唐突にボディビル大会があったり、武器庫グリフィンの組手総当たり戦なんて始めたもんだから地獄を見たよ(白目)
ちなみに俺の徒手格闘の能力は……何を基準にすれば分からないがそれなりだとは思っている。
と言うより、武術の達人クラスである母親にある程度は仕込まれているので……悪くはないと思っている。
『……ジョージさんは、あの人譲りですね。格闘はあまり伸びないかもしれません』
そんな言葉を思い出す。
「よぉ、指揮官くん。ビビってるのか?」
目の前に立つ屈強な男。
体格差は確かにある。
……そう、武器庫の傭兵とこれから組み手を行う。
あんな人外魔境なPMCの兵士達に、俺では勝てないだろう。
「……」
「……」
チラリ、と観客達を見る。
トカレフと、リサの姿があった。
トカレフは心配そうに、リサは……腕を組んで、軽く笑っていた。
ー勝ちなさいよ?ー
そんな言葉が聞こえてきた。
「ハァっ……いや、すまんな。考え事だよ」
「随分と余裕だな色男」
「色男?よせやい。照れるだろ」
「褒めてねーよ」
試合開始の合図が出る。
男が走ってきた。
俺は……。
「いや、褒め言葉さ。女の前でカッコつけられる男がだからな!」
一歩前に。
肘を突き出し。
相手の身体がくの字に折れる。
「セイヤーッ!!」
下がってきた顎に、右手の掌打をお見舞いした。
女の前で、カッコ悪いところは見せられないからな。
ーーーーーなお、その後普通に負けた。
槍部隊所属のランスと言う男……要するにジャベリンの部下にコテンパンにされた。
いや、何だあれ。
行動全部がブラフって読めるわけねぇよ。
「づ、づがれだ……」
「鍛え方が足りないんじゃないか?ジョージ」
俺とジャベリンはバーに来ていた。
久しぶりに会ったのだし、飲もうと声を掛けたら二つ返事で来てくれた。
俺はカウンターに突っ伏しているが、ジャベリンはピンピンしている。
嘘やろ?コイツ確か病み上がりじゃ。
「……やっぱ武器庫は人外魔境だわ」
「ははっ、しかし惜しかったなジョージ。ランスに当たるとはツイてない」
「なにアイツ、そんなに強かったのか?」
「初見で当たるには厳しい相手だった。元々剣部隊所属だったし」
「なるほどね……」
剣部隊。
武器庫の誇る最高戦力と言っても過言ではない部隊。
精鋭中の精鋭達だ。
「ただ、アイツはスタミナが無いのが弱点かな」
「良い事を聞いた。次は勝つ」
「御前とは相性良いかもな。腰を据え、攻撃をひたすら捌いて好機を待つ。持久戦タイプだからな」
耐えて、耐えて好機を見出す。
俺の戦い方はそんな感じだ。
「嫌な話はここまでにしようぜ」
「お、そうだな。飲もうぜ」
お互いにグラス片手に……。
「あ、ジャベリン」
「うん?」
ジャベリンが振り向く。
俺も釣られてそっちを見る。
立っていたのは、バツが悪そうに頬をかいていたトンプソンと……ジャベリンの腰に抱き着いたSAAが居た。
「邪魔して悪い。けどどうしても会いたいって言ってな……」
「そっか。ほら、SAAグミやるぞー」
「わぁい」
……なんと言うか、すごい微笑ましい光景が目の前に繰り広げられていた。
「なるほどね……」
「いや、待て何納得してる。何も無いからな?」
「いやいや、俺は何も言ってねーぞ?」
「ジャベリン、この人は?」
「え?ああ、コイツはジョージ。俺の友達さ」
「よろしく、お嬢さん……あらら、怖がられてる」
手を差し出すと、少し怯えてトンプソンの後ろに隠れてしまった。
「仲睦まじそうだし、やっぱまたの機会にって事にしとくか?」
「すまん、ジョージ……」
「あ、いた。ジョージまた無断でどっか行ったわね!?」
大声を上げながら、店内にリサとトカレフが入ってきた。
SAAが肩を震わせたので、俺はそっちを顎で指して人差し指を口の前で立てた。
「あっ……ごめんなさい。怖がらせちゃったわね」
リサがSAAの前にしゃがみ、目線を合わせて謝っていた。
「指揮官、出掛けるなら一言下さい。心配しましたよ」
「ごめんな、トカレフ」
「本当よ。心配するからせめて私に言って」
「悪い悪い。リサ、ありがとな」
「んっ……馬鹿」
ふと、カウンターを見ると……。
トンプソンとジャベリンが、フリーズしていた。
「……どうした?」
「「……こいつ、本当にWA2000なのか?」」
「どう言うことよ!!?」
お決まりの常套句みたいになってきたな。
「紹介するよトンプソン、SAA。うちのリサとトカレフだ」
結局、このあと朝まで騒いだのだった。
友人ってのは、やっぱり良いもんだな。
これにてコラボ回完結です。
サマシュさんには日頃からお世話になってますので、これが感謝の気持ちになれば幸いです。
さて、つぎはどうしようかな…。