【完結】借金から始まる前線生活   作:塊ロック

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争奪戦が終わるとどうなる?

知らんのか?…………シリアスが始まる。


指輪争奪戦②

 

「トカレフちゃーん!どこに行ったのかナー?」

「ノーススター、お前まで探してるのか」

「…チッ、トーンか。野郎に興味は無いわ」

「相変わらずだな…」

「それよりトカレフちゃんよ!見てない?」

「…あそこに居るのは?」

「あれっ…ちょっと、アレダミーじゃない」

「………待て、何で見分けが付くんだお前!?」

「リボンの色よ」

「へ、へぇー…」

「あーん、ダミーでも可愛いなぁ。一人貰って良いかなぁ?鍵の掛かる所にずっと閉じ込めて愛でてたいよう」

「倒錯しているのか…!?」

「危険な奴だ。生かしてはおけない」

「あ、スコーチさん」

「拙者、無垢なる人形達を守護する侍…義によって助太刀致す」

「えっ、ちょっと、何よ、ギャー!!」

 

………廊下からそんなやり取りが聞こえてきた。

 

とりあえず、自室のロックを外す。

…暗い室内の隅に、白いシルエットが蹲っていた。

 

「見つけたぞ」

「指揮官…」

「全く、君は悪い子だな…それ、渡してもらえるかな」

 

トカレフが、ポケットから包みをとりだす。

…手が震えている。

 

「指揮官は、これを誰に渡すか…決めてるんですか」

「…決めてない」

 

本当だ。

というより選べる訳がない。

 

覚悟を決めるとは言ったものの、人形達は戦友だ。

 

「…私が選ばれる訳ないって、思っちゃって」

「どうして?」

「だって、WA2000さんが居ます」

「…相棒?それこそ無いよ…アイツとは一蓮托生。ずっと一緒にやってきた…それだけだ」

「…どうしてそんな事が言えるんですか!?あの人は、あの人は…」

 

トカレフの言葉が、力を無くしていく。

 

「…私が、言っちゃいけない事です」

「そう、か。…なぁ、トカレフ」

 

トカレフの隣に座る。

…トカレフは頭を俺の肩に乗せて、体重を預けてきた。

 

「今、辛い?」

「…」

 

彼女の心の傷は、まだ癒えていない。

俺に依存して誤魔化してきただけ。

 

「…ジョージさんは、私が、迷惑でしたか」

「その聞き方は狡いなぁ…。俺は君にずっと助けられてきた」

 

最初の襲撃の時、ネゲヴ小隊と共に駆け付けた時から、この子はなくてはならない存在になっている。

 

「俺には君が必要だよ」

「なら…私にこれを、くれませんか」

「…駄目だよ。渡せない」

「どうして!!」

「…が、無い」

「…え?」

 

我ながらとても情けない事情が、そこにあった。

 

「君を買うだけの金が、無い…」

「…は?」

 

そう。

誓約システムは、所有権を買い取る事。

この指輪だけあっても、IOPに申し立てしなければ意味がないのだ。

 

「…………………はぁ。ジョージさん。正座」

「え?」

「せ・い・ざ!!!」

 

…コンクリートの上に正座させられた。

とても痛い。

 

「すぅー…………何なんですか!?女の子があなたの事好きだって言ってるのに、ほんと、何なんですかあなた!?信じられない!!」

 

感情が爆発したように捲し立てられた。

 

「ごめん」

「謝ったって許しませんからね!?いつもそうです!!貴方は!心配させて、大怪我して、死にそうになって!倒れて気を失って!そのくせ体質まで変わって!!何で懲りないんですか!?何で辞めないんですか!?……………………何で、怖くならないんですか」

 

お互いに前を向いてるので表情はわからない。

 

「怖いさ。死にたくない」

「じゃあ、どうして…」

「俺が怖がって何もしなかったら、周りに取り返しの付かない事が起きるかもしれない」

 

立ち上がる。

トカレフの手を引いて立たせた。

 

「借金はいつか返せる。けどな、人の命は、誰かの記憶は、いくら金を積んだって返ってこないんだ」

 

だから、後悔だけはしたくない。

だって俺は、

 

「どうしようもないくらい、馬鹿な男だからな」

「本当ですよ…バカで、女の子にだらしなくて、たまにカッコよくて、でも締まらなくて」

「半分以上貶してるね?」

「…私の、大好きな指揮官です」

 

…いい加減、なぁなぁは止めよう。

彼女達の想いに、応えないといけない。

 

「ありがとう、トカレフ。最低だと思ってもらっても構わない…もう少し、待っててくれ」

「…本当に、仕方のない人ですね」

 

トカレフから、包みを受け取る。

 

「あ、でもとりあえず見せてください」

「え。取るなよ?」

「取りませんって!」

 

包みを開き、ちょっと豪華な箱を開く。

 

「「あれ?」」

 

銀色に輝くリング…ではなかった。

光を吸い込むほど、黒い。

 

真っ黒なリングがそこにあった。

 

「…何だコレ。いくらなんでも趣味が悪いぞ」

「私…知らなかったとは言え、こんな物を…」

「あ、ちょっと、泣かないでくれよ…」

 

しかし、ペルシカは何でこんなものを…。

 

「しきかーん?404小隊が来ましたよ〜…あら、修羅場だったかしら?」

 

…扉を開て、わざわざそんな事を言ってきた奴が居た。

 

「え"っ、45…?早くない?」

「ふふっ、会いたくて来ちゃった。ペルシカから連絡も来てるよ」

「あ、あの…」

「あー…とりあえず、行こうか」

 

何だこの状況。

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

『久しぶりね、ジョージ指揮官。指輪が届いたと思うけど…どうだったかしら?』

「一度死んでみたらどうだ?」

「しっ、指揮官、抑えて…」

 

司令室のモニターに向けてガンを飛ばす俺と、それを宥めるトカレフさんという図。

 

45は後ろの机に座ってほぼ杖を付いていた。

 

『あれね、対鉄血ハイエンド用兵器のプロトタイプよ。データ取りの依頼も兼ねて送ったわ』

「事前に告知くらい欲しかったよ」

『…あれ?45、言わなかったの?』

「ナンノコトカシラネー」

「うぉい!!」

 

こいつの差し金かよ!!

 

「しかし、何で指輪なんだよ」

『戦術人形の力を増幅出来るなら、逆も出来るかなって』

 

まぁ、確かに…一理ある…が。

 

「…これ、ハイエンドに付けてやらなきゃいけないんだよな」

『まぁ趣味で作ったものだし』

「この野郎…」

 

天才とナニカは紙一重って本当なんだな…。

ハイエンドとの戦闘が多いこの地区へ送るのは確かに妥当なんだが…。

 

『本題はタイタンのテストよ』

「え、まだ何かやらせるのかよ」

『あれ、一応介護用パワードスーツで申請通してるから日常生活で身に着けてるデータが欲しいの』

「何でよりによってそんな方法取った!?」

 

あれバリバリの戦闘用外骨格だろうが!?

 

「…まぁ、金貰ってるし良いけど。いつ来るんだ?」

『ちょっとこれやってみたかったのよねー。もしもしパイロット?座標、確認してる?』

 

…あ、凄く嫌な予感。

 

「指揮官…外にヘリが」

『ドロップシークエンス開始!』

()()()()()あの馬鹿!?」

『了解、ドロップシークエンス開始!』

 

あー、すっげぇ聞いたことある声…。

…ん?45が目を見開いて外を見てる。

 

「…あれ、45は初めて見るっけ」

「なん、なの、コレ」

「ペルシカが俺用に外骨格作ったんだってよ。これはそいつの搭sry」

 

『『タイタンフォール!!』』

 

ずがん!!

物凄い音がして窓の外に何か落ちたのだった。

 

『久しぶり!相棒!あたい会いたかったよ!』

「…40…?」

 

45が呟いた声が、いやに鮮明に聞こえた。

 

 

 

 


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