……ふと、目が覚めた。
外は真っ暗。
時間を見ると深夜の一時。
何となくひんやりする。
季節はもう春だと言うのに。
「すぅ……」
誰かが寝ている。
……見間違えようもない。
リサだ。
ベッド横に椅子を置いて、俺の腹に突っ伏して眠っている。
活動限界ぎりぎりまで動いていたんだろう。
「……ありがとな」
そっと、髪を撫でる。
こいつには、ずっと世話になりっぱなしだ。
研修生時代から、ずっと。
「うぅん……あ、ジョージ……起きたのね……」
「ああ」
「お腹、空いてない」
「……朝から何も食ってないな」
なのに空腹は感じない。
これは本格的におかしいな。
「お粥、あるから。温めてくるわ」
「ありがとう」
リサが部屋から出る。
寝っぱなしもカッコつかないので上体だけ何とか起こす。
五分ほどして、リサが戻ってきた。
「お待たせ……寝てても良かったのに」
「お前が居てくれるんだ。もっと近くで顔が見たい」
「馬鹿」
でこを人差し指で突かれた。
「食べれる?」
「ああ」
「……良いわ。起きてるだけで辛いでしょ」
「ははは、何を」
「汗、すごいわよ」
「……バレたか」
「ほら。あーん」
すっと蓮華にお粥を掬って此方に差し出す。
「おいおい、流石にこの歳で」
「文句言わない。少なくとも治るまでは言う事聞いてもらうわよ」
「……わかったよ」
一口含む。
味は薄いが、温かいというだけで何となく落ち着く。
「これは誰が?」
「私」
「そっか」
「美味しい?」
「……ああ」
「そっか……」
しばらく、無言で食べさせてもらう。
「……ご馳走様」
「全部食べれたわね」
「全然そんな気がしなかったけど、腹減ってたみたいだ」
「これなら、すぐよくなりそうね」
「お前らのお陰だ」
皆が甲斐甲斐しく看病してくれたからすぐに良くなれる。
「……本当だったら、他にちゃんとした方法があったんだけど」
……久しぶりに、リサが自嘲気味な表情をする。
「気にしなくていい」
「……駄目ね。そう言われても、引きずるものはやっぱりあるの」
「……自分のせいだと思ってないか?」
「まぁ、そう来るわよね」
苦々しく笑う。
俺は、天を仰いだ。
俺がこの体質になった原因。
興奮剤の原液を体に投与するに至った経緯。
「目の前でお前を破壊されたくなかった」
「でも」
「お前はもうネジ一本まで俺のもんだ。文句言わせんぞ」
「……アンタの血の一滴まで私たちの物よ。もちろん、私たちがアンタにしてしまった、背負わせたものも、全部」
リサが俺の手を握る。
少し、震えている。
「やっぱり、考えちゃう。アンタが、死んじゃうかもって」
「トカレフも同じ事言ってたな」
「正直、皆同じ事考えてるわよ。スプリングフィールドも、そういってた」
「……そうか」
これは、すぐに快復しないとなぁ。
「俺は、お前らより先に逝けないなぁ」
「当たり前よ。私はアンタと同じ墓に入るんだから」
「おいおい何年後だ」
「11人分しっかり生きなさいよ」
「……何かみんな同じ事言いそうだ」
「棺桶いっぱいね」
「最期までお前らと一緒に居られたら良いな」
「生きるのよ、その時まで」
「そうだなぁ」
リサの手を引く。
「……しないわよ」
「どうせなら一緒に寝ようぜ。関節、変な風に固まるぞ」
「どっか行かない?」
「不安なら、俺を捕まえてみろ」
「朝までしっかり抱きしめてあげるわ。おやすみ、ジョージ」
翌朝、すっかり快復したのだった。
いや、流石にそれはおかしくない?
リサと二人だけのパート。
他の人形も絡ませなくちゃなぁ。