【完結】借金から始まる前線生活   作:塊ロック

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ようやく物語が終わりへと向かう。


第121話

『おはよう、ジョージ指揮官』

 

数日後。

司令室のモニターにペルシカの姿が映される。

 

なんでも、説明したい事があるとか。

 

「…ペルシカ、どうしたんだよその頬」

 

寝不足の隈に加えて、右の頬にガーゼが当てられていた。

何となく痛々しい。

 

『ああ、うん、ちょっとね。娘の反抗期みたいなものよ』

「いやに具体的だけど釈然としないなそれ」

『そんな事より、指輪についてなんだけど』

「………それは、『どっち』の?」

 

誓約の指輪と、鉄血のハイエンドモデルを弱体化させるあの指輪。

 

『黒よ』

「だよなぁ…何でこんなの作ったんだ」

『指揮官。貴方の所は二度、ドリーマーに襲撃されている…これで間違いは無いわね?』

「…概ね」

 

行き着いた先にアイツがいるような気がましてならないが。

 

『鉄血のハイエンドモデルは破壊されればすぐにネットワークを介してバックアップを送信され次の義体が動き出す。要するにやってる事は対症療法なのよ、これは』

「…つまり?この指輪で何をさせる気だ」

『その指輪一つでドリーマーと言う脅威を恒久的に排除できるという事よ』

「こいつに、鉄血ネットワークを遮断する機能があると?」

 

こんな小さいのに、か。

しかしいつ見ても真っ黒で趣味の悪い指輪だ。

 

『それと、鉄血ハイエンドモデルの信号の流れに干渉して能力を著しく下げる事ができるわ』

「つまり、これを何とか奴にはめて破壊すれば…」

『駄目よ破壊しちゃ』

「…………何故」

『言ったでしょう、破壊されたらバックアップされるって』

「鉄血のネットワークから隔離できるんじゃないのか?」

『装着した人形が機能停止したら、その指輪の効果も消えるのよ』

 

オイオイ、冗談だろう?

 

「ドリーマーを、一生俺が面倒見ろとでも言うつもりか!?」

『彼女が機能停止しなければ達磨にして指輪を埋め込むとかでも構わないわ』

 

こいつ、やっぱり根底はマッドサイエンティストだ。

サラッとそんな事が言える。

 

「ペルシカ、悪いが俺は…」

『これからずっと部下の命を危険に晒し続けて同じ敵と戦うの?』

「…っ!」

 

そう、そういう事だ。

向こうはずっとこちらの手の内を次々吸収し襲いかかってくる。

 

次は誰か犠牲になるのかもしれない。

 

『決断しなさい指揮官』

「……………………………ままならないな、世の中」

『人の手の及ばない事なんて、この世界にはごまんとあるわ』

「違いない」

『あと、バンガードだけど…近々大きな作戦があるんでしょう?そのまま駐留させるわ』

「あー、感謝する」

『バンガードからの評価も、高いみたいだしね』

 

評価?

うーん、高いのだろうか。

うちに来てからロクな作戦を遂行してないし。

 

『健闘を祈るわ』

 

そう告げて、通信は切られた。

 

「健闘、ねぇ」

「しきか〜ん、ずいぶん湿気たツラしてるわね」

「誰のせいだっての」

「あら、私のせい?」

 

通信が終わったタイミングで来たってことは多分聞いてたなこいつ。

UMP45がいつもの薄い笑いで近付いてきた。

たまには仕返ししてやろうかなとふと思い付いてしまった。

 

「だったら?」

「悲しくて泣いちゃう」

「45」

「何?」

 

45の手を引き、手の甲にキスをする。

 

「…それで?」

「そう慌てなさんなお嬢さん」

「え、や、ちょっとジョージ…もう」

 

そこから首筋に、頬に、額にとどんどんキスを落とす。

そして、45の唇も奪った。

 

「ふぅ、それで?なんの用だ?」

「誰もここまでして欲しいだなんて言ってないわ…はいこれ」

 

45から資料の束を渡された。

…これは、恐らく前行っていた依頼の話か。

 

「随分間が開いたな」

「ここを拠点にして色々探ってたからね。お待たせ」

「ハイエンドの首が取れるなら願ったりだ…目を通しとくよ。ありがとう」

「それじゃ…ねぇ、今夜は暇?」

「悪いが、流石にこれ見てからだと時間は取れない…また今度な」

「ちぇー。楽しみにしてるわ」

 

さて、準備をしなければ。

 

「デストロイヤー、か」

 

 

 




デストロイヤー及び付近の鉄血人形を掃討し、404小隊のデータ回収任務を援護せよ。

次回、出発前。

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