【完結】借金から始まる前線生活   作:塊ロック

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よう、久しぶり。

…え?誰、だと?
俺だよ俺、ローニンだ。

昔はあるPMCの小隊長やってたんだが…クソ傭兵のせいで今じゃグリフィンの寂れた前線基地の後方幕僚兼輸送部隊長だ。

あん?クソ傭兵はどうしたって?
あー、まぁ、その…なんだ。

俺の上司になっちまったんだ。
世の中何があるかわかんねーよ。

で、あれから三ヶ月経った。
割とこの辺の鉄血もしぶとくてな…侵攻を遅らせるので手一杯。

いい加減新しい人形やら迎えないと厳しいもんだ…。

なぁ、指揮官サマ?そろそろ新しい人形製造しないと戦力が…あ?

金が、無い?




第ニ章 紙幣と運命のマリオネット
紙幣と運命のマリオネット


…また、遠くの方で爆発音がする。

迫撃砲でも落ちたのだろうか。

 

「いっだいにゃあぁぁぁぁ!!!」

 

黒焦げのボロボロの人形が走って爆炎の中から出てきた。

その背後からまだまだ弾丸が飛んでくる。

 

「ひぃっ!!ちょ、指揮官!早く!早く!!」

「IDW!伏せて!」

「ぎにゃあぁぁぁ!!」

 

先程までIDWが居た位置に、榴弾が撃ち込まれる。

 

爆発。

IDWと呼ばれた人形を追っていた影が2〜3まとめて吹き飛んだ。

 

「助かったにゃー!!GrG3!」

「間に合ってよかった…さ、IDW。こっちに」

「二人共!こっち!」

 

小柄な黒いシルエット。

瞳だけが若干赤く光っている。

 

「G17、無事だったんですね!」

「もちろん!ボスは?そろそろ厳しいよ」

「指揮官はkar98kと一緒に迫撃砲を潰しに行ったにゃ…大丈夫かにゃあ…」

 

先程指揮官から説明されたブリーフィングを思い出す。

 

今の前線は、敵迫撃砲の攻撃により補給ルートに損害を被っている。

先ず前衛三人で敵前衛の注意を引き、Kar98kと指揮官で迫撃砲を叩くと…かなり無茶苦茶を言っていた。

 

「何でボスまで前線に出てるんだろう」

「何でも、観測手経験が長いらしいですね」

「指揮官ここに来る前に何やってたんだろうにゃ」

「少なくとも、お金はなさそうですけどね」

「言えてる」

 

いつも金が無いとボヤいていた。

そんでもって本部から言い渡される無茶な任務にいつも頭を捻っていた。

さながら糸で操る人形みたいに。

 

「IDWの被害が激しい。一旦様子見して…」

「!皆さん!前方に鉄血の部隊です!」

「まずいにゃ!GrG3、榴弾は?!」

「あと一発です!」

「ヤバいボス…!全滅する…!」

 

隠れていた物陰の周囲に、徐々にだが鉄血の人形達が近付いていた。

背後は崖。

もう後退することは出来ない。

 

発見されるのも、時間の問題だ。

 

…その時、鉄血の最前列に居た人形の頭が、吹き飛んだ。

 

「えっ」

「もっと、私を、見てください…!」

 

隊列を崩した鉄血の目の前に、白い影が躍り出る。

手にしたアサルトライフルから弾丸がばら撒かれ、瞬く間に蜂の巣を量産する。

 

「GrG3!榴弾!」

「は、はい!」

 

指示された通りに、発射。

敵の群体の中心から逸れる…が、右翼が完全に瓦解した。

 

「走って!」

「にやぁぁぁぁ!!」

 

瓦解した右翼に向けて全速力で走る4体。

鉄血の部隊となんとかすれ違い、距離を取って振り返る。

 

「落とせ!カラビーナ!」

「覚悟なさって!!」

 

ライフル弾が一発。

鉄血の群れを通り過ぎ、崖の上の立てかけてあった突っ張り棒をふっ飛ばした。

 

…何を支えてあったか、考えてみると相当全時代的な代物が降ってくる。

 

崖の上から、大量の岩が転がってきた。

 

「うわぁ…」

 

誰かがそんな声を漏らした。

茫然とする四体の後ろから、二人が近付いてきた。

 

片方は先程ぶっ放したライフル、Kar98k。

そして、

 

「待たせたな、お前ら。よくやった」

 

若干くたびれた感じの、しかしまだ若い男が立っていた。

 

「指揮官!」

「ボス!」

 

前線に立つ異例の指揮官。

そんな男が不敵に笑った。

 

「逃げるぞ!!」

 

慌てて振り向くと、落石から生き残った敵が各々銃を向けてきていた。

…世の中、そんなに甘くないのだ。

 

六人分の影は全速力で回収地点まで逃げたのだった。

 

 

 




お久しぶりです。

そんな訳で、借金前線の第二章、前線生活編がスタートしました。
人形あと三体をどうするか悩み、この人選にしてみました。

不定期に更新していきますので、また気長にお付き合いして頂けると嬉しいです。

それでは、また次回に。

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