メモリーズコネクト!~プリンセス達の四方山話~ 作:上月 ネ子
次回以降は私の独断と偏見でヒロインをフォーカスを当てていきます。
ランドソル周域にあるとある湖畔。
木々に囲まれ小動物の鳴き声が小さくさえずるこの場所に一組の男女がいた。
「ふふ、キミも随分と手際が良くなったじゃないか。もしかして、私が誘わない日も自分でやっていたりするのかい?」
> そうだね。ご飯の調達に、ちょっとだけ。
湖畔に釣糸を垂らす魔族の少女――レイと続けて釣竿を振りかぶるユウキ。
今日はこの二人は湖畔に来て釣りをすることになった。
というのも、とある筋からこの湖畔にはかなり大きな魚影が確認されたとの事で、ならば釣り上げてみよう、とレイの一声で足を運ぶことになった。
「そうなのか。ならどれくらい上達したのか私がこの目で見極めるとしようか」
> お、お手柔らかにお願いします。
「それはキミ次第という奴だ、ふふ」
> でも、こんな湖にそんな大きな魚がいるなら、すぐに見つかりそうだけれど……。
「さて、巣穴にいるのかそもそもその情報が嘘なのか……。後者を考えても仕方がない。釣り人はいつだって釣糸を垂らすところから始まる」
しかし釣りを始めてから数時間、釣果は芳しくないものだった。
> つ、釣れない!
「小魚一匹引っ掛からないとは……。まあこんな日もあるかもしれないが……」
> もしかして、湖の底にいて、水面に上がってこないとか?
「可能性はあるね。日光を嫌って他の魚より深いところを泳ぐのもいる。だが、そういう魚はこんな湖にではなく、大抵は海にいるものさ」
もしかすれば例の主もその手の魚かもしれない。
ならば一度出直そうか、とレイ達が腰をあげたとき、湖の中心部から泡がブクブクと沸き上がる。
「……! なにか来るぞ!」
すかさず二人は剣を抜いて構えるが、そこから出てきたのは――
「――ぷはあっ! うう、やっぱり『王家の装備』を着けてないと長く潜れそうにないですね……」
「なっ! キミは……」
> あれ、ペコさん? いつの間に?
「ん、あれ? ユウキくん? それに、そっちにいるのはレイさんでしたっけ? 二人とも奇遇ですね☆」
水面から顔を出したのは、日光を受けてよりキラキラと輝く濡れたハニーブロンドのペコリーヌだった。
ペコリーヌはこちらに泳いで近づいてきて、
「もしかして二人も湖畔の主を求めてきたんですか?」
「その話、ペコリーヌも聞いたんだね。しかし素潜りとは、中々豪快なことをする」
「んー、でも時間の無駄だったかもしれませんね。奥の方に巣穴っぽいものがあって、日が傾かないと出てこないですねあれは」
「断言するね。いったいどうして?」
「だってその魚影を見たって話したのは私ですよ」
「なにっ?」
「バイト先の店長に世間話として教えたんですが、どうやら噂になるくらいには広まったみたいですね」
目撃者が自分達の知己だったことで噂の信憑性が上昇したレイ達。
ここからペコリーヌにも協力してもらい、湖畔の主に挑むことになった。
「それで、ですね~…………」
> ? どうしたのペコさん?
「キミは早く席をはずしたまえ! 彼女が着替えられないだろう‼」
多少のアクシデントはユウキの日常茶飯事である。
日が傾き、湖の水面が黒くなっていく頃、ユウキ達三人は改めて釣竿を振りかぶる。
「それにしても、こうして誰かと釣りをするなんて思いませんでしたね。ユウキくんなんて前に手掴みで魚を捕ろうとしてましたし」
> ああ、そんなこともあったね。
「そんなこともあったね、じゃないだろう。キミは私と出会う前は何をしていたんだい?」
「まあまあ。記憶喪失だそうですし、釣りというのが分からないのも仕方ないですよ」
そんな他愛もない話をしながら釣糸を垂らすこと数十分。
変化が起きたのは――ユウキだった。
「! キミ、糸が引いているぞ‼」
> くっ――ッ‼
釣竿を持っていかれないように全身で抗う。しかし糸は切れないだけでこのままでは釣り上げることも難しい。
「ユウキくん、大丈夫ですか⁉」
> 無理、かも……っ。踏ん張ってるのが限界!
「分かりました、なら――!」
「……? 何を……」
ペコリーヌは立ち上がり、長剣を腰から抜いて力を溜める。
そして振り上げて、
「やああぁぁぁぁッ‼」
長剣を水面に叩きつけた。
「なあっ――⁉」
レイの驚愕をよそに、ペコリーヌの強撃を受けた水面は割れたように二つに分かれ、湖畔の主と思われる巨大な何かが姿を表した。
驚いたそれは体が跳ね上がり、その反動を活かしてユウキは思い切り陸に引き上げた。
引き上げたそれはビチビチと何度か跳ねたあと、立ち上がった。
「こいつ、魔物だったのか!」
顔と胴体は間違いなく魚のそれだが、ヒレの代わりに両腕が生え、屈強な二本足で立ち上がる魚と形容して良いのか疑問が残る姿の魔物は、釣り上げられたのがご立腹なのかその場で地団駄を踏む。
「中々の強敵と見るが……」
「ユウキくん!」
> 分かってる!
ユウキは剣を構え、強化の力を使う。
ペコリーヌは前に出て魔物の振りかぶった拳を剣で受け止め、弾き返す。
その隙に――
「切り伏せる――スラッシュストームッ‼」
がら空きになった懐に雨霰のごとくレイの剣閃が命中し、魔物は絶命した。
「……あ、あの、本当にそれを食べるのかい?」
「そうですけど? さっき力を使ってお腹ペコペコなんですよぉ~」
「いや、キミの空腹事情を尋ねたのではなく……」
「あっもしかしてレイさんもお腹すきましたか? だったら三人で分けましょうか☆」
「い、いや私は遠慮しておこう!あらかじめ用意していた軽食もあるからな、うん」
貴族の出であるレイにとって魔物を食すなど空前絶後な話である。
しかもユウキも混ざって焼いた魚の魔物を食べようとしているのを見て軽く眩暈がする。
「……そういえば、キミ達【美食殿】は世界中を食べ歩くことをモットーとしているのだったか。魔物も範疇だったとは……」
「魔物はキチンと調理すればどんな魔物でも美味しく食べられますよ! 獣系から鳥系、今回のように魚系やゼラチナ系、後は虫系とか」
「ぜ、ゼラチナに……む、虫⁉」
虫への抵抗感は無いが、それを食すとなると話は変わってくる。
ここにいないギルドメンバー二人が聴けば卒倒するような話だ。
「ゆ、ユウキはよく食べていられるね。普通そういうのは敬遠しそうだが」
> 慣れたから。
「そ、そうか……」
あまりに含蓄のある短い言葉に二の句が告げられないレイだった。
(しかし……)
魔物の肉を美味しそうに頬張るペコリーヌとユウキを見て、レイは心の中に何かが燻っているのを自覚した。
本来ユウキは【美食殿】の一員であり、この風景が正しいものであるというのは分かる。
分かるのだが……。
(一体何なんだろうか、この釈然としない気持ちは……)
心の中にぽっかりと穴が開いたような虚無感。しかしまるで大切なものを奪われたような気持ちになるのは的外れである。
にもかかわらず、そう思わずにはいられない。
ユウキの居場所は――
「ふう…………」
そこまで考えてレイは首を振った。
> どうしたの、レイ?
「……いや、何でもないよ」
レイは居心地が悪くなり、一足先にその場を退散することにした。
「……全く、私はこんなにも卑しい女だっただろうか」
ユウキがペコリーヌと――いやレイやユイ、ヒヨリ以外の誰かと楽しそうにしているのが気に入らなかった。
どうしてこんな感情が芽生えるのかは分からない。
ただ、彼の隣に自分達がいないこと。
それがあまりにも不自然に思ったのは何故か。
「………………………」
叶うのなら。
ユウキはレイの手を、取ってくれるのか。
レイ
前作「プリンセスコネクト!」でのメインヒロインの一人。青髪と黒い角が特徴的で、細身の片手剣でスピードを用いて強力な攻撃を放つ。
ギルド【トゥインクルウィッシュ】のメンバーの一人で、最初はギルドに所属することは否定的だったが、ヒヨリやユイとの出会いを経て考えが変わりつつある。
元々は貴族の一人娘だったが、貴族社会を目にしたことでこれからの人生に絶望し家出をする。自分一人だけでも生きていけることを証明すべく自己研鑽に励む。
思ったより早く筆が進んだので投稿できました。
次回は誰にするかな……。現時点で未定ですが、試しにアンケート機能を使うのも手かもしれませんね。
次回のヒロインキャラはこの中で誰をメインにしてほしい?
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アオイ
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キョウカ
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クルミ
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ツムギ
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マコト