【完結】借金から始まる前線生活   作:塊ロック

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こう、茂みを抜けた後衣服によく着いてる雑草とかあるじゃん?アレ。


ひっつき虫

あれから、トカレフはちゃんとスプリングフィールドに謝りに行った。

…スプリングフィールドは軽く驚いていたが、笑って許してくれた。

 

「指揮官、昨夜の事なんですが…」

「お、おう…M4酔い潰れて大変だったよ」

「そ、そうだったんですか…」

 

久し振りにM4と二人だけで資料室に居た。

休みとは言え1日中ゴロゴロしている訳にはいかない。

なので、媒体が豊富な資料室で少し情報を集めていた。

 

(人形のメンタルケア、か…そんな事出来るんだろうか…)

 

先日のトカレフで出来てしまったケア。

あれからまだ彼女に会っていないのだが、一体どうなって…。

 

「ひっ」

 

M4が食い入るように俺の方を見ていたのに気付き、資料を手から取り落とした。

 

「指揮官、今他の人形(おんな)の事を考えていましたね…?」

「あ、ああ…」

「…最近、指揮官の周りに知らない人形が増えてきて…あまり一緒に居られないと感じています」

「朝夜基本べったりしてる癖に何言ってんだお前」

「昨夜だって結局色んな人形が来ました」

「…ほんと、何でだろうな」

 

俺、アイツらに部屋の場所教えてなかったんだけど。

 

「…しゃーねぇ、じゃ今日はお嬢さんに付き合うよ」

 

もう調べが付くものが見当たらない。

こういう時は気分転換だな。

 

「M4、コーヒーでも飲みに行こう。喫茶店とかある?」

「えっ…あ、えーっと…」

 

付き合うと言われてパァッと表情が明るくなったが、喫茶店と言った瞬間に曇った。

…なんだ、どういう事だ…気になるぞこれ。

 

「え、えーっと…喫茶店はちょっと」

「珍しく歯切れが悪いな」

「ちょっと、苦手な人が居まして」

「へぇー…行ってみるか」

「ええっ、指揮官…!?そんなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

「あら、ジョージ。いらっしゃい、珍しいですね」

 

M4と一緒に回れ右。

その場から全力で走り…。

 

「人の顔を見るなり」「走り出すのは」「失礼じゃないですか?」「ジョージ?」

 

四人の同じ顔に囲まれた。

あっ、くそ!

コイツダミーにも店番させてるのかよ!?

エプロン姿の人形…スプリングフィールドがにこやかに微笑んだ。

 

「いらっしゃい、二人共」

「M4…正直すまんかった」

「私は許しましょう…ですが、この子が許しますかね!?」

「それもお前だよ」

 

コーヒーの匂いがする、とスプリングフィールドに対してちょくちょく思っていたけども…まさか喫茶店やってるとは思わなかった。

有無を言わさずカウンターに並んで座らされた。

…マスターのスプリングフィールド…恐らく本体の目の前。

 

「何にしますか?」

「え、じゃあ…ホット2つ」

「はい、少々お待ちくださいね」

 

接客慣れしているのか、自然なスマイル。

今朝の事がなかったら俺も見惚れてたくらいだ。

…会ったばかりの純粋な俺にはもう、戻れない…。

 

「いでででで」

「し、き、か、ん!」

 

左に座っていたM4に手の甲をつままれた。

M4さんふくれっつら。

 

「ったく可愛いなお前」

「かっ…!?」

 

スプリングフィールドに比べたらまだ。

 

「お前は頼むからそのままで居てくれ」

「はい、ホット2つ。目の前でいちゃつかないでくれませんか?」

「人のこと言えるのか君」

「さて、なんの事やら」

 

相変わらず手強い。

さて、出されたコーヒーを…。

 

「…やべぇ、涙が」

「「えっ」」

「誰かに温かい物貰ったのもしかして初めてかもしれん…」

「えっと、ジョージ…ここで本気で泣かれると…その」

「指揮官…」

 

戦術人形二人に慰められながらひたすら泣いていたのだった。

 

 

…後日、同僚から大分からかわれる羽目になるが、それはまた別の話。




外食とかする様になったのもグリフィンに来てから。
傭兵時代はとにかく節制。
…春田さんの事ちょっと苦手になりつつもこうやって握られていくのに本人は気付いていない。

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