【完結】借金から始まる前線生活   作:塊ロック

145 / 183
ドリーマーと対面する。
自分の中のやりきれない感情を自覚する。


夢破れた者

うちの基地の独房は、今まで誰かを投獄した事が無かった為、ほぼ新品の用に綺麗である。

 

そんな中……初の投獄者である、黒い少女が簡素なベッドに座り、虚空を見つめていた。

 

「よう」

 

なんと声を掛けるか、ずっと考えていたが……結局、ろくな答えは出なかった。

なので、いつも通りの俺で行こう。

 

「……はぁい、ジョージ。生きてたのね」

「誰かさんのお陰で暫く車椅子生活だがな」

「半分は自業自得よ」

 

車椅子を押しているリサにそんな事を言われた。

カラビーナも無言で頷いている。

 

「私は、負けたのね」

「ああ。俺の勝ちだ」

 

ドリーマーがそう、零した。

 

「どうして、私を破壊しなかったの?」

「お前を破壊すれば、また新たなドリーマーが起動する。イタチごっこを終わらせる為だ」

「……ふぅん?で、これは?」

 

ドリーマーが覇気の無い、虚ろな笑顔で微笑み……自身の左手を振る。

 

……その手には、黒い指輪が、嵌められていた。

 

「お前の機能を9割封じるもの……らしい」

「なるほど……ね。これで私はただの人形。さぞ愉快でしょうね」

「……そんな訳、あるものかよ……」

 

俺は、拳を握りしめていた。

リサとカラビーナが顔を見合わせる。

 

「お前は、全力で……死力を尽くして俺を殺しに来た。なのに、だと言うのに……この扱いは、無いだろ」

 

そう、俺は漏らしたのだった。

 

「ジョージ。これは殺し合いよ……スポーツじゃないわ」

「分かってる、そんな事は」

「指揮官、割り切ってください」

「……」

 

わかっている。

わかっているとも。

けど、納得は出来ない。

 

こんな扱いをするなんて納得出来る訳がない。

 

「ドリーマー、俺はお前をここから出して……他の人形達と同じ様に生活させるつもりだ」

「指揮官さん!?」

 

カラビーナの悲鳴のような声は無視する。

リサは、何も言わない。

 

「……へぇ?どうして」

「お前はもう何もできないからだ」

「指輪を私が外すっていうのも?」

「やってみろ」

 

ドリーマーが指輪に手をかけ……止まった。

動けないのだ。

 

「……そういう事だ」

「……そう」

「それと、最後に一つだけ……どうして俺に執着した?」

 

4度に渡る邂逅。

どうして俺だったのか。

 

「……目的もなく、ただひたすらにルーチンをこなすのは……人形も人間も同じよ」

「……つまり?」

「貴方は、私の視線を、意識を、釘付けにした。私を夢中にさせたのよ……そんな貴方が、私を見ていないのが許せなかった」

 

突然の告白に面食らった。

つまるところ、こいつの口走っていたことは紛れも無く真実だったと言う事だ。

 

「貴方は私の、私の中での一番だった……貴方は、どうだったかしら」

 

何か言おうと口を開き……リサの一言で絶句した。

 

ジョージ(コイツ)の一番は、私よ。残念だったわね」

 

したり顔でなんてこと言ってるのリサ。

 

思わず顔が紅くなるのだった。

 

 

 




リサちゃん段々バカップルっぽくなってきた気がする(
オマケで読みたい話とかあれば、ネタとして投下して頂けるともしかしたら書くかも知れません。

本篇はあと何ページ位で終われそうかな…。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。