「ジョージ、あんた私に何か隠してるでしょ」
ある日。
起き抜けにそんな事を枕元で言われたんだからたまったもんじゃなかった。
とんでもなく心臓に悪い一言。
幸運なのは、別に浮気に心当たりがないって事。
「……朝からなんだい、ハニー」
「そのままよ、ダーリン」
リサに鼻をつままれた。
痛い。
昔のリサならハニーって言っただけで顔真っ赤にして演算領域いっぱいいっぱいだったのに。
「隠し事、ねぇ。俺に息子がいたとか?」
「いるんでしょ、弟」
もうこれは誤魔化せない。
いくらなんでも鋭すぎる。
春の影響か?
……母さんの影響だなこれ。
「どこでそれを?」
「どこだと思う?」
「質問を質問で返すのは、利口とは言えないぞ」
「愛する私に隠し事するのは、誠実とは言えないわよ」
「……分かったよ。話す」
段々リサに勝てなくなってきた気がするな。
「俺さ、最近分かったけど父親違いの弟居たんだわ」
「……お義母様が?まさか」
「正確に言うと母さんのクローン」
「……悪趣味」
「同感。反吐が出るね」
「それで?あんたはどうしたいの?」
じっ、とリサが俺を見据える。
彼女の瞳の中に、俺の顔が写っている。
息のかかる距離。
キスで口を塞ぐのは簡単だ。
「助ける」
「言うと思ったわ」
にっ、と笑ってリサが俺の口を唇で塞いだ。
「なら、やることはひとつ。でしょ?」
リサが先にベッドから起き上がり、部屋のクローゼットから衣服を抜き取る。
俺の部屋なんだけど。
まぁ誓約相手の服何故か常備されてんのよねここ。
「あー……」
「あ、でも私怒ってるわよ」
「えっ」
リサがワイシャツに袖を通して振り返る。
とてもいい笑顔をしているけど。
「私じゃなくてローニンに言ったの、絶対許さないから」
「……マジかよ」
「ふふふ。とりあえず今日1日、私の機嫌を治す方法を考えたらどうかしら」
「あ、さては怒ってないなお前」
「どうかしらね。『私は』怒ってないわ」
「……うわ。それ確実に誰か怒ってるやつだ」
どっと疲れが来る。
この疲れが何のせいなのか心当たりが多過ぎて。
「ジョージ、さっさと何か着なさいよ。いつまで全裸のつもり?」
「このまま隣にいてくれない?」
「だーめ。責任取りなさい」
「おうふ……」
「何だかんだちゃんと向き合うんだから先延ばししないの」
「分かったよ……ったく」
さんざん言ってくれた癖にとんでもなく上機嫌な相棒と向き合う。
「さ。命令して。私はあんたのお人形よ」
「ああ、命令しよう。弟を助けてくれ」
「ええ、助けましょう。私達で」