離れた場所から、戦火の音が聞こえる。
攻撃が始まったのだろう。
モニターに映るドローンからの映像で鉄血の人形達を確認する。
S-12基地から車両で移動すること1時間の位置にある廃ビル群の中の一際大きな建物。
そこが今回の戦場であった。
UMP45が言うには、そこに依頼のデータがある為陽動、経路確保、出来るならば掃討を行う事を依頼されている。
「しかし、何でデストロイヤーがそんな重要そうなデータなんて守ってるんだ?」
ローニンから、そんな一言を貰った。
確かにそうである。
はっきり言ってデストロイヤークラスは対処さえ間違えなければ敵ではない。
AIが余りに幼いからだ。
「……エージェント、だろうな。恐らく」
彼女なら、上位モデルに対して命令権を持っているであろう。
そんな結論を勝手に付けていた。
「こんな廃ビル群に、データねぇ」
「件の建物は、元々鉄血工蔵の営業支部だったらしい。様々なPMCや正規軍のデータが放置されていてもおかしくはない」
「一理あるな」
そんな物を守って何になるのかは知らないが。
ついでに言うのなら404がそれを回収……もっと言うとそれを命じた上が何を考えてるのかはわからない。
「ま、理由は何にせよ……稼がせてもらうだけだ」
「……美味い話には何か裏があるもんだ。404の隊長に随分執心みたいだが、足元取られるなよ」
「45はそんな事しないさ。ただ……」
嫌な予感はする。
それも特大級に。
『こちらノーススター。配置に付いた』
「了解。引き続き警戒しつつ出てきた所を狙い撃て」
『あいあいさー。指揮官、出番までKarちゃんのお尻触ってていい?』
「減給」
『重っ!?』
隣でローニンが引き攣った笑いを浮かべている。
チャンネルを切り替えてトーンに繋げる。
「トーン、応答せよ」
『こちらスカウト部隊トーン』
「敵勢力の追加情報はデータリンクに随時更新せよ」
『了解』
「それと……この作戦、補給の護衛人形の中にM1ガーランドが居るらしい」
『っ!?し、指揮官!それは今必要なんでしょうか!?』
「さぁな?カッコいいとこ、見せてやれよ」
『なっ、何で知ってるんですか指揮官!?ちょっ』(ブツッ
無線を切る。
さて、次は……。
「スコーチ」
『こちらに。戦闘部隊の撤退ルートは確保に成功』
「いい仕事だ」
『恐悦至極』
「引き続き警戒に。デストロイヤーがぶっ放し始めたら倒壊の危険性のあるエリアだ。気を付けろよ」
『御意』
通信が切れる。
「指揮官。始まるぞ」
「ああ……」
マイクを再びオンにする。
「全部隊に通達!これよりデストロイヤー討伐作戦を開始する!絶対に死ぬなよ!」
『『『了解!!』』』
デストロイヤー討伐作戦、開始。