彼女は問う。
どうすればいい、と。
ドリーマーに屋上へ呼び出された。
あれから、これと言って特筆すべき事項も無いまま、ドリーマーを暮させている。
基地の人間たちともだいぶ打ち解け、今ではノーススターからセクハラされる程になったと聞いている。
「ハァイ、ジョージィ……正直、来てくれないかと思ってたわ」
「女性との約束は、不意にしないのがモットーでね……例え、お前でもな」
日はとうに沈み、月が登っている。
月明かりに照らされた黒の少女が、俺をじっと見ていた。
「本当に……優しいわね」
「特に、女の子にはな。……で、悩みか?」
「無駄に聡い。……まぁ、そんな所ね」
遅かれ早かれ、この瞬間は来るだろうなと予期していた。
「私は……どうすれば良いのかしらね」
自分の価値を失った。
人形と言うアイデンティティを失った彼女は、これからどう生きていけば良いのか。
「どう、か……ここから出す事は、正直に言って出来ない」
「……そうよね」
「俺が死ぬまで、お前にはここで生きてもらう事になる」
「ふふっ……まるで、私はあなたの物みたいね」
左手に嵌められている指輪を見ながら、そんな事をこぼした。
「……お前は、どうしたいんだ?」
「私、か……よくも」
「よくも貴方が、そんな事を言えるわねッ!!」
激昂したドリーマーが俺の襟首を掴む。
……しかし、俺は動じなかった。
腕力も、民生品以下になっているからだ。
「こんな、こんな姿にして!何もかも奪って!それで好きな事をしろと!?何ができるっていうのよ!!こんな身体で!こんな力で!どうやって生きろって言うのよ!!」
その瞳から、ボロボロと涙を零す。
「殺して……!殺せぇ……!殺せよ……!!壊してぇ……!!お願いだから、私を破壊してよぉ……!!」
ドリーマーは腕を振るう。
それを受け止める。
「出来ない」
「私はお前の敵だったんだろう!?何で!!」
「お前を破壊すれば……指輪は効果を失い、また新たな『夢想家』が起動する……今までやってきことが、全部無駄になっちまう」
払った犠牲は少ない。
しかし、ここで全部無駄にしたら……浮かばれないだろう。
「偽善者!タラシ!女の敵!!じゃあ責任取りなさいよーーーっ!!!」
「…………わかった」
「えっ」
俺は、ドリーマーを抱き締めた。
「責任取って、娶る」
「ちょ、ちょっと!?話飛んでないかしら?!」
「お前、俺の事好きだろ?」
「何よその自信は!?好きだけど!!」
「受け入れるよ、お前を」
優しく、頭を撫でる。
ハンカチで涙を拭いてやる。
「何よ、それ……」
「元々、生き地獄を味合わせる羽目になったのは……俺の力不足だ。……だから、責任を持って、一緒に生きてやる」
「……意味、分からないわ」
「理屈じゃない。人間ってそんなもんなんだよ。一時の感情で今後の人生が決まるのだってザラじゃない」
ドリーマーと向き合う。
……これで、全てに決着をつけよう。
「お前に名前をやる。お前に、居場所を作る。お前に、仕事をやる。だから……俺と一緒に、生きてくれ」
「都合良すぎよ……!」
「返事は」
「選択肢が、無いわ……」
「君が嫌だと言うならこの話はなかった事にする」
「……何よ、それ」
ドリーマーが、俺のネクタイを引っ張って、唇を重ねた。
「……答え、これじゃ駄目かしら」
「受け取った……これから、よろしくな。アニー」
「……それ、名前かしら」
「?気に入らなかったか?」
「いえ……一ミリも特徴に掠ってないと言うか」
なんかリサにも同じ様な事を言われた気がする。
「何だ、結局……俺も、お前のこと嫌ってなかったって事なんだな」
「あら、相思相愛ってヤツかしら」
「11番目だ」
「せ、節操なし……!」
「ははっ……ま、そんな奴にこうして繋がれたんだ。諦めろ」
「……ふふっ、そうね……ちょっと、眠くなっちゃったわ」
「おやすみ」
少し、肩の荷が降りてくれただろうか。
彼女の寝顔は、見た目の年相応に幼いものだった。
ようやく、決着がついた。
殺し合う関係から愛し合う関係に。
人生、何があるかさっぱり分からない。