【完結】借金から始まる前線生活   作:塊ロック

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誓約 9A-91

深夜。

仕事を片付けて俺は久しぶりに大浴場に来ていた。

 

たまの贅沢として…まぁ残り湯なんだけど、ちょっと使わせてもらっている。

 

「はぁー…疲れた」

 

湯船に浸かり、疲れを癒やす。

俺の中にある東欧の血が、風呂を求めている。

 

唐突に、電気が切れた。

 

「あん?」

 

確か、今日は当直に使うって言っておいたんだけど…?

がらり、と戸が開く音がした。

 

そして、ひた、ひたと足音。

 

Добрый вечер(こんばんは)、指揮官」

「9A-91?」

 

この声は、彼女のものだ。

…ははぁ?電気を消していたずらでもしたつもりなのだろうか。

 

「悪い子だな9A-91」

「はい、私は悪い子です」

 

ちゃぷり、と隣に座る。

まだ俺は夜目が利かない…が、彼女の瞳が爛々と俺を捉えていたのは見えた。

 

9A-91が俺の手を取り…自分の胸に押し付けた。

水分を含み、しっとりした肌。

掌の一点だけに感じる、少しだけ硬い感触。

 

「指揮官…今夜は、私だけを見て…」

「お誘いが、大胆過ぎるな…」

「ふふ、嫌いですか?」

「いや、燃えるね…むしろ」

 

彼女の腰に手を回し、自分の元に引き寄せる。

空いた手は9A-91の手を取り、指を絡ませる。

 

「けど、ここはダメだ。風邪を引く」

「…お預け?」

「後で部屋に来い。鍵は開けておく」

 

抱き寄せて、額に口づけする。

 

「風呂はゆっくり堪能するもんだぜ?」

「わかりました…一緒に、温まります」

 

決して狭くないのに、二人で肩を寄せて温まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

窓から射す月明かりが、ベットで横になる俺と9A-91を照らしていた。

 

先程まではここで情熱的に絡まり合っていたが、それも済み、シャワーを浴び直して裸で抱き合っていた。

 

「ふふ…指揮官…」

「ん?どうした…?」

「私、幸せです」

「また、唐突だな」

「私…指揮官に一つ嘘をついていました」

 

嘘。

何となく察しはついている。

…AR小隊救出の際に初対面だとしたら、余りにも都合が良すぎるからだ。

 

迫ってくるのが速すぎる。

 

その前に、何らかの形で俺と会っていたと考えるのが自然だ。

 

「私は元々人形娼婦だったんです」

「そうなのか?…あ、そうか…だから愛情表現というか…スキンシップが過激だったのか」

 

割と直接的に迫ってくるのが多かった。

何より、夜の技術は俺が手も足も出ない程卓越していた。

 

「人形だったので、多少なりと乱暴にされてたんですけど…ある日、ストーカー紛いな目に遭って」

 

建物から出てきた所を数人がかりで囲まれて、路地裏に連れ込まれた事があったらしい。

あわや乱暴されかけた時…。

 

「たまたま俺が、通りかかったと?」

「はい」

 

酔っ払っていた俺がそいつらと乱闘騒ぎを起こしていたらしい。

なんとも恥ずかしい話だ。

その時はかなり酔っていて、乱暴されかけていた9A-91の事を覚えていなかった。

 

「そうだったのか…」

「それから、私はずっと指揮官を探しました。けど、見付からなくて…」

 

自由を求めて、戦術人形へと転向した。

グリフィンの本部になんとか籍を起きながら、各地を転々としながら俺の事を探していたらしい。

 

「…手間、かけさせちまったみたいだな」

「いいえ…貴方は、こうして…私と一緒に居てくれています…私だけじゃないのが、少し悔しいですけど」

「それは…」

 

言い訳は、9A-91のキスで塞がれた。

すぐに離れたが、彼女は艶っぽく笑う。

 

「気にしません。私達は人形…人間の倫理とか、そう言うのに縛られない存在ですから」

「…駄目だなぁ。腹くくったつもりだったのに」

「私は、そういう所見せて貰えるようになって嬉しいとおもいます」

「俺はカッコつかなくて嫌なの…まぁ、何だ。9A-91…手を出してくれ」

 

はてなマークを浮べて、右手を差し出してきた。

ずっと求めていたクセに、こういう事に疎いのがちょっとおかしかった。

 

「違う、左手」

「左…それって」

 

枕の下に隠してあった指輪を、9A-91に見せた。

 

「指揮官…」

「9A-91…俺は、お前を愛したい。受け取ってもらえるか?」

「はい…はい!」

 

彼女の左薬指に指輪を通す。

9A-91はその光景を恍惚と眺めていた。

 

「指揮官、指揮官!」

「うおっ、はは…これからも、よろしく」

「はい!指揮官!Я тебя люблю(愛してる)!」

 

瞳に涙を浮かべて、9A-91に唇を奪われる。

…その後、まさかの2回戦に突入するのだった。

 

 

 

 




これが、俺の限界…。
ちょっとえっちにしようかなと思いつつ心がチェリー過ぎて泣きそうになっていた作者です。

こんな奴が健全書ける訳ないので諦めてください。

9A-91と、誓約完了。

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