前にもこんな事があったなと苦笑しながら、彼女の名前を呼ぶ。
「何してんだトカレ」
「指揮官、私の名前…ちゃんと覚えててくれてますか?」
「うわァァァァァァ!!?」
振り返って名前を呼ぼうとしたら目の前に赤いベレー帽があった。
いやだって真後ろに居たんだろこの子。
怖いよ。
「も、勿論だ9A-91…」
「да、何でしょう指揮官♪」
ベレー帽の人形…9A-91が微笑む。
彼女もカラビーナと同じ俺直属の部下になる戦術人形だ。
何だかんだちゃんと話すのは初めてになる。
「9A-91、すまないな。ちゃんと話すのが遅れてしまった」
「大丈夫ですよ指揮官。私はずっと見てましたから、指揮官の事はよく分かっています」
「…え?」
「昨日はWA2000さんと談笑したあとそのままBARで朝まで飲み明かしてました。そのまま資料に目を通して、これから新しく配置される戦術人形の発注を掛ける所ですね」
…ひっ。
見てた?ずっと?ずっとっていつから?
「ふふふ…」
「よ、よくもまぁそんな俺のスケジュール把握してるな」
「指揮官のお世話をするのは、私の役目です…目を離さないので、指揮官も私から…目を離さなでくださいね?」
何するかわからねぇから本当に目が離せないね!?
「な、なんかカラビーナもそうだったけど…俺への評価…と言うか接し方が過度じゃないか?」
「そう、ですか…?指揮官はグリフィン拡大に独力で貢献したある意味での英雄です…私は、人事から精いっぱい奉仕しろと」
「へぇ…やっぱ人形にも人事とか居るんだな」
「そうですよ。指揮官の要望、適正とすり合わせて私たちをその人の下に配属させるみたいです」
よし、文句言いに行こう。
なんで俺の所にばかり問題児が来るのか。
「ちなみに他にはなんと?」
「『あの人なら貴女の想いを受け止めてくれる筈』です」
「よし人事の名前教えろ」
出鱈目言ってんじゃねぇよ!?
本来重い女はノーサンキューなんだが。
…前に付き合ってた女性が2連続で重い感情満載だったからほんと、マジ勘弁してくれないか…。
「…指揮官、また私から視線を外しましたね」
「え、いや、ずっと君の事を見て…」
「他の人の事を考えていました」
なんでこういう女って基本勘が鋭いの?
エスパー?IOPが脳波でも読めるシステムでも作ったのか?
「あなたに認められてないのなら…私は」
「待て待て、誰も認めてないなんて言ってない。まだ君の性能を俺は知らない」
そもそも会ったばかりでそいつの何を判断しろって言うんだ。
「え…?」
「君は俺の部下になった。なら、これから君の価値を俺に示してくれ。それこそ、釘付けにするくらいにな」
「指揮官…」
「俺を夢中にさせてみろ」
戦術人形のシステムのポテンシャルは計り知れない。
戦術人形の疑似感情は想像するよりもずっと高度だ。
グリフィンに来てからずっと考えていた事。
疑似的な感情を持つ彼女たちに、俺が何かしらの影響を与えられるのか、ということに。
トカレフの心の傷を肩代わりし、WA2000の相方を担い、スプリングフィールドの拠り所になり。
…ただ戦闘させるために生かす事は、無いはずだと。
「指揮官…ありがとうございます…!これからも…ずっと私の事を見ててください…夢中になってください…!」
「頼むぞ9A-91」
「はい♪では早速…」
「お、わ、っ、ちょ、何して」
9A-91に腕を引っ張られて地面にひっくり返された。
腹の上に9A-91が腰を下ろした。
「まずは、ここの性能を見てもらえますか…?」
「何で、そうなる!?戦場で見せてくれない!?」
「実は、貴方の戦歴…雄姿を、ずっと戦場で見てたんです…♡」
「あ、思い出した!AR小隊の救出戦で飛行場の警備してたな君!?」
「思い出してくれましたか…?うれしいです…」
「待って待て待て!!ここ廊下!こんなとこでおっ始める気か!?」
「ここはこの時間帯誰も通りませんよ…」
「謀ったな!?」
「良いではありませんか良いではありませんか…」
「それ言う方が違う!」
「指揮官…」
「ああクソ!『命令だ、そこを退け』」
「…いけず」
正式に指揮官となるので、ようやく俺にも絶対命令権が与えられた。
…こんな所で最初の一発目使うとは思わなかったけど。
「良いか9A-91…淑女がみだりに男の上に乗るもんじゃない」
「夢中にさせろって、指揮官言いました」
「そういう意味じゃないからな!?」
…俺、新しい基地でやってけるかな…。
「今日からお部屋にもお邪魔しますね」
「頼む、来ないで」
二人目の部下、9A-91ちゃんとのほのぼのとした会話でした。
ロシア語を混ぜた方がいいのかなと思ったり思わなかったり。
何となく難しい子だなと思って今まで出してなかったので、ようやく登場でした。
キャラが掴めて無いので違和感満載ですが、うちの創作上ではこんな感じか、と受け止めてもらえると幸いです。