久しぶりに本部から連絡が入った。
首をかしげながらモニターを繋げる。
『久しぶりだな、ベルロック指揮官』
「てめ、クルーガー!」
まるでわざわざ挨拶に来た敵幹部に対する反応みたいだった。
「なんで親父の事黙ってたんだお前!」
『聞かれなかったからな』
「おまっ……!」
確かに尋ねていない。
それはそうとして。
「知っててずっと黙ってること無いだろう……」
『ジョンにも頼まれていたからな。こちらとしてもメリットのある取引だった』
「そうかよ……それで?何のようだ」
『査定の時間だ』
……査定?
はて、どうして……。
「……?親父から聞いてないのか?借金は消えたって。と言うか知ってたなら徴収しなくても良かっただろう」
『貴様こそ何を言っている。
「は―――――?」
何だ、この……嫌な予感は。
『フゥー……どうやら、認識の齟齬があったようだな』
「……今俺は無性にこの通信を遮断したい衝動に駆られている!」
『ここで切った場合、お前の人形のうちどれかが爆発するぞ』
「てめぇぇぇぇぇぇぇ!!」
『冗談だ。さて、では……』
クルーガーの背後にホワイトボードが運ばれてきた。
あ、M1ガーランドだ。
彼女はにっこりと笑いながら……ボードをひっくり返し……俺もひっくり返った。
「は、はぁ!?な、ななななな、なんっ」
「ちょ、指揮官?!落ち着いて!深呼吸!」
「ジョージ、受け入れなさい……現実よ」
40と、アニーが俺に駆け寄ってきて、立たせる。
「だ、だってよ……アーサーなんだぜ!?」
「落ち着きなさいジョージ。意味分からないわ」
「はーっ、はーっ」
「だ、駄目だよアニー、過呼吸起こしてる!」
「仕方ないわね……」
―しばらくお待ちください―
『私は何を見せられているのか、正直疑問に思うよ』
「奇遇だな……俺も今見せられているものが幻覚であると願ってる」
『現実だ』
「ちくしょうめぇ!!何で借金3倍に増えてんだよ!!」
あの時3000万だった借金が今、何故か9000万になっている。
『内訳を話そう……まず、バンガードの修理費』
その後をまとめると、
・バンガード
・誓約した人形の権利購入費
・UMP40製造費
・鉄血ハイエンドモデル夢想家のメンテ費
……が、借金に計上されていた。
「ま、待てよ……何で何も言わなかったんだよ!?」
『誓約のシステムについて承知していると思っていたんだがな』
「しらねぇよ?!普通に指輪渡しただけじゃねーか!!」
なんだこの組織!
俺使い潰されるんじゃないか!?
「クソッ!こんな組織辞めてやる!辞表用意すっからな!?」
『辞められると思うなよ?それに、貴様の体質はIOPに目を付けられているからな。指揮官ではなくなった瞬間拘束されて一生モルモットだぞ』
「人生詰んだぁーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
頭を抱えた。
なんだこれは。
俺の人生死ぬまでグリフィンで指揮官やるしかないのか。
『そういう事だ。励めよ、債務者』
そう、捨て台詞を残して通信は切れた。
俺は……膝から地に突っ伏した。
「……嘘やろ」
「現実よ。全部夢なら良かったかしら」
アニーがそんな風に声を掛けてきた。
「まさか。少なくとも、お前達に会えた事まで悲観なんてしない」
「ジョージ、AR小隊と404小隊が帰ってきたわよ」
リサが執務室に入ってくる。
……その後ろからぞろぞろと、人形達が。
「指揮官!AR小隊ただいま帰還しました!」
「ただいま~しきか~ん?404が帰隊しましたよ~」
「お帰り、皆……」
「あ、45!お帰り!」
「………………40?」
アッッッッッッッ!!!!!
俺とリサは素早くアイコンタクト。
リサは首を勢い良く横に振る。
「………………ジョージ?何、これは」
「い、いや……バンガードのAIが俺の補佐って事で」
「私は、今、冷静さを欠こうとしてるの」
「ひぃッ!!?416!!」
「わ、私に振らないでくれるかしら!?」
「……家族ッ!」
「意味分からんぞナイン!」
「じ、ジョージさん!ただいま帰りました!」
「あーごめんなM4!ほったらかして!」
「話は終わってないわよジョージ」
「ぎゃあああああああああ?!!」
45に締め上げられる。
やばいやばい!(意識が天に)達する達する!!
……その時、基地が揺れた。
「爆発!?どこから!?」
『こちらKar98k!指揮官さん!ハイエンドの襲撃です!』
「嘘だろ!?相手は!?」
『あれは……デストロイヤー!繰り返します!デストロイヤーです!』
『こちらスカウトリーダー!マンティコア小隊を発見!』
「待て待て待て!何で!?」
思わずアニーを見る。
彼女も首を横にぶんぶん振る。
『ドリーマーを返せえええええええええええ!!!』
そんな声が、オープン回線で聞こえてきた。
「……友達想いだなぁ、あの子」
立ち上がり、今この場に居る面々に向き直る。
「さて、じゃあ出迎えてやろうか!行くぞ!」
俺の前線生活も、当分終わらないなぁこれ。
「ジョージ」
「ん?どうしたリサ」
「大丈夫よ、私たちが居るわ」
「……そうだな。頼りにしてるぞ、相棒」
「そっちこそ、失望させないでよ、相棒」
さぁ、戦おうか。
借金から始まる前線生活~Fin~
これにて、半年間連載した当シリーズは最終回になります。
多くのブックマークに評価、お気に入りをして下さった皆様方、本当にありがとうございました。
感想も、日々の活動の糧にさせて頂きました。
これからもジョージの借金生活は続きます。
ですが、ここで一旦綴るのは終わります。
今まで、本当にありがとうございました。