内容は鹵獲したドリーマーについて。
『おはよう。調子はどうかしら?ジョージ指揮官』
スクリーンいっぱいに不健康そうなツラを晒す彼女の方に正直俺は言葉を投げ返してやりたかった。
「足以外は無事ですよ」
『そう。要件を話すわね。そちらから送られてきたドリーマーだけど、一通りの処置は終わったわ。彼女はもうただの少女と変わらない。ただ、人形って点を除けばね』
「……それで、飼い殺すのか」
『ええ。貴方が』
「…………」
納得している訳ではない。
奴も、俺も、死力を尽くして戦った。
その相手を……死ぬまで捕虜にする。
その事に嫌悪感が無いとは言い切れない。
どこか、やり切れなさを感じている。
「指揮官…?」
「……大丈夫だよ、トカレフ」
気遣う副官の頭を撫でる。
部下の安全と、恒久的な障害の排除……それが出来ているのだ。
何を迷う事がある。
『AR小隊と一緒にそっちへ向かっているわ。M4、貴方が起きたと聞いていてもたっても居られなかったみたい』
「そうですか……」
『指輪、見せて貰ったわ。大事にしてあげて』
「……ああ」
『そうそう。近々また連絡するから』
「え、はい」
『割と大事な話だから。それじゃ』
大事な話、か。
はて、なんの事だろうか。
「トカレフ。皆が帰ってくる。出迎えの準備をしようか」
「はい」
トカレフに車椅子を押してもらう。
本格的に足が動かない。
これは、また体力が落ちるだろうな……。
ーーーーーーーーーーヘリが、降下してきた。
S-12基地のヘリポート。
着陸し、作業員達が荷物のチェックに入る。
そんな中、四人の人形がこちらへ歩いてきた。
「指揮官、AR小隊……帰還しました」
「ご苦労。異常は無かったか?」
「ありません」
「そうか。お疲れさん」
前に立つM4の後ろ、M16、AR-15、SOPMOD2は黙っている。
「……おかえり、M4」
「……っ!ただいま、戻りました……ジョージさんっ、良かった……!」
堪えきれず、M4が俺に抱きついてくる。
トカレフが気を利かせて車椅子のブレーキを掛けた。
……後ろで、三人が呆れた顔をしていた。
「ったく。砂糖じゃなくてアルコールが欲しいぜ、私は」
「M16、ただ飲みたいだけでしょう」
「やーい飲ん兵衛!」
「お前らなぁ」
「三人も、おかえり」
「おう」「はい」「ただいまぁー!」
ふと、M16が後ろを指さした。
「客だぜ、指揮官」
「え?」
振り返る。
…………言葉を失った。
『お久しぶりです、指揮官』
がしゃん、がしゃんと
「バンガード……!」
『BT-4040、シャーシは破壊されましたがバックアップをギリギリ送信出来た為戻ってまいりました』
「その割には五体満足じゃないか」
『訂正します5億パーツ満足です』
ふと、バンガードの後ろに誰かが隠れている。
「……そちらは?」
『彼女も、貴方の関係者ですよ』
「ちょ、ちょっとバンガード……!まだ心の準備が」
『観念してください』
「わぁ……!?」
バンガードに背中を押されて、一体の人形がつんのめりながら前に出る。
グリーンの髪に、はつらつとした雰囲気を出している。
なんとなく、瞳に星が見えた気がした。
「君は?」
「あ、あはは……ただいま、
「えっ……?」
相棒呼びはよせと言ったのに、頑なに俺をパートナー呼ばわりしていたAI。
「あたいは、あたいの本当の名前は、UMP40……会いたかったよ、
はい、中身がまさかの体を得て帰ってきました。
そしてバンガードも。
そして、ドリーマーの移送も、完了した。