ーー射撃場。
うちの射撃場は、最前線と言う事で割と色を付けて充実させて貰っている。
人形は勿論、人間もここを利用している。
…が、今日は公休。
流石に誰も居なかった。
イヤーマフを付けて、シューティンググラスを掛ける。
手には、ウィングマン。
アイアンサイトも良いが、俺はクラシックサイト1倍を愛用している。
的に向けて構える。
分類上はハンドガンだが、威力はそこいらのハンドガンとは比べ物にならないマグナムと呼ばれる代物だ。
トリガーを引く。
重い反動と鋭い音。
(…まさか、相棒が俺の事をなぁ…)
トリガーを引く。
六発撃ちきり、リロード。
(それに、春にカラビーナか…)
再びトリガーを引く。
(…人形とはしない、なんて言ってたけど…意図せず彼女たちにも優しくしてたんだな俺は…最低だホント)
撃ち切る。
的がボロボロになり交換される。
…弾痕がバラバラ、酷いもんだ。
(誰か一人を選ぶなんて今更出来るだろうか…いやでも三人と関係を持ってしまった訳だし…)
トリガーを引く。
リコイルコントロールも慣れたものだ。
(…三人とも、いやいやそんな不誠実な…しかし、重婚なんて今どきザラだが…)
「指揮官」
(三人とも俺を想っての行動なんだし何とか応えたいけど…)
「指揮官ってば!」
(どうにか、良い方法が見付かればな…)
「しーきーかーんー!!」
リロードしようとして、後頭部を小突かれた。
イヤーマフを外して振り向くと、肩で息をしているグリズリーが立っていた。
「グリズリー?どうしたんだ」
「どうしたじゃないわよ、全く…何回呼んだと思ってるの?」
「あー…すまんな、考え事」
「ふーん…まぁイイわ。けど、指揮官…酷い撃ち方ね。その銃が泣くわよ」
ウィングマンを指さされて、苦笑する。
…確かにコレは、彼女の愛した男が使っていた物だからな。
「…すまない。ちょっとね…」
「…何か、重大そうな考え事ね」
「重大そう、か」
俺の気持ちと彼女達の気持ちの話だ。
まぁ確かに重大だ。
「…ハルカが除隊する前のジョンみたいな顔してる」
「母さんが除隊する…あぁ、そうか。知らなかったもんな…親父が結婚したの」
その頃にボディの転換やらをやっていたのだろうか。
「そうね…あの頃はアイツもずっと悩んでたみたい。いつもの口説き癖もどっか行ったみたいにね。…行き詰ったときはそうやってずっと撃ってたわ…結果は、散々だったけどね」
なんてこった。
俺のコレは親父とそっくりな行動だったらしい。
「参ったなぁ…嫌いだけど、俺はどこまでも親父の息子なのか…」
「そうね、ホント貴方はジョンみたいだわ」
「嬉しくねぇなぁ…」
「…一度、話してみたら?ジョンと」
…なるほど。
確かに俺のこの悩みは親父が通った道だ。
だが…。
「親父なぁ…蒸発しちまったんだよな…」
「…そうだったわね」
「誰かに相談するにしたってな…ここの基地の奴らはどいつもこいつも口が軽いし」
いい相手が見付からない。
自分で答を見つけなきゃいけないのにな。
「相手、か…あ。居るじゃない、一人」
「え?」
「口が硬くて、ここの人達と接点が無く、かつ年上の成人男性」
「マジかよ、誰だそれは…」
「クルーガーよ」
盛大にすっ転んだ。
年上、かつ面倒見が良くて父親を知っている、と言う設定なのでジョージの導き手になりうるグリズリー。
初登場があんな残念だったのに凄いしっかり相談役出来てるあたりグリズリーと言うキャラの土台ってすごい。