いい天気だ。
本日も晴天なり……特に異常もなく過ぎていく。
そんな、昼下がり。
執務室には俺と、UMP40と……膝枕されて猫じゃらしで遊ばれているIDWが居た。
にゃーにゃーにゃーにゃー。
「それっ、それそれー」
「やめるにゃ、40!本能には抗えないのにゃー!」
「平和だな……」
「指揮官、何だかおじさんくさいよ?」
「何だと。俺はまだ20代だ!」
「必死。指揮官顔必死にゃ」
全く……。
密かに気にしてたのに。
段々顔立ちが親父に似てきているのが悩みっちゃ悩みである。
「お疲れ様です、指揮官。コーヒーをお持ちしましたよ」
「ん、ありがとう春」
エプロン姿の春が、トレー片手に入ってくる。
それを見たIDWがふと……呟いた。
「指揮官とスプリングフィールドっていつ会ったのにゃ?」
「……?いつ、とは?」
「そのままの意味にゃ。いつ誑し込んだかってことにゃ」
「言い方」
春と俺の出会い、か……。
「あ、それあたいも気になる〜」
「あらあら……どうしましょうか、指揮官?」
「俺は別に話しても構わないけど……」
「ふふ、じゃあ私は退散しますね……ちょっと、恥ずかしいので」
珍しく顔を赤くした春がトレーで顔を隠して逃げて行った。
「……凄い珍しい物を見た気がするにゃ」
「うん……」
「まぁ、アイツにとっては……俺に惚れた時の話だからな」
「えっ、そんな前から!?」
「何というか……割とアイツも病んでたと言うか」
「あぁ……(納得」
「40……」
さて、どこから話そうか。
―――――――3年前。
まだ俺が傭兵をやっていた頃。
戦場で派手に暴れている人形が居る、と無線で連絡が来た時だった。
グリフィンからの依頼で人形達の援護をしていた為、様子を見に行くだけ見に行くことにしたのだ。
すると、どうやら殿を引き受けていたらしく……単独で残っていたらしい。
出来ればコアを回収してほしいとの事で追加の報酬が設定された。
意気揚々と乗り込んでみると……一面、人工血液の海だった。
鉄血人形だったモノの破片がそこら中に散らばっている凄惨な光景だったよ。
そのど真ん中に……彼女は居た。
自身の半身であるライフル銃を杖代わりにし、立ち上がろうとして……そのまま倒れた。
「……お嬢さん、手は必要か?」
「誰……ですか……」
「俺か?俺はジョージ、ジョージ·ベルロックだ。君を迎えに来た」
「迎え……ですか。必要、無かったのですけれど……」
「どういう事だ?」
うつ伏せで倒れていた人形を抱き起こしてやる。
血で汚れていた顔をたまたま持っていたタオルで拭ってやる。
……口笛を吹いた。
それだけ顔立ちが整っていたのだから。
ただ、瞳が赤くなったり緑になったり忙しなかった。
「私は……暴走の危険がありましたから。体のいい厄介払いで……残されたんです」
「……回収依頼を貰ったが」
「有り得ません……私は、見捨てられたのに」
人形は俺を手で押し退けて、倒れた。
よく見ると、左脚が無くなっていた。
「おい、無茶を」
「良いんです。私は……ここで朽ちた方が、幸せなんです」
「……幸せ?ふざけんな」
人形の腕を掴んで、担いだ。
「ちょっと……ジョージさん?!何を……」
「じっとしてなお嬢さん。帰るぞ」
「か、帰るって……」
「初対面のあんたに俺の嫌いな事を教えてやる。一つ、金の貸し借り、二つ、口約束。んで……3つ」
幸いそこまで重くない上に、用意されていたセーフハウスも近かった。
「良い女を目の前で見殺しにする事だ……ッ!」
「良い、女……?私が……?」
「こんな美人見捨てるなんて、アンタの指揮官が望んでも俺が許さねぇ。絶対連れて帰ってやる」
―――――これが、俺と春の出会いだった。
「……やっぱり口説いてたのにゃ」
「ねー」
「やっぱりって何だやっぱりって」
「べっつにー」
「そこから春と交流する様になってな……まぁ、ちょっとスキンシップ多かったり一緒に飲んだりもあったけど」
「うわ、そこから狙われてたにゃ……」
何だかんだ助け出して連れ帰ってきただけで惚れられたと言うのも変な話だ。
「それは、貴方が私の事を怖がらなかったからですよ」
春が、戻ってきた。
「怖がる?君をか?」
「そうですよ。ライフル人形の癖に敵を還付無きまでに叩き潰すんですもの」
「別に。世の中そういう奴も居るってだけさ」
「ふふっ、懐が深いこと」
「ははっ、そうか?」
二人して笑い合う。
40とIDWが苦い顔をしていた。
「はいはい……砂糖は間に合ってるにゃ……」
「同じく〜……胸焼けしちゃいそうだよ……」
春と顔を見合わせて、笑った。
「ウチは、そういうとこだぞ」
ジョージと春さんの出会い編でした。
後は、リサとの馴れ初めと、AK-12&AN-94案件くらいですかね……本当に、終わりが見えてきた。