【完結】借金から始まる前線生活   作:塊ロック

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対ドリーマー戦、完。


決着

「ジョォォォォォジ!!」

「グラップル!」

『グラップルを使用!』

 

落下中、ドリーマーが頭上からライフルを連射してくる。

グラップルをビルの壁に刺し振り子の要領で軌道を変えて壁に()()

 

そのまま走る。

壁を蹴り、落下するドリーマーに飛び蹴りを食らわせる。

 

「ガハッ……!!」

「こ、のっ!!」

 

ドリーマーのライフルにグラップルを突き刺しこちらに引き寄せる。

 

「はっ、ハハッ!!良いわ、良いわぁ!!」

「させるかよ!!」

 

ドリーマーが懐からハンドガンを抜き放つ。

それに合わせてこちらもパルスブレードを投げた。

向こうはハンドガンを振り弾く。

 

パルスブレード、喪失。

 

だが隙は生まれた!

引き戻されたグラップルの先に居たドリーマーの首を掴む。

 

「グッ!?」

「捕まえた!」

『指揮官!落ちてる!片手空けて!』

「わーってる!!」

『グラップ……うわぁ!?』

 

グラップルアタッチメントをドリーマーが握った。

振り払おうにも腕力が強い。

 

「ふふ、ひっ、はは!!」

「この野郎離せ!!」

『痛っ!離せぇぇぇぇぇ!!』

「一緒に逝きましょう!ジョージィィィィィ!!!」

 

メキッ!

アタッチメントが……握り潰された。

俺の腕にまで圧が掛かる。

 

「がぁぁぁぁぁ?!」

『あぎっ……?!右腕損傷!右腕損傷!』

「ジャンプキット最大出力!!着地する!!」

 

この高さ、降りられるか!?

いや、降りる!

俺は、帰るんだ……!!

 

「う、おおおお、おおお!!」

『ザザッ……ジャンプキット出力最ザッ……大……』

 

バンガードの様子がおかしい。

ここに来てマシントラブル……?!

いや、腕の損傷によって一時エラーが……?!

 

「保たせろぉぉぉぉぉぉ!!」

 

地面が、見えてきた。

 

……だが、無慈悲にもジャンプキットの推力は、途切れた。

 

ドリーマーを抱えたまま着地の衝撃が殺せず転がる。

身体から様々なパーツが剥がれていく。

 

「ガフッ……!?」

 

近くのコンクリ片に叩き付けられて、勢いは止まった。

 

「ゲホッ……バンガード……」

『』

「マジかよ……」

 

バンガードからは砂嵐しか聞こえて来ない。

何とか起き上がろうにも、パワーアシスト無しで動かすには重い。

 

「ジョージィィィィィ……!!」

「マジかよ」

「もっとよ……良いわ、良いわぁ……もっと殺し合って、私を満足させて頂戴……!」

 

ドリーマーがナイフ……あれは、パルスブレード……を握ってこちらに歩いてくる。

なんとか立ち上がる。

 

「くそっ、重いっ……!」

「ジョージィ!!」

「う、おっ!?」

 

立ち上がった瞬間、ドリーマーがナイフを突き刺し……。

 

「あ……」

 

俺に刺さる前に、刃が折れた。

ちょうど、パルスブレードの使用限界だった様だ。

 

「……終わりだッ!!」

 

ラックに残っていたもう一本のナイフを抜き……ドリーマーの右肩に突き刺した。

 

リサに刺させた、右肩と同じ位置に。

 

「ガッ……ま、まだ……ッ!!」

「いや、終わりだ」

「な、なん……あぎっ……ぎ、あ、が、が、ぎ、っ!?」

 

ドリーマーの身体が震える。

身体の自由が効かなくなったのか、その場に倒れ伏す。

 

「はぁ……はぁ……なるほど、これは有効か……」

 

ドリーマーの肩に刺さるナイフ。

人形に対してハッキングを仕掛け動きを止めるナイフ……データナイフと言う代物だった。

 

もう、刃が根本からぼっきりと折れてしまっている。

 

強度面にの問題があるな、これは。

 

「こいつにやるのは、癪だが……仕方ない」

 

ケースから、黒い指輪を取り出し……左手の指に通した。

 

これで、本当に終わりだ。

 

『予備プログラムを起動。おはようございます、指揮官』

「……バンガード?」

『お久しぶりです、指揮官。前任のバンガード用AIです。()()が眠ってしまった場合の保険として私は残されていました』

 

バンガードにパワーアシストが少しだけ掛かる。

 

「……バンガード……その、彼女は?」

『自己防衛モードに入り、休眠しています。AIは無事です。指揮官、手を』

「え?ああ……」

 

言われたとおり手を出す。

バンガードが俺から分離する。

そして、手の上に丸いユニットが置かれた。

 

「これは……?」

『戦術コアです。この中に彼女は眠っています』

「……待て、これ、戦術人形のコアじゃないか?」

『私はその質問に返答する権限を持ちません』

「オイオイオイ、これかなり拙いんじゃ……」

『それより指揮官、ここを離れましょう。頭を抑えたとはいえ、ここは敵地です。動かなければ死んでしまいます』

「あ、ああ……」

 

機能停止しているドリーマーを左腕で抱える。

右腕は、動かない。

 

興奮剤の作用で、麻痺しているのか。

 

「上は、大丈夫だろうか……」

『貴方の部下たちです。大丈夫でしょう』

「……そうだな。俺が信じなきゃ」

 

とにかく、味方に合流しないと……。

 

……俺達は、立ち止まった。

 

「……嘘だろ」

 

このエリアは廃ビル群であり、周りは高い廃墟が立ち並んでいる。

目の前には、倒壊したビルが横たわり……高い壁のようになっていた。

 

迂回するにも、登るにも高い。

 

合流地点は、この先なのに。

 

『……動体反応を検知。鉄血の残党でしょう』

「何だって」

『数は複数……交戦し生き残る可能性は絶望的です』

 

淡々と、隣に立つ外骨格は答える。

 

『……しかし、この瓦礫の向こうに友軍が居ます。彼女達にコンタクトが取れました』

「本当か!?」

『はい。そこで指揮官、提案します』

 

バンガードがこちらを見る。

……無事な左腕が、俺を抱えた。

 

「待て、提案ってなんだ!?」

『私に残された最大出力で指揮官とドリーマーを瓦礫の向こうへ投げ飛ばします。着地点には人形達が待機しているはずです』

「お、おい!お前はどうするんだ!?」

『私単騎ならば逃げ切る事が出来るでしょう』

「信じられるか!!お前もボロボロ何だぞ!?」

『私は装備です。装備者を無事に帰還させることが私の任務です』

「馬鹿野郎!!プロトコル2、任務を完遂せよ……!戻らなきゃ達成出来ねぇだろ!」

『プロトコル3、パートナーの保護』

「バンガード!!」

『必ず戻ります』

 

バンガードに持ち上げられる。

俺はドリーマーをキツく抱えるしか出来ない。

それでも、言葉は出る。

 

 

 

 

 

「やめろ!バンガード!」

 

 

『信じて!』

 

 

「バンガードォォォォォォォォォ!!!」

 

 

 

 

俺の身体は、重さを感じない程の軽さで投げ飛ばされた。

 

 

 

 




これにて、ドリーマーとの因縁に決着が付きました。

ここからは事後処理とエピローグとなります。
あと少しだけ、お付き合い下さい。

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