待たせてはいけない。
彼女は、待ち焦がれているのだから。
とうとう、指輪が残す所あと一つになった。
渡す人形はとっくに決まっている。
俺はまたあの教会廃墟に居る。
時間に空きがなくたまたまタイミングもあり他の人形たちにはそのまま渡していた。
出来れば、渡すときはこうやって渡してやりたかったなと後悔が無くもない。
だが……大規模作戦も近く、そうも言っていられなかった。
扉をくぐる。
……既に、彼女は来ていたようだ。
「トカレフ、待たせたか?」
「指揮官。……いいえ、私も今来たところです」
壇上で、純白のヴェールをはためかせてトカレフが振り返った。
……あれから、カラビーナ監修によるトカレフのスキン改造計画が進められていたらしい。
今のトカレフは、通常のスキンと違って本当に花嫁の様にドレスを纏っていた。
「そうか……なら、良いんだが」
すっかり色あせてしまったカーペットの上を歩く。
トカレフの前に、並び立つ。
どうしても身長差があり、見下ろす形になってしまう。
「指揮官……ジョージさん。私……」
「……良いんだ、何も言わなくて」
頭の上に手を置こうとして、やめる。
その代わり、めいっぱい抱き締めた。
トカレフも負けずに抱き締め返してくる。
「君は俺が責任を持って面倒を見る」
「……そこは、幸せにするとかじゃないんですか?」
「前任に上手い口上が見つからなくてね」
トカレフで片膝をつき、目線を合わせる。
「トカレフ。その命尽きるまで……俺の為に戦ってくれるか?」
「……はい。その代わり……ジョージさんは、私の事を死ぬまで愛してくれますか?」
「……誓おう」
トカレフが目を閉じる。
俺は彼女の小さな唇にキスをする。
「手を出して」
小さな左手が差し出される。
力を入れてしまえば壊れてしまいそうだ。
しかし、彼女も人形である。
この程度では壊れない。
薬指に指輪を通す。
これで、俺の手元には1つもなくなった。
「ありがとう……ございます。こんな不安定な私を、繋ぎ止めてくれて……」
「愛してるよ、トカレフ。ずっと一緒だ」
「はい……はい!もう、絶対……離しません……鉄血なんかに奪わせません……二度と……!」
「大丈夫だ……俺は、どこにも行かない」
「ジョージさんは、私が守ります……!」
トカレフが俺の両頬を掴んで引き寄せる。
そのまま唇を奪われる。
「一番はリサさんに譲ります……でも、二番は私ですからね」
「順位とか着けたつもりは無いんだけどな……」
「じゃあどうして私が一番最後なんですか?」
「そ、それは……」
「なんて、意地悪でしたね」
いたずらっぽくウィンクされる。
思わず苦笑が漏れた。
「悪い子だな」
「はい、私はわるい子です。だから……」
トカレフが俺の手を取る。
「今夜は貴方を独り占めします」
笑顔で俺の手を引く彼女には、もう翳りはなくなっていた。
これにて、戦術人形10体との誓約を締結。
次回、デストロイヤー討伐作戦始動。
決着のカウントダウンが動き出す。