【完結】借金から始まる前線生活   作:塊ロック

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プロジェクト・エールシュタイアー

「……どういうことだよ、それ」

 

ある日の事。

久しぶりに親父が基地に顔を出してきたので応接していた時だった。

 

いつものくだらない話をしつつ、表情を引き締めてそう言った。

 

「途切れた血の再生。被験者の名前を取って『エールシュタイアー計画』と名付けられたらしい」

「……血、そうか……血統か」

 

かつて親父は母さんと結婚し、母さんの実家の決めた婚約相手から私怨を向けられていた。

そして、この話は私怨ではなく一族ぐるみの報復であった。

 

「血が途切れるのを恐れて、あいつらはやっちゃいけない事に手を出しやがった」

 

親父が写真を応接用テーブルに投げた。

……そこには、

 

「……母さん?」

 

俺の母親……ハルカ・ベルロックが写っていた。

ただし、目を開いて。

その目も生気を失ったかのように仄暗い。

 

「ジョージ。気を確かに聞いてくれよ」

「………………」

「これはな、()()()()()()()()()()だ」

「なっ……嘘だろ……」

 

クローン技術。

大戦前にも行われていたが……人類に転用するには倫理の観点から問題視されていた。

 

「そこまでして血に拘るのかよ」

「古い考えは俺たちにゃ理解出来ねぇもんさ。もちろん、向こうからもな」

 

親父が肩を竦める。

机に置かれたマグカップを手に取る。

 

「既に計画は始まり……ガキも生まれてる」

「……果たして、クローンから生まれた子供は、人間なんだろうか」

「それは……どうなんだろうな。もう大多数が破棄か処分されてるとか調べはついてる」

「……反吐が出るね」

 

勝手に作って勝手に捨てて。

本当に人間ってのは嫌になる。

自分も人間の一部だって事を差し引いてもな。

 

「今確認できてる生き残りは……4人だ」

「……で?そいつらをどうすんだよ」

 

新たに4枚の写真が投げて寄越された。

 

それぞれ男女が2名ずつ。

写真に書かれた走り書きは……名前か。

 

「……『マイク』『アリサ』『リリス』……んで、『パトリック』か」

「その子たちは捨てられた後孤児院……というか教会に拾われたらしい。まぁ人間らしい生活は出来たようだ」

「そうか……」

「……ただ、そのうちの3人は正規軍に入った」

「……マジか」

「ああ。俺が姿消してる間に入ってきたらしい」

 

自分たちの出自を知らないで……彼らは、兵士になる事を志したのか。

 

「……あとの一人は?」

「PMCだ」

「なるほどねぇ……」

「そっからの消息は掴めてないんだが」

「まぁ充分だ。で?親父は俺に何をさせたい」

 

ここからが本題。

ただ親子の団欒って訳でもないだろう。

 

「見つけ次第、処分してくれ」

「……報酬は?」

「借金、半分くらい払ってやる」

「お断りだ」

 

きっぱりと、言い切ってやった。

 

「……ま、お前ならそういうよな」

「分かってるなら言うなっての」

「冗談……にしちゃ笑えないか。まぁ、保護くらいしてやってくれ」

「で?そっちの()()()()は?」

「潰す」

 

一片の迷いすらなく、親父は言い切った。

 

「……勝手にくたばるなよ」

「分かってるさ。残った人生ハルカさんと……リズィと一緒に生きるって決めたからな」

 

リズィ、というのは……言うだけ野暮かもしれないが……うちのグリズリーである。

 

「今になって母親増えるかと笑えねーよクソ親父」

「息子の嫁が11人ってのはどう言い訳すんだお前」

「知るか。全部欲しいに決まってるだろ」

「ほんとお前俺の息子だわ」

 

親父がカップを置き、立ち上がった。

 

「じゃ、頼んだぜ」

「おう、任せろ……母さんによろしく」

「たまには帰って来いよ」

「ここ一応最前線だかんな?」

「知ってる。けど……そろそろ新しい基地出来るんだろ?」

「……なんで知ってんだよ」

「忘れたのか?俺とクルーガーはダチだって」

 

そう言えばそうだった。

近々、ここS-12地区は最前線ではなくなる。

新たにS-13地区が解放、そこへ基地が新設されるらしい。

 

「ま、そう言うことなら……また、誰か連れて帰るよ」

「流石に一人か二人にしろよ?スペースが無い」

「……努力する」

 

 

 

 

 

 

結局、怖いのは鉄血よりも人間なんだろうな。

 

「ジョージ」

「……んー?」

 

誰も居なくなった応接室で、俺はそのまま親父の寄越した資料を読んでいた。

そこへ、リサが声をかけてきた。

 

「怖い顔してる」

「……まぁ、な」

「また、何かするつもり?」

「まあ……そんなとこ」

「私にも話せない?」

「………………」

 

声音が段々と不安がっている。

どう答えたもんかな……。

 

「あー、その、リサ?」

「何」

「怒らないで聞いてくれるか?」

「内容による」

「……ちょっと、家庭の事情」

「私、家族じゃないの?」

「うぐ……」

 

結果:論破。

 

「はぁ……あのねジョージ。何か勘違いしてるようだから言っておくわよ」

 

がすっと後頭部に衝撃。

うわ、こいつ殴ったよ。

 

「いって……!」

「ふざけんな。今更遠慮する必要は無いわよ。アンタの死ぬところは私の傍よ」

「大げさな」

「そんな事あるもんですか。きっと皆同じ事思ってるわよ」

「えっ、何それ怖い」

 

嫁が全員そんな思想なの?

 

「茶化すな……全く、浮気とか絶対許さないわよ」

「心配すんな。流石にそんなんじゃない」

「そう?もしやったらアンタ殺してバックアップ全部消して後追うわよ」

「やめろっての……全く、昔のつんつんしてた相棒は何処行ったんだ」

「いるわよ、アンタの隣に……生涯ね」

「……サンキュ。もう少し、時間経ったら……話すわ」

 

今後の、戦いを。

どうにも俺は戦う人生らしい。

 

「ええ。信じてるわ」

「ったく、お前にゃほんと敵わねぇわ……」

 

 

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