エリア名は、S-12。
…ごめん、約束…守れなかった。
配属先が決まり、部下も決まった。
けれど、こっちでまだやらなきゃいけない事がある。
「荷物は…元々少なかったし、こんなもんか」
手提げ鞄ひとつに全て収まってしまった。
AR小隊救出の際に自身の装備は全て使い切った上に、愛用していた89式小銃は紛失、ボディアーマーも大穴が開いたので破棄していた。
「俺の物、気が付いたら全然無いんだな…」
何だかんだずっと手元に残ってる物は数える程しかない。
金も装備も、何もかも無くなって行く。
「はぁ…」
「そんなため息吐いてると幸せが逃げていきますよ?」
「そうは言うがな………うおおおおおおおおおおお?!!モーゼルカラビーナ!?何でいんの?!」
振り返ると、銀髪人形がにっこりと微笑んでいた。
うーん惚れ惚れするほどの美人さん。
ちょいとばかし背が低いような感じがしないでもないがこれも愛嬌だろう。
「グリフィン発展の立役者となった
「え?ああ…真面目だな」
なんか強調された気がするけど気にしちゃいけない…よね、きっと。
「わたくし、これでもダミーを3体扱える程の実力者ですのよ?きっとお役に立ちますわ!」
「へぇ…そうなのか、頼りにしてるぜ」
「はい、任されました。わたくしが居れば指揮官さんの為に何もかもして差し上げられます!」
「お、おう…しかし、スプリングフィールドの5体って相当凄いんだろうな…」
「…スプリングフィールドォ?」
kar98kの口が一気にへの字になった。
あ、まずい…これ地雷踏んだな?俺は詳しいんだ。
「指揮官さん?どうして、あの、腹黒ライフルの、名前が、出てきますの?」
笑顔で口をへの字にすると言う器用な芸当をしながら近づいてきた。
思わず後ずさる…まぁ部屋の角に追い詰められたんですけどね!!
「え、あ、いや、縁があって付き合いが」
「付き合い!?指揮官さん!?あの女だけは絶対認めませんわ!!」
「何を言ってる!俺達はただ」
「『俺達』!?もうそんな仲だなんて…!まさか、あの女と寝たなんて言いませんわよね!?」
「………いや、そんな事は」
一瞬ベッドで横になったスプリングフィールドの裸体がフラッシュバックした。
…他意はない。
が、その間が彼女には逆効果だった様だ。
「ま!まままままままままさか!?そんなぁ…ううぅ…せっかくわたくしの事を引き取ってくれる指揮官さんが来てくれたと思いましたのにぃ~!!」
何を誤解したのか分からないが…泣き出してしまった。
えぇ…。
「な、泣くなって…俺と彼女は何も無いよ…な?信じてくれないか?」
「うう…」
「kar98k…いや、カラビーナ。君は、君の指揮官を信用できないか?」
「そ、そんな事は…」
「そうか、なら安心だ。しかし、君みたいな可憐な女性をほっとく他の指揮官も節穴だな」
「か、可憐っ!?」
「ん?ああ、君は可憐だ。俺が保障しよう」
「え、えへへ…」
泣き止んだかと思えば物凄い表情を崩した。
上機嫌になっている…感情の起伏が激しい子だな。
「君の事は俺が責任を持って指揮をする。だから、元気出せ、な?」
「はい!わたくしモーゼルKar98kは指揮官さんの為に全ての障害を取り除く事を約束しますわ!勿論あの憎きスプリングフィールドも!」
「私が、どうかしたんですか?」
「「………えっ?」」
開けっ放しのドアに、栗色の髪をした柔和に微笑む戦術人形が立っていた。
「ジョージ、誰です?その女は」
「ひっ…!」
移動準備、何一つ終わってねぇ…。
次回、お別れパートです。
…大丈夫かな。