―――――知らんのか?
なんやかんや色々あって詳しく言うのは省くが……。
「……38.5度。風邪だ。絶対安静」
「うそぉ……」
風邪をひきました。
リージョンが頭を抱えている。
「僕はこれから全部署にお前がダウンしたって言って回らなきゃいけない。この気持ちがわかるかクソ野郎」
「げほっ……すまん」
「マスクしろ馬鹿。お前の持ってる菌がどんな変化するかわからん。面会謝絶だ」
酷い言われようである。
仕方ないけどさ。
俺の体は一部の薬品を除く、ほぼ全ての薬物に対して完全耐性を備えてしまっている。
つまり、麻酔も効かないし風邪薬だって微塵も効かないのだ。
病気になったら俺の体力勝負である。
「ごほっ……まいったな。近々13地区ができるって言うのに」
今俺の所属するS-12地区の隣に、新たにS-13地区が設けられる事になった。
支配していた鉄血のハイエンドモデル、ドリーマーを退けた事によって領域が拡大したのだ。
「馬鹿な事言ってないで寝たらどうです?」
そっと、俺の額に手が置かれた。
ひんやりしている。
「……春。面会謝絶じゃなかったかここ」
「人形に人間の病気は移りませんよ」
「気持ちいい……」
「……こんな冷たい手でも、こんな時役に立つんですね」
「手が冷たいって言う人は、温かい心の持ち主らしい。きっと春のような気持のいい心をしている」
「もう……」
彼女は微笑んでいたが、ちょっと怒ってる。
エメラルドの瞳が少しずつ赤くなってる。
「ったく。今大事な時期だって言うのに……自己管理がなってないんじゃない?」
ドアを開ける音。
リサが水やらなにやら抱えて入ってきた。
段ボールを抱えたカラビーナも続いた。
「自分の体、一番よくわかってるつもりだったんだが」
「皆さんそういうんですよ」
カラビーナが桶を取り出してお湯を張っていた。
やけに庶民的だなおい。
「脱いでください」
「……今日はやけに積極的だな」
「冗談はこの状況だけにしてください。汗だくですわよ指揮官さん」
「はい。脱いで脱いで」
「おわ……!?」
3人がかりであっという間に剥かれたのだった。
――――――――――
「昼は他の子が持ってくるから、しっかり寝てなさいよ」
「誰か見ててくれないのか?」
「はいはい。元気になったらずっと一緒に居てあげるわよ」
リサに額を軽く叩かれて寝かされた。
「おやすみ、ジョージ」
……すぐ眠くなる訳じゃないんだけどね。
横になって目をつぶる。
……そういえば、こうやって一人になる時間もそんなにない気がする。
実際毎晩必ず誰かしら隣に居たしな……。
(こうやってゆっくり出来るのも良いかな……)
たまには一人でゆっくりしてみようかな。
……ドアが、開いた。
「ん……?」
ドアが開いた。
「ごほっ……トカレフ」
「あ、起こしてしまいましたか……」
「大丈夫……まだ寝てない」
「それはそれで問題です。氷枕、持ってきましたよ」
「みんな、過保護だなぁ……」
トカレフから枕を受け取って取り換える。
冷たくて気持ちいい……。
「……それだけ、大事に思われてるんです」
「トカレフ?」
「当たり前じゃないですか」
「そっか。うれしいな」
「だって、私にはジョージさんしか居ないんです。居なくなられたら、また……私は」
「居なくならないよ」
トカレフの手を握る。
「俺は、死なない。お前たちが居るから」
絶対に、彼女たちという存在が消えるまで。
彼女たちを背負ったその日から、俺の命は俺一人の物じゃない。
「……本当ですか」
「もうトカレフを悲しませない。約束する」
「ジョージさん……」
泣きそうな顔をするトカレフを抱き寄せる。
「はーいストップ。いい加減寝なさい」
「あーん」
ひょい、とアニーがトカレフの首根っこを掴んだ。
「アニー……げほっ」
「トカレフ、ジョージも本調子じゃないんだから」
「分かってますよ。迫真の演技でしたでしょう?」
「演技?やれやれ、怖い子だ」
「ジョージ、つまんない意地張ってないで寝なさい」
「はいはい……お休み、二人とも」
まだひと悶着ありそうだけどね。
完結タグ付けた癖にどうして更新するんですかね…。
いや、だってあれ最終回って言うのもどうなのってちょっと思っちゃたんですよ。
そんなわけであと2、3話だけ挿入させてもらいます。
悪しからず。