起床。
窓の外は良い天気だ。
まだベッドの中で丸くなる妻に苦笑して、額にキスして肩を揺する。
さて、今日も一日……精一杯生き抜くとしますかね。
――――――――――
「……オイ、このクソ野郎」
自分でも驚くほど低い声。
すぐに手を出さない俺を褒めて欲しい。
これでも時代遅れとは言え大規模なPMCで部隊長をやってたからな「。
「お、おう。何だローニン」
俺の前に座るグレーの髪の伊達男が汗を垂らしながら明らかに動揺している。
「今月に入ってから、バンガード何回壊しやがった」
「え、あ、あはは……3回目かな」
「6回目だ阿保が!!てめぇまだ今月入ってから2週間だぞ!!」
そう、俺の所属するPMC……グリフィン&クルーガーのとある基地の抱えた強化外骨格。
「S-12地区指揮官専用強襲補助外骨格モデルタイタン・バンガード4040」とか言う名前だったか。
それをこいつはなんべんも壊しやがる。
「仕方ねぇだろ!いくら移動力に優れようが向こうは光学兵器だ!当たるもんは当たる!」
「そもそも前に出るんじゃねぇボケが!てめぇそれでも指揮官かジョージ!!」
流石に手が出た。
俺がジョージと呼んだ男はこの基地の指揮官……まぁ最高責任者なんだが。
護衛兼副官の人形も呆れてため息を吐いている。
「指揮官、ローニンさんに怒られるのも何度目ですか」
副官……9A-91が呆れつつもジョージに書類を渡していた。
中身は今回の要件だ。
「いつつ……ありがとう、ハニー。で?これが」
「ああ。近々就任するS-13地区指揮官の情報だ。お前には公開しても良いって上からの判断だと」
「……『リリス・エールシュタイアー』……なかなか美人じゃないだだだだだだだ痛い痛いもっと優しく頼む9A-91!!」
「はぁ……で?この子がお前の言ってた子供たちのうちの一人なんだろ」
「ああ……どうすっかなぁ」
「3か月はお前が面倒見るんだ。その間に何とかしろ」
「……せめて、死なせない様にしてやらないとな」
「同感だ。隣で死なれるのは寝覚めが悪い」
「サンキュー、ローニン。承諾の旨を本部に送り返しといてくれ」
「報酬はせびらなくて良いのか?」
「足りない物があるならお前が適当に書き足しといてくれ。後で良いから報告頼むわ」
「良いのかよ指揮官サマ?」
「今更変な真似はしないと信じてるからな」
「………………」
このプレイボーイは平然とこんな事言いやがって。
「分かった。好きにさせてもらう」
さて、何が足らなかったっけな……。
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結論から言うと、何もかも足らない。
元々うちは最前線に借金塗れの無いない基地だ。
指揮官のジョージが多方面から睨まれ厄介払い兼嫌がらせでそりゃもう酷い扱いだった。
……それを何とかしたのもアイツだけどな。
体張って損失を抑え、やばい薬刺してIOPのモルモット。
それだけやって今ここはもっている状態だ。
俺も必死になるさ。
「……何やってんだ」
「!!」
倉庫に足を運ぶと、黒服の少女が肩を跳ねさせた。
「ろ、ローニンさん……」
「kar98k、人形のお前が何で倉庫なんかに」
「え、えっと……それは」
「にゃー」
「……オイまさか」
「ち、ちちちちち違うんですのよ!?IDWですわ!」
「IDWは後方支援中だ。吐け」
「う、うう……」
Kar98kがしぶしぶ退く。
……そこには、目すら開いていない仔猫が毛布にくるめられていた。
「こいつ、機械じゃない本物の猫じゃねぇか……!」
今、野生生物の飼育は厳しく制限されている。
何故なら、未知の感染症や崩壊度合いが分からないからだ。
ある日突然EULIDになったりしたら笑えない。
「……母親が、わたくし達の戦闘に巻き込まれて……」
「それで、連れ帰ったと?」
「………………」
「はぁ……それでも、規則は規則だぞ」
「ですが」
「お前、ジョージに相談したのか?」
「いえ……」
「はぁー……」
悪いとこばっか影響された気がする。
「どのみち、動物をこんなとこに置いとくのは色々問題がある」
「ローニンさん……」
「お前、ジョージの野郎にちゃんと相談しろ。あいつならお前の為に労力は惜しまない」
「ですが、ジョージさんに迷惑が……」
「これがバレた時の方が面倒だ。あいつに不利になっちまうぞ」
Kar98kがハッとした顔になる。
「お前もジョージもお互い愛し合ってるんだ……ちょっとくらい迷惑かけあうってのが夫婦ってもんだぜ」
「……ふふ、ありがとうございます」
Kar98kが仔猫を抱えてパタパタと走って行った。
「……ったく、どいつもこいつも」
と言う訳でローニン回でした。
他にも人間キャラを出すかどうかちょっと迷ってます。