平穏がサヨナラ。
「おはようございます…指揮官♡」
「おはようお嬢さん。所で、俺は昨夜鍵を掛けて寝た筈なんだがなんで居るの?」
アラームが鳴り響く中の起床。
そしていつもの様に俺に覆い被さっているM4。
この1週間彼女が検査で居なかったため、すっかり油断していた。
「昨夜は指揮官に入れてもらってから鍵がかかっていましたよ?」
「…マジかよ」
鍵かける直前に侵入して俺が寝てからベッドに入ってきたなこいつ。
「ふふ、久し振りですね…一緒に朝を迎えるのも」
「俺から誘った事は皆無だけどな」
「私、ずっと気が気じゃなかったんです…最近、指揮官の周りに別の人形が増えてきて」
気が付いたら傭兵時代に知り合った人形やらバディやらでどんどん増えていった。
いやぁ…何でだろうな。
「さぁ指揮官…今日は二人きりです…一緒に愛を深めましょう…?」
「俺は仕事なんだけど」
「えへへ…指揮官…」
「聞いて」
猫みたいに顔を胸板に擦りつけてくる。
M4はなんと言うか、こうやってベタベタしてくる割に男女の行為の先へ進む事は決してしない。
せいぜいこうやってスキンシップしてくるのが多いくらいか。
思えば、俺はM4について殆どよく知らない。
AR小隊所属と言うのも聞きかじった知識であるだけだ。
「とりあえずミーティングに遅れたくないからそろそろ退いてくれないか?」
「そんな…」
この世の終わりみたいな顔しないで?心臓に悪いんだけど。
「今日は一日本部勤務だから、飯くらい一緒に食える。だからな?」
「…はい」
「ありがとう、聞き分けの良い子は好きだぞ」
「す、好き!?ありがとうございます…」
完全に『聞き分けの良い』の部分が抜け落ちた受け取り方をされた気がする。
「指揮官、今日もがんばってくださいね!」
「いやに上機嫌だな」
「はい!私の為に指揮官ががんばってくれてるんです!私も頑張らないと」
まぁ、言ってる事が些かおかしい気がするが気にしてはいけない。
それに、俺が積み上げてきた物は決して無駄じゃなかったとトカレフで証明出来たんだ。
これからも俺が立ち止まらない限り道は続く…。
ドアノブに手を掛けようとした瞬間、
ドアが勢い良くこちらに向けて開いた。
「ぶぁぇっ!?」
「指揮官!?何やってるんですか指揮官!?」
「M4ォ…進み続ける限り…その先に俺はいるぞ…だからよ…止ま」
「ジョージ!緊急事態よ!すぐ支度して!!」
ドアを蹴破ったのは、仮バディのWA2000だった。
…表情は平静を装うとしてもバレるレベルの焦りが浮かんでいた。
すぐに思考を切り替える。
「状況は」
「AR小隊が包囲されて孤立、IOPからの圧力もあって救出作戦が計画されてるわ」
AR小隊と聞き、思わずM4を見た。
…肝心のM4の方は、あまり事態を重く見ては居ないのだろうか…表情が変わらない。
「判った。で、何で俺を呼んだ?」
「一番動かしやすくて………仮に死んでも損失が少ないからよ」
「WA2000!貴方自分が何を言ってるのかわかってるんですか!?」
「分かってるわよ!!でも、現場に向かえる指揮官が居ないのよ!」
「指揮官、駄目です、行かないで下さい」
WA2000とM4が言い争いながら、俺は別の事を考えていた。
…AR小隊を助ける?
テロを仕掛けて損害を与えた俺に?その仕事をさせるのか?
「ジョージ、来て。貴方しか居ないの」
「指揮官!」
「……………判ってる、判ってるさ」
包囲網を食い破る為の作戦。
恐らく最前線に指揮所を設けなければならないのだろう。
包囲されて逆に打尽される恐れがある。
指揮官としての初陣にしては中々ハードルが高い…が。
逆にここを切り抜けたとしたら、俺の
「WA2000、準備しろ。出る」
「指揮官っ…」
「M4、大丈夫だ。絶対戻る」
「ジョージ。三時間後に出発よ……ありがとう」
そう残し、WA2000は部屋を去る。
…M4は、俯いたまま喋らない。
「…今度は、俺が出てく番だな」
「え…?」
「M4は予定より2日切り上げて帰ってこれたんだ。なら俺はもっと早く片付けて帰ってこないとな」
「指揮官…」
「大丈夫だ。お前の姉妹も助ける。俺も帰ってくる。心配すんな」
壁に掛けてあった制服に袖を通す。
これ派手だからあんまり好きじゃないんだよな…。
「指揮官…!私も、」
「…駄目だ。この前検査したばっかなんだろ。まだ処理とか諸々終わってない筈だ…お前は残れ」
「………わかり、ました。必ず…帰ってきてください」
返事をしないで、軽くM4の頭を撫でて、俺は部屋を出た。
「クルーガーの野郎、戻ったらぶん殴ってやる」
どうしてもシリアスに寄っていってしまう。
何故だろうか。
戦闘描写が苦手で無しって書いてるのにここから先書かなきゃいけないジレンマ。
そろそろ物語を動かさないといけない。