メモリーズコネクト!~プリンセス達の四方山話~ 作:上月 ネ子
気づけばもう二周年ですね。
アンケートに則り、大人になりたいツンデレなあの少女がメインのお話です。
キョウカという少女はとても真面目な子どもである。
学校での成績もとても優秀で、模範的な素行で周りからの信頼も厚い。
だが、型にはまった考えが揺るがず時折融通の利かない言動や行動を取ることもある。
全ては正しい大人になるための適切な手順であると本人は考えているようだが……。
だがそれは一日でも早く大人になりたいというキョウカなりの願いでもあり、そうさせる原因たる人物が最近彼女の心を掻き乱す。……当の彼が自覚ゼロというのは最早ご愛嬌。
そんなキョウカの最近の悩み。それは――
「あっ、あの人は……」
ある日エルフの森を散歩しているキョウカが偶然見つけたのは、保育園の先生をしているミサトと一緒に木の実を摘んでいるユウキの姿だった。
「そういえば、ミサト先生の保育園でお世話になってるって……」
事情はいまいち把握できていないが、記憶喪失のユウキをミサトが保育園へ迎え入れたとかなんとか。
仮にもキョウカより年上なのに、どうして保育園に通うことになるのか。
「だいたい、あの人はわたしたちが色々と教えているのに……」
リトルリリカルではミミの提案でユウキに絵や勉強を教えているのに、今更ミサトから何を教わるつもりなのか。
大人なのに恥ずかしくないのか。
「…………っ」
何よりも、キョウカよりずっと大人のミサトに世話になっているのが納得できない。
どうしてそう思うのか考えようとして止め、別の事を考えようと頭を振っていると、木の実採取を終えた二人がキョウカの方へと歩いているのに気付き、キョウカは慌てる。
木の影に隠れるように立って二人の事を見ていたキョウカは端から見れば完全にへんたいふしんしゃである。今すぐ逃げようと踵を返して走り出すが、木の根に躓き盛大に転んでしまった。
当然、近くまで迫っていたのでその音が届くわけで。
「……あらあら、キョウカちゃん。大丈夫かしら?」
> もしかして転けたの?
「~~~~~~っ!」
普段は超がつくほど鈍いくせに、こんな時だけ察しが良いユウキ。キョウカは真っ赤になって体を丸めてしまう。
「あらあら、もしかしてどこか痛むの? 大変だわ、すぐに治療しないと」
「えっ、いえ別にそういう訳じゃ……」
「ひとまず回復魔法をかけて、ガーゼとかは保育園へ戻ってからにして――」
キョウカの主張を意に介さず、彼女に回復魔法を施すミサト。ばつの悪い顔をしながら、隣に立つユウキに助けを求めて見つめるも、
> 悪化してからじゃ大変になるよ?
と、含蓄のある言葉に嗜められるのだった。
あれよあれよと、キョウカは保育園へ連れてこられ、布団に寝かせられる事になった。
別に本当に怪我をしたわけではないので、まるで仮病を使っているみたいでキョウカは良心が痛む。
ミサトに一声かけてから出ていこうと、保育園を歩き回ると、何やら誰かの声がキョウカの耳に届く。
「あ…………」
声がする部屋を覗くと、絵本を開いて読み聞かせるように話すユウキの姿と、うとうとと布団に寝転がる小さな子ども達がいた。
子ども達が寝付いたのを見てユウキは絵本を閉じ、音を立てずに立ち上がると、部屋を覗いていたキョウカと目が合う。
> キョウカちゃんも読みたいの?
「そんなわけないじゃないですか……」
キョウカはもう絵本を読んで喜ぶような年ではない。
静かに抗議しながら疑問を口にする。
「いつもこういうことを?」
> ミサト先生が忙しいときは、こうやって手伝ってるよ。
「……そうですか」
キョウカの中では子ども達と一緒にミサトに読み聞かせられて喜んでいる彼の姿が思い浮かんだが、存外大人らしい事をしていたのだと感心する。
> ミサト先生が教えてくれてね。お陰で絵本を読み聞かせられるようになったんだよ。
「自慢気に言うことじゃないですよ……」
> 今度【リトルリリカル】の皆にもしてあげるよ。
「だから必要ないですっ」
大きな声で抗議してしまって、口を押さえる。ユウキとアイコンタクトで部屋の外に出て会話を続ける。
「それにしてもその絵本、持ってきちゃいましたけど、良いんですか?」
キョウカはいまだユウキに持ち運ばれている絵本を指して質問する。
> 元々保育園にあったものじゃないから……。
「え? じゃあそれは……」
>【サレンディア救護院】から借りてきた。
「ああ……」
あの優しくて大人っぽいエルフの女性を思い出す。キョウカも彼女と同じエルフである以上、サレンの様なしっかりした大人になりたい、と感じる一方、そういえばこの人はあのお姉さんと同じ場所で暮らしているんだったっけ、とまたしても納得のいかない気持ちが沸き上がる。
思えば救護院の子ども達とも仲が良く、彼女がママなんて呼ばれているんだから、ユウキはどんな立場に見られているんだろう、と考えて想像に難くない。
「ユウキさんってミサト先生やサレンさんみたいな人がいいんですね……」
> はい?
「…………って、わたし何を……⁉」
気づけば思ったことが口から出ていた。だが何故だか訂正する気があまり起きない。
ユウキと仲の良い年下の女の子は、知っている限りでは自分たち【リトルリリカル】や救護院の子ども達、後は彼といつも一緒にいるというコッコロくらい。少なくともキョウカは彼から大人の女性扱いを受けたことはない。
対して、ミサトやサレン、ユウキが所属している【美食殿】とやらにも彼と同年代の女性がいるらしい。ミサトは彼に世話を焼いているし、サレンは一緒に暮らしている。同じギルドなら仲が悪いわけがない。
「なんだかずるいです、大人の女性ばかりと仲良しで……」
結局はこれがキョウカの本音だった。自分はまだ八歳。今のユウキと同い年になるには十年くらいは必要である。
しかし、十年なんて経てば彼だって特定の女性と結婚しているかもしれない。ユウキには仲のよい同年代以上の女性の知り合いがたくさんいる。
何年経っても追い付ける気がしない。
「ずるいです、ずるいです…………っ」
> 良くわからないけど、僕は全然大人になれていないから、皆に迷惑かけてばっかりだよ。
「え…………」
> だから、時々思うんだよね。僕よりずっとしっかりしてるキョウカちゃんが羨ましいって。
「……こ、子どものわたしを羨ましがるなんて、おかしいです!」
> それでも、大人になりきれない僕は、そう思うよ。
「大人に、なりきれない……」
記憶喪失が根深い彼の言葉は、まだ子どものキョウカにも重く感じられた。
…………キョウカは、魔が差してこんな言葉が出てしまった。
「……だったら。だったら、わたしと一緒に、大人になる努力をしませんか?」
> キョウカちゃんと?
「わたしだって今すぐにでも大人になりたいです。でも、わたしはまだ子どもです。だから、せめてユウキさんと一緒に大人になりたいですっ」
――約束してくれますか?
「うう…………」
思い返して、キョウカはとんでもなく恥ずかしい約束をしたのでないかと、顔が真っ赤になる。
ユウキはあまり良く解ってなさそうな顔で頷いたが、それが余計に彼女の羞恥心を逆撫でする。
> 大丈夫?
「今はほっといてください……」
誰のせいでこうなったのか。
流石に八つ当たりだろうか、と行き場のない怒りが心の宙を舞う。
空気を変えるべく、キョウカは話題を絞り出す。
「さ、参考までに聞きたいんですけど、あなたの知り合いに、わたし以外にしっかりした年下の女の子はいるんですか?」
> いるよ。コッコロちゃんとかがそうだけど。
「何度かその名前を聞いたことがありますが、わたしより少し年上なんですよね。どんな人なんですか?」
ユウキはコッコロについて語り出す。
手料理がいつも美味しい。炊事洗濯はユウキの分までしてくれる。お金のやりくりができる。抱き枕にすると温かい。エトセトラエトセトラ……。
以上の事が、一緒に暮らしている上での日常茶飯事となっている。
「年下の女の子に何をやらせてるんですか、このへんたいふしんしゃさん~~~~~っ‼」
コスモブルーフラッシュがユウキに炸裂した。
キョウカ
前作「プリンセスコネクト!」から続けて登場している小さな女の子。水や氷の魔法を駆使して強力な攻撃を放つのが彼女の十八番である。
学校で習った知識が彼女の思考の型になり、ユウキの奇天烈な行動や言動をよく誤解してしまい、「へんたいふしんしゃさん」等と揶揄する。
真面目で友達思いな性格で甘いお菓子には目がない。自分が子どもっぽいと思うところがあり、一日でも早くユウキと同じくらいの大人になりたいと願っている。
という訳で、ギリギリ間に合いました(?)。アンケートに則りキョウカちゃんです。ハロキョはいません(泣)
ちょっとチョロいところが何度か目につくんですよね。そこがまた子どもっぽいと感じる要素の一つなんですが。
さて、次回なんですがアンケート結果に準じて次はマコトをメインにしようかとか思ってたんですが、ちょっと別の子を思い付いたので、独断でそちらを優先したいと思います。マコトはその後にでも。
それではプリンセスコネクト!Re:Dive二周年おめでとうございます‼