「貴方も、私が逃げているのに何故真っ直ぐ追わないんですか!!」
「えっ、何で俺も怒られてるの」
『指揮官、WA2000から通信だよ』
「うっわ、このタイミング。取りたくねぇ…」
目の前で絶賛乱闘中のエージェントとアーキテクト。
それを見てるしかできない俺。
何この光景。
「あー、もしもし?」
『ジョージ!アンタ今何やってんの!?さっさと連絡入れなさいよ!』
「ほっといて悪かったって」
『AR小隊がずっと探し回ってたのにアンタだけ居なくなるんだから、その、心配、したじゃない』
「ごめんな相棒。大丈夫だ。それより仕事の時間だ」
『…フン。OK相棒。見えてるわ…って何でハイエンドが増えてるのよ』
「俺に聞くな。それじゃ、頼んだぞ」
通信を切る。
さて、と。
「で、お二人方?悪いんだけど遊びは終わりだ」
「なん」
銃声。
寸分違えずエージェントの左足を撃ち抜いた。
「!?」
また、違う方角から飛んできた弾丸はアーキテクトの右腕をふっ飛ばした。
「ぎゃぁぁぁぁ!?腕持ってかれたぁぁぁぁ!?」
「手荒い。な、春」
『ジョージ、戻ってきたらお話があります』
「…ハイ」
「まさか、この地点が計算のうちだと…?」
「さぁな?」
地に付すエージェントの目の前に立って、笑う。
「あの時とは立場が逆だな」
「あの時は、まさか貴方がここまで出来るようになるとは思いませんでしたよ」
「ま、少しは相棒の溜飲も下がったかな」
「…この義体は潜入用。大してデータもありませんし…」
かちり、と嫌な音がした。
何かの装置が起動したような。
「要件が済めば自爆します」
「……………ばっか野郎先に言え!!!」
「ちょっ、エージェント!?私までまきこむじゃん!!?」
「エッお前は潜入用じゃないの!?」
「死ぬほど痛いじゃん?!」
「鉄血って馬鹿なんじゃないのか!?」
慌ててアーキテクトを蹴飛ばして屋上から飛び降りた。
屋上で小規模な爆発が二回起こる。
…建物、壊しちまったな…。
『反応、ロスト。特に何も掴めなかったね…』
「骨折り損か…」
二人で為息を吐いた。
「居たわ、指揮官よ」
「ん?…ああ、AR-15か。お疲れ様」
爆発を聞き付けて、AR小隊が集結した。
「指揮官!ご無事ですか!?」
AR-15がそう言うやいなやM4が飛び込んできた。
受け止める…が、薬の効果が切れたので俺も吹っ飛んだ。
「ぐえっ」
「あっ、すみません…」
「大丈夫だ…いてて、バンガード。リンク切るぞ」
『了解。リンク解除、自律モードに切り替え』
外骨格のマウントが離れ、肩が軽くなる。
…閉じ込められていた熱気が一気に吹き出してきた。
「やば、あっつ…すまんM4…ベタベタだからあんまり寄らないでくれ」
「え、あ、はい…」
グリフィンの上着脱いどきゃ良かった。
上着を脱いでシャツをバタバタする。
…M4がガン見してる気がする。
「指揮官、無事だったらしいな」
「M16。すまんな、無駄骨になっちまった」
「いや、良いさ…ダミーとは言えいけ好かないエージェントがすっ転ぶとこを見れたんだ」
「…………ん?見えた?」
あれ、こいつら俺の位置は知らなかったはずじゃ。
「ん?あぁ、ドローンとリンクしてバンガードが見てた映像は把握してたんだ」
「…それは、全員?」
「ああ、その筈だが」
…熱気が急速に冷めていく。
俺は、何をしてた?
「「「ジョージ(指揮官さん)」」」
「ひえっ…」
街角から現れたライフル三人の圧が、凄い。
…M16が笑顔のまま固まり、AR-15が気の毒そうな目で見てきた。
SOPちゃんは笑ってた。
君剛胆だね。
「後で屋上」
「ウッス」
微塵も笑ってない相棒に、そんなこと言われた。
こんなオチで申し訳ない。
流石にこの二人鹵獲する訳にもいかないので。
…そろそろ話進めないとなぁ。