ジョージは退院しリハビリに励んでいた。
「はっ…はっ…くそ、流石に体力落ちてんな…!」
荒い息を整えながら、独りごちる。
AR小隊との最悪の出会いから一ヶ月。
無事退院し、配属先の発表までリハビリをしていた。
「ぜーッ、ぜー…ふぅ、よし」
もう一度走り出す。
じっとしていても何も変わらないし気が滅入る…なら、動こう。
「ジョージさーん!」
「…ん?」
小走りでトカレフが走ってきた。
何気に入院前からも会っていないから久し振りではある。
「トカレフ、久し振り。見ない内にまた一段と素敵になったね」
「え、あっ、えへへ。ありがとうございます…」
「最近射撃場によく行ってるみたいじゃないか。もう大丈夫なのか?」
「はい!大丈夫です!私はもう、迷いません」
かつて見た不安定な少女はそこに居ない。
目の前に居るのは、立派な戦術人形だ。
「あ、そうでした…ジョージさん、お手紙です」
「手紙?俺に…?今どき珍しい。紙だって安くないのに…」
トカレフから上品な封のされた便箋を受け取る。
「何何…拝啓ジョージ・ベルロック様…」
ーーー翌日、グリフィン傘下の市街。
「………やぁ、お嬢さん」
「来ましたね」
目の前に立つ、白いワンピースと麦わら帽子を被り艶のある黒い髪を卸した人形に声を掛ける。
「………何の用だ、代理人とやら」
…化粧や服装で誤魔化しているが…目の前の美女は、鉄血の代理人で間違い無かった。
「用?誘ったのは貴方の方では?」
「誘った…えっ、まさか」
あの時の誘いに乗ってきたのか…!?
「その為だけに、わざわざ…グリフィン傘下にまで潜入してきたってのかよ」
「私としても興味がありますからね…戦場で私を見て、生き残った者として」
「…俺としては、今この瞬間に殺されるかもしれないって危機感が身を焦がしてるんだが」
「焼きませんよ、少なくともここでは」
何となくM4と似た返しをされた。
まぁ、何だ…わざわざ来てもらったし…無碍に帰すのも忍びないというか。
「わかった。俺が案内しよう…」
「お願いします」
何だこの状況…。
この後、古着屋を冷やかしてアクセサリーを眺め、銃の闇市を覗いて喫茶店に入った…ごく普通のデートコースを歩くのであった。
…意外と言えば、代理人さん結構色んなことに興味があるようだ。
人並みにアクセサリーに興味があったり、銃器に関して鉄血製はいかに素晴らしいかを語り喫茶店で飲んだコーヒーについても豆がほしいと言っていた。
鉄血のハイエンドモデルも随分と人間臭い…。
「本日はありがとうございました。それなりに楽しめましたよ、人間」
「そいつはどうも…俺もアンタみたいな美人と歩けて役得だったよ…ただ、手紙に書いたんだから名前で読んでくれないもんかね」
「…分かりました。ベルロック…これで宜しいでしょうか」
「おう、代理人」
「そろそろ良いお時間ですね。これにて失礼致します」
「ああ。…帰れるのか?」
「問題はありません…近くに住んでいますので」
「へぇ…………ゑ?」
待て、今近く住んでるって言ったか…?
「それでは、ごきげんよう」
「ちょ、おま!待っ…居ない…」
角を曲がって行ったと思えば、代理人の姿は影も形も無かった。
「何なんだ一体…」
しかしこれグリフィンにバレたら酷い目に合いそうだこれ。
「ねぇ、ジョージ。今の誰?」
「うーん…ジャスミンの君」
「ふぅん…」
「…」
「…」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!?UMP45!?」
なんてことは無いほのぼの回でした。
ほのぼの…?
ほのぼの!
次回はUMP45にご褒美をあげましょう。