しかし、相手は鉄血ハイエンドモデル…。
一筋縄では行かない相手だが、そういう奴を打ち破るのはいつだって人間だ。
驕れる夢人に目覚めの一撃を見舞え。
「どうした!?どうしたグリフィン!!この程度ォ!?」
衝突してから5分。
俺達は
その理由は簡単だ。
奴の持つ、超射程のエネルギーライフルによる狙撃で全く第1部隊を寄せ付けないのだ。
「にゃああなんにゃアレ!反則にゃ!」
「喚くなIDW!きっとボスが何とかす…」
「出て来い!指揮官!!」
一時的に近くにあった岩陰に散会して身を潜めている。
正面から撃ち合うのは危険、しかし奴の周囲は障害物なんて無い開けた場所だ。
…この位置から狙撃戦を仕掛けるしかない。
「カラビーナ。狙撃戦になる…行けるか?」
「お任せを。指揮官さんの障害は全て排除するわ!」
「お前らは
「アレを前に逃げろってのかボス!」
「G17…指揮官を信じましょう」
「GrG3、3人を頼む。9A-91は俺の援護。すまないな、貧乏くじ引かせて」
「いいえ!指揮官の隣が私の居場所…どこまでも一緒です!」
「心強い…スモークを炊く。そっから掛かってくれ!」
「「「Copy that!!」」」
岩陰から2個スモークグレネードを転がし、それぞれが走り出す。
現在の戦場の状況は、基地の防壁から少し離れたエリアで、大小様々な岩石が転がっているエリアと、その先の草原が広がるエリアに分かれている。
そこの丘の上に陣取りエネルギーの弾丸を降らせている。
立地的にも火力的にも不利。
奴はこちらのどの部位にかすりでもすれば大ダメージ…対するこちらは奴の腕か頭に当てられなければ勝機は無い。
向こうもそれが分かっているのか、かなり強気だ…いや、
「…あいつ、かなり精神が不安定だ」
語気やトーンが点でばらばらだ。
薄ら寒いものを感じる…見てくれが良いから余計。
「幸い裏取りできる地形だから…カラビーナはこの位置から頼む。俺と9A-91は回り込む」
「了解、お気をつけて」
…ん?興奮剤の作用がまだ切れていない…?
というより、俺さっきまで肩撃ち抜かれて瀕死だった気がするんだが…。
だが、意識がはっきりしていて、体が動くなら問題ない。
フラットラインを握り締め、背中に担いだ『切り札』を確認する。
「指揮官、そんなもので何とかなると思いますか…?」
「何とか、する。勝機はそこしかない」
慎重に、息を殺して移動する。
あいつはカラビーナに気をとられて気が付いていないはず…!
カラビーナからの発砲音が、消えた。
「…カラビーナ?」
「みぃつけたぁ♪」
「指揮官ッ!!?」
「な、あっ!?」
まだ彼我の距離は100m近くあったはず…!?
何故、目の前に現れ
「このっ…!」
9A-91が肉薄し、発砲する。
…が、それより前に
9A-91の肩を踏み台にしこちらに飛び込んできた。
「チェック、メイトォォォォォ!!」
狩られる…!
…そう、普通ならば。
だが、今の俺はドーピングにより感覚が研ぎ澄まされ、常人ではなくなっている。
「この瞬間を…待っていたんだッ…!!」
「キヒッ!?」
背中に担いでいた砲身を脇を通して素早く突き出す。
…銀色に煌く杭が
「アハハハハ!!この程度…!」
「食らいやがれッ…!!」
…トリガーを引く。
ずどん、と重い音を発てて銀色の杭が射出された。
パイルバンカー。
この時代に有効価値が見出されず失敗作として押し付けられた代物第一号だ。
…抱えていたエネルギーライフルも弾かれて飛んでいく。
「はぁ…はぁ…9A-91!無事か!」
「はい、指揮か…!」
「指揮かぁぁぁぁん!!まだ、まだ終わってないわ!!」
「ぐ、ぁ…!?」
片腕を失った
「この、野郎ッ!!」
「ぎひぃッ!?」
膝を腹にめり込ませ、拘束が緩んだ所に…フラットラインを胸部に1マガジン叩き込んだ。
「あ、が…」
どさり、と覆いかぶさる様に
「…あー、クソ、いってぇ…」
「指揮官!指揮官、大丈夫ですか!?」
「わりぃ…ちょっと、動けねぇ…カラビーナが探してるだろうから、呼んできてくれ…」
「はい!」
パタパタと9A-91が離れていった。
…すると、俺の上に覆いかぶさっていた
「こ」
「楽しかったわ…次逢うときを楽しみにしてるからね、ジョージ?」
「は」
バチッ!
…情報漏えい防止の為に電脳を焼ききったのだろう。
…それと同時に、ピッ、ピッ、と
「ちょ、おま、嘘だろ!?誰、誰かッ!!9A-91!カラビーナ!!」
名前を呼んでも誰も返事をしない。
無線も先ほどの取っ組み合いで壊れた。
(あ、これ死んだな…)
「ジョージさん!ジョージさん!?どこですか!?」
「!!トカレフッ!ここだ!
「…!!!はいっ!私が、私が助けます!!」
岩陰から5人のトカレフが姿を現した。
…真ん中の一人が、大粒の涙を流しながら走っている。
「この…鉄血の屑め!!」
十分な加速が乗った蹴りが、俺の上に倒れていた
…5、6mほど飛んで行き、ボディが爆発した。
トカレフ達が俺に覆いかぶさり、爆風から庇う。
「っ…うぅ…トカレフ…無事か?」
「はい…!はい、大丈夫です…!ジョージさん…私…間に合いましたか…?今度は、助けられましたか…?」
「ああ…ありがとう…君は…命の恩人で…俺の、天使だ…」
やばい、瞼が重くなってきた。
興奮剤の効果が切れたらしい。
体の自由も利かなくなって来た。
「ジョージさん!?ジョージさん!駄目です、寝ないで!起きて!!お願い!!ジョージさん!!」
おぼろげながらいくつもの足音も聞こえる。
おそらく回収部隊だろう。
俺の顔の上でボロボロ涙を流す白い少女に抱かれて、俺は意識を手放した。
VSドリーマー、完。
まさか興奮剤2本目行くとは…。
ちなみにパイルバンカーは通称で正式名称『リアルインパクト』です。
…負傷して意識不明の重態ってまたかこいつ。