ぼんやりと、シルエットが見える。
……銀の長い髪を惜しげもなく振りまく、女性。
この人は、見たことがある。
ずっと昔。
脳裏に薄っすらと残る人。
親父が一時期帰省していた時に連れていた女性。
俺は、その人に……。
「アカネ……さん……?」
思い出した。
確か、そう呼ばれていた……。
「……あら、思い出したの」
「……え?AK-12……?」
「こんばんは、ジョージ。もう夜中よ」
ベッドに寝かされていた。
それもそうか……あれだけボコボコにされれぱこうもなる。
「外傷は元に戻るそうよ。腕は……折れてはいないけど、しばらくは使い物にならないかも」
「……AN-94は?」
「あの子は……今回の暴走で謹慎って事になってる」
「そう、か」
「あの子は、もう大丈夫よ」
そう言って、AK-12は俺の頭を撫でる。
「そう言うの、柄じゃないんだが」
「貴方は……そうね、弟みたいなものよ」
「何だよそれ」
「……ちゃんと、思い出したかしら……私の事は」
「あー……まぁ、その、何だ……思い出した」
正直、頭を抱えたくなる。
ずっと記憶の奥底にあった憧れの女性。
俺の初恋の相手は……よりにもよってAK-12だった。
彼女は帰省していた親父の護衛……アカネと言う偽名で着いてきていた。
「母親と同じ顔した女に憧れてたとはなぁ……」
「大尉と同じ趣味って事かしらね」
「マジかよ……血は争えないってか……」
しかし、何故そんな事を忘れていたのだろうか。
「……流石に、記憶処理をさせてもらってたわ。年月が経って効果が弱くなってたし……それで思い出したのかもね」
「……なぁ、AK-12。正規軍に居たときに……」
俺に過剰なアプローチを仕掛けていたのは、もしかして思い出して欲しかったからなのか?
そう言おうとして、人差し指を俺の唇に当てられた。
「それは、秘密よ」
「……聞くのは、野暮だな」
「ええ。でも、今回のお詫びに……一つ、言う事を聞いてあげるわ。何でもいいのよ?」
「女性が、男に何でもと言うのは……感心しないな」
「貴方、動けないでしょう?それに……母親と同じ顔した女を抱くつもり?」
そう言われて、確かにそうだと納得した。
なので、
「目、開けてくれない?」
「……それは、どうして?」
「お前が目を開けてる所が見たい。気になるからな」
「私が、目を閉じているのは……」
「良いよ、知ってる」
「貴方、絶対引くわ」
「引かない」
「ウソよ」
「ホントだ」
「ウソ」
「ホント」
「………………後悔しない?」
「しない」
「そう……」
AK-12は、ゆっくりと、瞼を上げる。
……青紫色をした、少し形の違う瞳だ。
明らかに何かしらの機能を有した瞳。
「……綺麗じゃん」
「本当に、そう思ってる……?」
「もちろん」
何とか動く左手を、AK-12の頬に当てる。
……AK-12が、その手に自分の手を添える。
「初めて、言われたわ」
「そうなのか?見る目が無いな、アイツら」
「かも、ね……ありがとう、ジョージ。私は……貴方に着いていくわ。一生、ね」
「重いなぁ……」
「軍用人形で、MIA扱い。所有権なんて誰も持ってないもの……私達を、縛ってくれないかしら」
「AN-94は、承知しているのか?」
「しないと思う?」
「……思わない」
「だ、そうよ」
AK-12が、そう外へ言葉を投げる。
……部屋のドアが開く。
AN-94が入ってきた。
「……お前、謹慎は」
「ローニンが一時間だけ特別に許してくれた」
「お人好しめ……」
「ジョージ……ごめんなさい……私は」
「良い。恨んでもないし」
「でも」
「終わった事だ。それに……お前はもう自由だ。あんな奴らに縛られなくて良い」
「……ううん。私は……貴方に、縛って欲しい」
「……お前だけを見れないぞ、俺は」
「構わない……たまに、たまに構ってくれたら……それで嬉しい。貴方が私を認めてくれる……それだけで、私は貴方の為に戦えるから」
「そう、か……ったく。親父もおっかない奴置いてくわほんと」
改めて、二人の顔をみる。
「これから、よろしくな……二人共」
これにて、AN-94騒動は終息。
次回、女子会。