ある日のS-12地区。
「……どうしたんだ?改まって」
新しい基地が隣に開設されるので、そのための後方支援へ人形達や人力を騒動員している時期だった。
夜、リサに屋上へ呼び出された。
「……別に。たまには、良いじゃない」
「……そうだな」
二人で空を見上げる。
……珍しく、空は晴れ渡り星が瞬いている。
「ねぇ、ジョージ」
「ん?」
「私たちはさ、アンタに指輪を貰ったわ」
グローブのはめられていない左手を、リサは抱く。
「でも、アンタに私たちは何もあげられてない」
「……ハハッ、なんだそんな事か」
神妙な面持ちで、そんなことを言い出した。
別に、そんな事は気にしていないのに。
「俺は、お前たちから勝利を貰ってる。借金を返すための宛てだってお前たちだ」
「でも……」
「良いんだ、別に。俺はお前たちが居てくれるだけで幸せだよ」
リサの肩を抱いて抱き寄せる。
……彼女は、体重をこちらに預けてくる。
「あんたは、そう言うもんね」
「ああ、俺はそう言う」
「変わんないなぁ、ジョージは」
「お前は、変わったな」
「素直になった私は、嫌い?」
「まさか」
リサの頬にキスを落とす。
くすぐったそうに身をよじっている。
「……ほんと、アンタすぐキスするわね」
「嫌か?」
「……好き」
「そっか。嬉しいよ」
頭をゆっくりと撫でてやる。
……穏やかな時間が流れている。
俺たちは、無言のまま屋上のフェンスにもたれかかった。
「ジョージ」
「うん?」
「実は、もう用意してあるのよね」
ぺろっとリサが舌を出す。
かわいいなぁもう。
「皆でお金出しあったの。デザインも考えて」
「11人で総出かぁ……」
これは重い贈り物だなぁ……。
「……受け取っても?」
「もちろん」
掌にちょこんと黒い箱が乗せられていた。
それを受け取って、開く。
……中には、鈍く銀色に輝く腕時計が入れられていた。
「……時計か」
「それなら、ずっと付けてくれてるでしょ」
「勿論さ。ありがとう」
ご丁寧にもう時刻規制はされている。
腕にもぴったりだ。
「おいおい、いつ採寸したんだ?」
「アニーよ」
「マジかよ」
「色も……あんたの髪と同じ。G3が言い出したのよ」
「そうか……」
愛されてるなぁ、とつくづく感じる。
男冥利に尽きる。
「……ありがとな」
ここまで想われていて、あんな事言えたもんじゃないなと空を見上げる。
「……あ、泣いてる」
「泣いてねーし」
「意外に泣き虫だもんね、ジョージは」
「違うって言ってんだろ」
「……無理しないの。私達が……私が居るんだから」
リサがいったん離れて、俺に向けて両手を広げた。
「なんだよ」
「……おいで」
「いやいや……流石にそこまでは」
「なーんだ……まぁ、流石にこの流れでここまでするのは悪いかも」
「どうして?」
「だって、抜け駆けしてるみたいじゃない」
「ぷっ……なんだそれ」
抜け駆けって。
「俺はお前ら全員愛してるし順位を付けるつもりは無いよ……それに抜け駆けって、全員俺の嫁じゃん」
「……気持ちの問題よ」
「そうか……今度、皆で休暇取るか」
「11人まとめて?基地の戦力無くなっちゃうわよ?」
「……人員増やさないとなぁ」
「増えるかしら」
「……やめてくれー」
絶対人は増えない。
「ま、お前ら居るから大丈夫っしょ」
「ふふ、そうね」
時計を付けた左腕を空へ伸ばす。
「……幸せだなぁ」
「ふふ……当然よ」
「ほんと、嬉しいよ」
「皆にも、ちゃんと言ってあげなさいよ?」
「ああ……なぁ」
「何?」
「……お前だけ選ばなかった事、根に持ってる?」
少し、聞くのが怖かった事。
誓約をリサだけに絞らなかった事。
「別に。アンタの選択でしょ?私たちは……アンタを信じて着いていく。それだけよ」
……敵わないな、ほんとに。
「……ありがとな」
こいつらの為に、報いなきゃな……。
俺は幸せになれた。
こいつらも、幸せにしなきゃな。
そう言えばジョージは指輪は指輪していなかったのを思い出したので急遽拵えました。