追手の追跡を振り切り、廃墟の一角へ身を潜める事に成功する。
「ハァ…ハァ…ジョージ…生きてる…?」
「ゼェー…ゼェー…ああ…何とかなァ…」
現在、俺とWA2000が背中合わせでフロアの一角にへたり込んでいた。
何とか敵PMCの追跡を一旦撒き、廃墟の中へ飛び込んだのたった。
「アイツら何なの…ホント、しつこい…」
「グリフィン目の敵に…してるもんな…」
息絶え絶え。
しかし命は尽きていない。
幸運な事に直撃は貰っていない。
かすり傷と…俺は打撲痕がいくらか。
「…ねぇ、バディ。アンタ何でこんな事してるのか教えなさいよ」
息も整わない内に、WA2000が切り出してきた。
「あー…まぁ、何だ。金の為だよ」
「嘘。お金の為なんかに一人で残って戦うなんておかしいわ」
「言えてる…何でなんだろうな」
正直…グリフィンを襲撃する依頼を受けて、裏切られて、グリフィンに雇われて、そして復讐の依頼を受けたとか説明されても困るだろう。
「何よそれ。貴方守銭奴のくせにお人好しにも程があるんじゃない?」
「言えてる」
「ま、私は別にそれでもいいとおもうけどね」
「…今の内に荷物整理とかしておこう…何が役に立つか分からんからな」
「何よ、もしかして照れてるのかしら?」
今身に着けている装備を見直す。
89式の弾は残り僅か。
投擲物はフラッシュバンが1、スモークが1。
…何故か動いている袋がひとつ。
「ねぇジョージ?何これ」
「ん?ちょっとした鹵獲品」
バックパックの中身は水と救急品、食料と…。
「何この明らかに怪しい緑の液体は」
「これ?興奮剤」
「は、はぁ!?バカなの!?こんな時に?変態!」
「何を勘違いしてるかしらんがソッチの用途で使うものじゃない」
「なっ、そ、ソッチって」
「これな…俺が昔受けた依頼の報酬代わりで貰ったんだが…一時的に超人並み…それこそ人形みたいな力を得られるらしい」
「…文字通りの切り札ね、それ」
「問題は力を使った後の肉体の損傷。効果が切れた後動けなくなるかもしれん…」
「…それは、使わない様にしましょう」
「出来れば使いたくない…な、確かに」
広げた装備を戻して、身に着ける。
嫌な汗で不快感が増し増しであるが、我慢。
「ったく、人形が羨ましぜ…あ、スモーク預けとくわ」
「何よいきなり」
「何でもねぇ。移動す」
…手を掛けようとしていたドアが、爆風で吹き飛んだ。
「ジョージ!?」
「っ、げ、ほっ、ァ、く、そ…もうバレたか…!?」
「動くなクソ傭兵!」
見えるだけで三人、武装した人間が部屋に入ってくる。
「おい、見ろよ…コイツ女連れてるぜ。好みだ」
「バカ、戦術人形だろ…俺らの使ってる旧型とは段違いのな」
「ヒュー、グリフィン最高だな…!おいクソ傭兵?コイツとヤッてんのか?」
「そこまでにしろ。ったく、グリフィンが傭兵雇ってたとはな…」
小隊長がこの男だろうか。
下卑た笑いを浮かべた男を制していたあたり、こいつが上官だろう。
………聞き覚えがあるような声だが。
「ん?お前、この前グリフィンのトラック襲わせた傭兵…」
「てめぇ俺ぶん殴ったクソ野郎じゃねぇか!?」
「死に損なってグリフィンについたか…モノ好きな奴だ」
「お前らこそ天下のグリフィン様に喧嘩売ってるなんてモノ好きだ」
「違いねぇ」
油断なく銃をこちらに突きつけている。
…男が一人、WA2000に近付いていた。
「へへ、嬢ちゃんオレたちと一緒に来ねぇか?可愛がってやるよ」
「死んでも御免よ」
「こんな状況で強気だねぇ…」
「そこまでにしとけ。ったく、女なら人形でも関係ないのかよ」
「あんたんとこも大変みたいだな」
「ああ、お陰様で…こんな所で無駄話もなんだ。傭兵、AR小隊はどこやった」
「AR小隊?知らんねぇ」
瞬間、口の中に鉄の味が広がる。
殴られたのだ。
「ジョージ!」
「おっと、嬢ちゃんは大人しくしてなよ!」
「きゃ…離せ、その汚らしい手をどかしなさいよ!」
「クソ傭兵。もう一度聞く。AR小隊はどこだ?次は人形の方を痛めつけてもいい」
「……人形とは言え女に手を上げるなんて、最低だな」
「それは、お前の態度次第だ」
「…ったく、しょうがねぇな…そこの袋開けてみな」
小隊長が目配せして、外を警戒していた男に袋を開けさせる。
…袋の中から、
「なっ…ダイナゲート!?」
「おいこれ、しかも救難信号出して…」
…外から銃声と悲鳴が聞こえてきた。
「こんだけ騒いでりゃ、他の勢力が見に来るよなぁ?」
「クソ傭兵…ここに鉄血呼びやがったな…!?」
「ハハッ、どうする?このままだとお前らも全滅だぜ?」
「この…イカれ傭兵が!!」
「WA2000!!」
「遅いのよ!!」
カラン、とWA2000のスカートから何かが落ちる。
…スモークグレネードが爆ぜた。
「煙幕!?クソ傭兵がぶっ殺してやる!」
「あばよクソPMC!!」
「グッ!?」
すぐに小隊長の顔面をぶん殴った。
ちょっとすっきり。
そして、踵を返してWA2000と窓を付き破って飛び降りた。
…眼下には鉄血とPMCの乱戦が広がっていた。
「…さて、どう逃げようかなこれ」
「ノープランなの!?」
まだまだ続く。
今の所わーちゃんの影響が強過ぎて他の子たちがもう息してない…。
ここまで書きたくなって書いた内容だからどこかで埋め合わせる必要が出てきてしまった…。
ジョージvsPMCvs鉄血。
次回、一番会いたくない奴が登場。