しかし、その本格的な誘いの前にベロベロに酔ったM4が現れる。
まぁ穏やかに終わるはずもないよね。
「指揮官。飲みましょう」
ある日の夜。
M4がアルコールの瓶を抱えて部屋に押し入ってきた。
「M4?せめてノックしてくれない?」
「指揮官。飲みましょう」
「聞いて」
聞く耳を持たない。
こんな聞き分けの無い子だっただろうか…。
「お前、顔真っ赤じゃねぇか…」
「えへへーしきかーん」
なんてことは無い。
先に飲んでたのだろう。
それにしてはだいぶ出来てるが。
「ん?これ模造品じゃないな…どこでこんな物を」
M4が持っていた瓶。
程度は良くないが紛れもないアルコール…ワインであった。
「ヘリアンさんとのんでたらくれましたー」
「…何で?」
「指揮官がそのまま押してくれたらーって話を」
「あの女…」
だから合コンで負けるんじゃねぇのか…。
「ほら、指揮官ー」
「はいはい…ったく、人形でも酔うんだな…」
さて、グラスとか置いてあったかな。
人形とはいえ女性と飲むのだ。
ちゃんとしたものは出してやりたい。
「ほら、M4座りな。ったく、そんな赤くして…綺麗な顔が台無しだぞ」
「わたし綺麗ですか?」
「ああ。とんだ美人さんだ」
「そうですか…えへへ…」
お、良かった。
備品にガラスのコップが置いてあった。
これなら雰囲気もそんな悪くは…。
「ハァイ、ジョージィ。今夜一杯やらない?」
「え」
「ん?」
「…あら」
ノックもなしに入ってきたのは…404小隊小隊長、UMP45だった。
彼女の目がすっと据わる。
「ジョージ?私、二人きりって言わなかったっけ?何でここにM4が居るのかしら」
「ノックしてくれないかUMP45…」
「ジョージ。どういう事か説明してくれない?」
「どうもこうもってお前正確な日付指定しなかったろ…」
「先に約束したのは私だけど?」
「…何で先に約束したって言い切った」
「………」
思わず視線を切ったUMP45。
「おまっ…!どこから聞いてた!!」
「あらなんの事かしらね、しきかーん?」
「しきかーん飲みましょうよー」
両サイドから甘い囁きに挟まれる。
何だこの新手の拷問。
「45、お前酔ってないんだからさ」
「はい、どうぞ」
有無を言わさぬ圧力が、グラスに注がれていた。
「…ったく、しょうがねえな」
「はい、かんぱーい」
「はれ?私のグラスは?」
「わーったから。出すから待ってろ…ひっつくな」
最早飲む前からカオス。
どうやって収拾付けるんだこれ。
「ほら、M4」
「ありがとうございますー指揮官。大好きれすー」
「はいはい…」
三人の手にワインの入ったグラスが行き渡る。
「それじゃ、乾杯」
「「かんぱーい」」
かちん、とグラスがぶつかる音がする。
…M4と45のグラスだけ物凄い音がしたけど。
とりあえず一口。
「…美味い」
久しぶりの酒だ。
それも、とびきり上等な。
「ヘリアンに礼言っとかないとな…」
「ジョージ。入るわよ」
いやだから、ノックしてくれよ。
宴会は続く。
次回、酒乱。