影は言うのだ、このままで良いのか、と。
「ハァイ、ジョージィ?元気?」
「これが元気なら即刻オーバーホールを勧める…UMP45」
「あら、ご挨拶ね」
顔を上げると、UMP45の笑みが目に入った。
…何故だろうか、彼女の表情が…ひどく同情的なのは。
「酷いじゃない、ジョージ。明日異動なのに他の人形達みたいなドラマチックな別れの挨拶は無いの?」
「…すまん、今はそれどころじゃ…」
「ペルシカから聞いたんでしょ?M4の事を」
「何で…」
「私を誰だと思ってるの?」
まぁ確かに。
無駄に納得してしまった。
「テロリストから一転してすごい事になったわね」
「…全くだ。気が滅入るったらありゃしない」
「それは、M4に対して貴方が取った態度に?」
45の表情は変わらない。
薄ら寒い物を覚えてしまう。
「何が、言いたい…」
「同情と罪悪感で接してた癖に、そうじゃなかったと知った途端に自己嫌悪するなんて…傲慢ね」
「て、めぇ!」
余裕が無い今、安い挑発に乗ってしまい…振り上げた手を、力なく降ろした。
「殴らないの?」
「女の子を殴るのは、趣味じゃない」
「人形よ?私は。貴方の言う女の子じゃないのよ」
「関係、無い…」
「ならM4は?どうするの?中途半端に接して置いてくのかしら…貴方の言う人形も人間も関係ない
「…!」
中途半端。
そう言われた瞬間ハッとする。
「…行って。貴方の借り物がまだ残ってるでしょ」
「………すまん、ありがとう…またな。次はサシで飲もう」
「期待してないわ…それじゃあね」
走り出す。
そうだ、俺はまだ何もやっちゃいない…!
「M4…!ケリをつけよう…!」
せめて、最後くらい夢を見させて終わらせよう…!
ーーside UMP45ーー
ジョージは走っていった。
その様子は、少し面白くないけどジョージらしいのと言えばらしいので目を瞑ろう。
「…敵に塩を贈る気?」
いつの間にか、隣に416が立っていた。
「塩?いいえ…これは、ジョージの為よ」
「ジョージの為?困難な道を示し続ける事が?」
心底呆れたような顔を返された。
私は今、どんな顔をしてるんだろうか。
「そう。彼が困難に当たる度に困難な道を示して、それでも折れない姿を見たいの。みっともなく足掻く姿が見たいの…例え偽物でも、借り物だろうと真剣に向かい合う姿が見たいの」
「下衆ね」
「貴女こそ行かなくていいのかしら?明日、出発よ」
「今生の別れって訳でもないわ」
「ドライね…それとも、そう気取ってるだけかしら」
「UMP45、貴女ねぇ…!」
相変わらず、煽り耐性のない…。
私は機嫌がいいから気にしないけどね。
「例え折れたとしても、私が埋めてあげるわ…だから、せいぜい足掻いて、ボロボロにされてね…ジョージ」
自分の言った事を曲げる訳には行かない。
女の子の前でみっともない姿を見せる訳には行かない。
中途半端に放り出すなんて出来ない。
M4A1、俺のエゴに突き合わせて済まないが…お互いの関係に、決着を付けよう。
借金から始まる前線生活、第40話『夢と明日とそれからと』。
次回、研修生活最終回。