回収忘れと言う失態をカバーするために完結したSSにページを付け足すと言う悪手。
……非力な私を許して欲しい。
……結局、あれから鉄血の代理人とは遭遇していない。
「………………」
グリフィン本部の管轄街。
思えばここで遭遇し、因縁が始まった。
空に登る満月を尻目に、夜更けのバーの隅の席に座る。
護衛の人形……今日はグリズリーだ……は、外で待機している。
結局、グリズリーは親父の所に押しかけて……母さんにボコボコにされて帰ってきた。
まぁそうなるだろうとは思っていた。
……ただ、薬指に銀色のリングが付けられていたので……そう言う事になったのだろう。
表情も大分晴れやかなものだった。
……のだが、まさかこれグリズリーが俺の義理の母親って事になるのかとちょっと恐怖していた。
「こんばんは、ジョージ·ベルロック」
「……ニ度ある事は、三度ある……とは言うが。まさか本当にそうだとはな」
二人がけの席に、一人の女性が座る。
いつぞやの白いワンピース姿。
髪を降ろし、記憶にある姿とは別の側面の女性。
「久しぶりだな、代理人」
鉄血ハイエンドモデル、代理人。
それが、目の前に居た。
「ええ、お久しぶりですね」
「……なんとなく、また会う気はしていた」
「私は、また会える日を心待ちにしておりました」
「そいつは光栄だ。飲むか?」
「では、少し」
カシスオレンジを注文する。
手に持っていたグラスが空になったので、追加でハイボールを頼む。
「乾杯しますか?」
「折角だしするか。題目はどうするか」
「再会を祝して」
「オーケー。俺達の再会に――――」
「――――乾杯」
カツン、とグラスがぶつかる。
二人で一口呷る。
「ふぅ……で、今回は何しに来た?」
「そうですね。夢想家を返して頂けませんか?」
「美人の願いを叶えるのは男の本分だがそれは出来ない相談だ」
「アレが居ないと工廠の管理に支障をきたしてしまいますので」
「一人欠けたら回らないのなら、運用を見直したほうが良い」
「何分手が足りませんので」
「それはどこも同じさ」
グラスが空になる。
代理人のグラスも空になる。
「貴方を討たねばならない理由がまた増えてしまいましたね」
「やられる訳にはいかない理由がこっちも増えたね」
代理人が机に置いたチップをそっと突き返す。
「驕りだ」
「敵に塩を送ると?」
「いいや?礼儀さ。アンタには借りがあるんでね」
俺とリサのもう一つの因縁。
AR小隊救出作戦の時の屈辱を忘れた訳ではない。
「では、その様に」
「帰るのか?」
「ええ。ジョージ·ベルロック。最終勧告です。降伏するのなら……そうですね、愛人程度に可愛がってあげましょう」
「お断りだ。俺はまだ負けてないんでね」
「平行線ですね」
「ああ、平行線だ」
代理人が立ち上がる。
「それでは、御機嫌よう」
「おう。出来れば二度とその顔は拝みたくないがな」
音も無く、代理人は消える。
俺も、立ち上がる。
「……今度は、お前が地に伏せる番だ」
回収し忘れていた代理人のフラグを回収。
最終話の前の日、という事で。
これにて終幕。
今までありがとうございました。