「おはよう……相棒」
「おはようジョージ。よく眠れたかしら」
「……は?」
朝。
昨夜久しぶりに誰とも一緒に寝なかった為、一人で迎えた朝……の筈だった。
目の前にAN-94、背後から恐らくAK-12の声が聞こえる。
「お前ら……」
「……男性は、女性と共に寝るとモチベーションが変わると聞いた」
「えっ、誰に」
「私よ」
「お前だったのか」
AN-94が照れ臭そうにそんな事つぶやく。
取り敢えず俺は背後から伸びてくる手を振り払いベッドから転げ落ちる。
「油断も隙もありゃしねぇな!」
「……私は、相棒と一緒に居たいだけ」
「油断だなんて酷いわね。可愛い妹分の為よ」
「いや、確実にそいつ病んでるから!現実を見ろ!」
現状、AN-94は何かしらのショックを受けて俺を「架空の相棒」に仕立ててメンタルを保っていると見ている。
……やっぱり俺の所に集まる人形ってどこかしら変なんだろうか。
「……私の視界は良好よ」
「いや……目閉じてんじゃん」
「見え過ぎるのも考えものなのよ」
「……うわ、本当に目を閉じてるのかこれ」
「……近くでまじまじと見るのも考えものね」
薄目でも開けてるのかと思いAK-12の顔に寄ったが、完全に閉じていた。
「良かった……相棒、元気出たみたい」
「朝から叫び疲れたよ……」
お前のせいだ、とは流石に言えないんだよな……。
「Доброе утро!指揮官!」
私室のドアを勢い良く開けて、9A-91が入ってきた。
「おはよう、9A-91。今日も可愛いね」
「ありがとうございます、指揮官。今日も一段と素敵です」
「そりゃどうも、カワイコちゃん。君を見たら今日も一日頑張れる」
「本当ですか?じゃあ今夜は精一杯頑張りますね」
「いや、日中頑張ってくれ」
「……ところで、何でお二人がこちらに?」
そこ突っ込むよねーそうだよねー。
「なんかいた」
「なんか……」
「相棒とは、その、一晩一緒に居ただけ……」
9A-91が生暖かい目でAN-94を見ている。
……昔の自分でも思い出しているのだろうか。
「指揮官、そろそろ行かないとWA2000さんにどやされますよ」
「おっと、そうだった。お前らもそろそろ支度しろよ」
「ジョージ、気になっていたのだけれど」
「うん?」
「あのWA2000タイプの人形に対して他とは明らかに違う扱いをしているけれど」
「リサが?まぁ、アイツは……」
9A-91を抱き寄せて頭を撫でる。
「コイツらと同じく、俺の誓約相手だ。ただ……一番付き合いが長くて、一緒に戦った時間が長かった相棒さ」
「相棒……」
AN-94の、うわ言の様な呟きがいやに耳に残った。
これから少しづつAN-94と向き合うジョージ。
彼女は、立ち直れるのだろうか。