り返るが、死角を考えると視認はできていないはずだが……。

 

 

「あー、警戒するのも無理ないけど、僕は君の敵じゃないよ。むしろ手助けしに来たのさ」

 

「………………」

 

「君が狙っているものは今僕が持っている。僕が渡しに行くよりも、君が持っていったほうがいいと思う。だから、そろそろ姿を見せてくれても良いんじゃないの?」

 

 

そう言いながら、男は腰にかけていた鞭を取り、タマキが隠れている場所を叩く。

タマキは反射的に飛び出して避けてしまった。

 

 

「…………ッ」

 

「……思ってたより若い人が出てきたな」

 

「ふん、若いはお互い様にゃ、【王宮騎士団】の現副団長」

 

 

現副団長――オクトーは肩を竦める。

 

 

「ランドソルを出る前に退役届は出したはずなんだけどな……」

 

「知らないのにゃ? アンタ今【王宮騎士団】じゃ行方不明扱いで秘密裏に捜索されてるにゃ。退役届は正式に受理されてないと思うにゃ」

 

「え〜、ブラックすぎでしょ」

 

 

退役届が受理されてない可能性が高いことに、オクトーはげんなりとした表情をする。

 

 

「ま、僕のことはいいや。それよりもほら、これ受け取って」

 

 

オクトーはそう言って袋をタマキに突き出した。

怪訝な表情でタマキはそれを見つめていると、オクトーは口を開く。

 

 

「お姫様の『王家の装備』を確保しに来たんでしょ? この中に入ってるよ」

 

「何で行方不明のアンタがそれの事を把握してたのにゃ?」

 

「秘密。僕にも僕のコネクションがあるとだけは言っておくよ」

 

 

ほら、とオクトーは一歩前に出て袋を渡そうとする。

 

 

「ちゃんと本物だよ。何なら中身を確認して良いよ。後で偽物掴まされた、なんて言いがかりつけられたくないしね」

 

「どういうつもりにゃ、なんで【王宮騎士団】のアンタが、こんな……」

 

 

【王宮騎士団】からすれば明らかな利敵行為……、いや国家反逆に加担するような暴挙に等しい。

自然とタマキの表情に怪訝な感情が浮かぶ。

 

 

「簡単な話さ。これ以上あいつらの思い通りになるのが不愉快ってだけ」

 

「あいつら?」

 

「僕のことはいいんだよ。というか早く受け取ってくれない? 僕は早くランドソルを出たいんだ」

 

「……何を焦ってるのにゃ?」

 

 

タマキはオクトーの表情に焦りが浮かんでいるのを察した。

苛立たしさすら感じさせるオクトーは、吐き捨てるように返した。

 

 

「目をつけられてるんだよ。そいつに勘付かれる前にランドソルを離れたいんだ。さあ、早く受け取って」

 

「………………」

 

 

釈然としない気持ちはあるが、タマキも急いでいるので警戒しながら突き出された袋を手に取った。

それを見て、重荷から開放されたようにオクトーの表情から険が少し抜ける。

 

 

「確かに渡したよ」

 

「……礼は言わないにゃ。完全に信用したわけじゃないからにゃ」

 

「いらないよ。早くお姫様のところに行ってきたら?」

 

 

オクトーは足早にこの場を離れようとして、ピタリと足を止めタマキに振り返る。

 

 

「そうそう一つ忠告。誓約女君(レジーナゲッシュ)もそうだけど、()()も負けず劣らずおっかないから気をつけてね」

 

 

それを最後に、オクトーは走り去っていった。

 

 

「彼女、それに誓約女君……誰のことにゃ?」

 

 

オクトーの最後の言葉にタマキは首を傾げるのだった。




タマキ
前作「プリンセスコネクト!」より続けて登場する、たい焼き屋台の猫のお姉さん。しかしそれは仮の姿、本当の彼女はランドソルの影を渡り歩く裏の斥候である。
自らを「ファントムキャッツ」と名乗り、後ろめたい貴族や有権者から金や宝物などを盗み出す義賊としてランドソルの住民からヒーローとして陰ながら親しまれている。
そんな彼女に目をつけたのがアキノであり、【メルクリウス財団】に招かれ義賊活動の支援を受けることとなる。なお、とある剣士やアルバイターに目をつけられているようだ……。



ミソラのキャラストーリーを見た作者
「ウワアアアアアアア!!!▂▅▇█▓▒░(’ω’)░▒▓█▇▅▂」

もうね、私の癖にグサグサと刺さりましたよ、あれは。
確かにミソラならやるだろうと察してはいましたが、本当に公式でやってくれるとは思いませんでした。
ただ、一つ思ったのはミソラのあのキャラストも終炎後を想定して書かれているみたいですし、やはり再構築ではなくリセットポイントが更新されただけなんでしょうかね。
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