心臓はうるさい程鳴動し、嫌な汗が止まらない。
久しく感じていなかった不吉な予感に、ジョージは部屋を飛び出した。
「状況を送れ!」
『指揮官!おはようございます!すみません、鉄血共です』
「何故ここまで接近されている…!」
司令室のモニターに映し出される周辺地図に表される大量の赤い点。
…これら全て、鉄血製人形だとでも言うのか。
「ジョージ、どう言うことだこれ!?」
「ローニン、襲撃だ…!職員全員武装させて使える武器全部引っ張り出せ!防衛戦だ!」
「りょ、了解!だが圧倒的に数で負けてる!」
「今から荷物まとめて逃げるなんて間に合わねえ…だから、迎え撃つしかない…」
戦術人形がたったの五体しか居ないこちらに対して、向こうは1中隊レベルの人形達が迫っている。
戦力差1:9…明らかに負け試合だ。
「…本部に救援の打診は」
「先月から、音沙汰無しだ」
「…クソっ、見捨てられたのかよ」
ローニンが毒づいた。
クルーガーが俺を見捨てた…?
あそこまで俺に彼女を預けておいて。
まだ自分の利用価値はあった筈だ…。
「ローニン、確か地下に鉄血の鹵獲品まだ残ってたな」
「え?ああ…いくつかな」
「あれ、使うぞ。当然ロックは外してるよな」
「あんなどこ飛ぶか分かんねぇ兵器使うのかよ?!」
鉄血から鹵獲、回収した武装…買い手が付かなく死蔵するしか無かった物が地下倉庫に転がっていた。
「威力はある。先ずはカラビーナ筆頭の狙撃部隊で接近する敵を漸減する」
「了解、なるべく人間の兵士には狙撃銃を手配する」
「あとこの基地の正面ゲート以外全て閉鎖しろ!物理的にだ!バリケードも建てろ!」
ローニンに指示を出しながら無線で基地内に通信を飛ばす。
「カラビーナ!聞いてたな!先に屋上行ってろ!すぐ行く」
「ボス!準備できたぜ!」
「G17、お前は正面ゲートに!侵入する奴らに火力制圧!」
「わ、わかった!」
入り口を正面だけにし、入ってきた奴らから叩く…。
今出来るのは、それくらいだ…。
「9A-91とIDW、GrG3も正面に!」
「了解!」
人形達に支持を飛ばした後、ローニンが走って戻ってくる。
…抱えていた狙撃銃らしきものを投げて寄越した。
「あっぶねぇ!って何だよこれ狙撃銃か!?銃口2つ付いてんぞ?!」
「これしかねぇからな!行ってこい!」
「ったく!」
銃口が2つ開いている狙撃銃…ダブルテイクを抱えて屋上に登った。
…既にカラビーナと、数人の狙撃兵が待機していた。
「野郎ども!準備は出来たな!?」
「あら、指揮官さん?女性も居るのよ?」
「失礼、レディ。この場の任務は下の歩兵の為の露払いだ、仕損じるなよ!」
「「了解!」」
眼前に広がる鉄血の一個中隊。
こうして見ると大した量ではない…が、
「…おかしい。妙に動きが統率されている…?」
鉄血達が無造作に歩いているだけじゃない。
同じタイプが固まって行軍している。
まるで、用途別、事態対処の為に分けられているように。
「…ローニン、やべぇ、これ…ハイエンドだ」
『…嘘だろ』
部下に聴こえないように無線で呟く。
ここに来て、この前線にハイエンドモデルの存在がチラ付く。
『ご名答。良くわかったねぇ?』
『「!?」』
俺とローニンしか使用していない回線への割り込み。
この声、女の声…!
「まるで鈴の音が鳴るような素敵な声だ。レディ、お名前を伺っても?」
『馬鹿かジョージ!そんな場合じゃ…』
『ふふふっ、代理人が言っていた通り面白い人!』
代理人…あの時のいけ好かないメイド人形がフラッシュバックする。
『私にそんな事を言ったのは貴方が初めて。だから特別に教えてあげる。私は、【
鉄血ハイエンドモデル、夢想家襲来。
現状の戦力で対応する事は、不可能。
奴らの裏をかくには、どうすれば良い…!
と、言うわけでまさかの初手夢想家です。
割とこの子気に入ってるんですよね…。
ジョージを苦境に立たせ過ぎて風呂敷畳めないかもしれない…。