新しく配属された指揮官は、私達を人間みたいに扱ってくれた。
でも、いつか潰れないか心配だな。
「…で?指揮官サマ?何か申し開きは?」
「半分くらいは潰せたと思うんだ」
「お前の作戦はどうしていつもそうなんだ!俺達とやり合った時だってめちゃくちゃだったろ!」
「懐かしいなぁローニン。あの時は本当に大変だった」
「こっちもだバカヤロー!」
グリフィン、S-12管理地区前線基地。
あの後全速力で回収地点まで逃げ込み、ローニンの車両に飛び乗って撤退来てきたのだった。
ちなみにあの落石は鉄血の移動ルートを算出して作成したれっきとしたトラップ…だったのだが、奴さん結構頑丈で想定の半分くらいしか潰せなかった。
「それより、IDWの状態は?」
「それなら問題無い。元通りには出来る…問題は」
「…GrG3の、榴弾かぁ…」
あれが今この基地に遺っている最後の一発だった。
俺の様に大した後ろ盾もなく、最前線の新規開拓地区の指揮官ではどうしても輸送ルートなんて確保出来ない。
その結果の、資材不足。
こんな寂れた地区を支援してくれる指揮官もおらず、そろそろ危機的状況に立たされていた。
「よくこんなんで三ヶ月保ったな…」
「それに関しては悔しいがお前の手腕だ。金がないならあの手この手でゲリラ戦仕掛けて削り殺すとか…お前味方で本当に良かったよ」
落石、落とし穴、地雷原に狙撃etc…。
最低限の資材をやり繰りし敵に損害を与えて行き漸減させてきた…が、
どうにもこの辺に鉄血の工場があったらしく、人形共の数は減らない。
「この前鉄血製スナイパーライフル拾ったんだけど…銃口3つ付いてたんだよね」
「あいつら未来に生きてんな…そいつどうしたんだよ」
「5発撃ったら弾切れ。めちゃくちゃ威力あったんだけど弾が補充出来なかったからバラしてパーツにした」
「俺に言えば裏に流して金にしたのに」
「それ、早く言ってくれよ…」
「「はぁ………」」
作戦司令室に二人の溜息が木霊した。
何だかんだ付き合いが長く、お互いに戦闘経験もあるのでよくこうして作戦会議をしている。
「なぁローニン、あんた後方幕僚だろ?人形とか用意出来ない?」
「無理だろうなぁ…なんせ委託する金がない」
「最前線の先の先、まだどの部隊も派遣されてないから救助してうちに配属って真似も出来ない」
「八方塞がりだな…」
「失礼します」
突如として女性の声が響く。
司令室に入ってきたのは、GrG3だった。
「どうした?まだ作戦の達しをしてないけど」
「お食事をお持ちしました。二人共、根を詰め過ぎては体に毒ですよ」
言われてから時計を見ると、とっくに深夜を廻っていた。
「…指摘されたからいきなり眠気来た」
「仮眠しとけジョージ。昨夜一晩中走ってたんだから休め」
「…すまね、ローニン」
「あ、指揮官…お食事は」
「頂こう。君がせっかく作ってくれたんだ」
ちなみに物はシナモンロールだった。
…一週間連続て。
これでもなんとかやり繰りしている方なのだ。
「GrG3。君も上がってくれ…お疲れ様」
「はい、お疲れ様でした」
「ローニン、お前も休んでくれ。倒れられたら困る」
「そうさせてもらう…ちっとも楽にならねぇな、ここ」
「全くだ…そろそろ本部に新しい人形寄越せって打診した方が良いかな…」
これが、S-12地区の実情だった。
金がない。
物もない。
弾もない。
ナイナイ尽くしのこの状況。
なんとか打破できないものだろうか…。
そんな訳で始まりました第二章。
やっぱり金欠から逃げられなかった上に支部巻き込んでのレベルに達してしまう。
相方のローニンと一緒に頭を悩ます日々を送る。