奇跡的に大した後遺症も無く、事後処理に追われるS-12地区の面々達。
普段通りの生活がまた始まるが…ジョージだけ、ある悩みに苛まれていた。
冒頭の内容がちょっとショッキングかもしれません。
…やめろ、止せ!
俺の静止も虚しく、奴の右手は無慈悲にも振り下ろされ、
「ぎっ…!?」
「痛いか?痛いよなぁ?でもまだ終わらない」
何が楽しいのか、そいつはずっと笑っている。
今、俺は全身を椅子の様な器具に拘束されている。
首すら動かせず強制的に前を向かされている。
「次はどうしてやろうか。なぁ、何がいい?」
「----!--!--!」
声が出ない。
「じゃあ次は…こうしてあげましょう」
「--ッ!?」
奴がそっと爪を剥がした俺の指を…一本一本ゆっくりと折り始めた。
「あぁあぁぁあぁぁっ!!?!?」
自分の悲鳴が耳障りでしょうがない。
声は出ないのに悲鳴だけはいっちょ前に出やがる。
「ふ、ふふ…良いですよ、良いわぁ、良い!でもこんなんじゃ終わらせない…終わらせるもんですか」
うっとりとした表情で俺の右肩を撫でる。
いつの間にか、手にはノコギリが握られていて…。
「右腕、ちょうだい…!」
奴…ドリーマーの狂気的な笑顔が光った。
――――――――――――――――――
「うわあああああああああああああ!!?!?」
目が覚めた。
窓の外はまだ暗い。
…横になっていたベッドは、また寝汗でびっしょりだった。
「ハァ…ハァ…
あれから、3日。
興奮剤の副作用が何故か1日で終わり、目が覚めてみれば戦術人形達の号泣で出迎えられ基地のスタッフ達に叩かれまくった。
中でも…トカレフと、カラビーナが凄まじく泣きながらお説教された。
まぁ、あんな事を基地指揮官がやるなんて正気の沙汰では無かっただろうし。
それで、事後処理としてはまず周辺の残骸の回収作業と、基地の復旧作業が始まった。
ネゲヴ小隊が持ってきた資材は潤沢で、ここ3か月ひっ迫していた基地の財政をなんとか立て直してくれた。
その中にいくらかの嗜好品が入っていたため、スタッフや戦術人形達のご機嫌取りも何とか行えたのは行幸だった。
順調に、元の姿に戻りつつあった…俺以外は。
「くそ、水…」
ベッド横の水差しを手に取るが、中身は空。
仕方ないので冷蔵庫を開けてペットボトルを取り出し、一気に呷った。
…目が覚めてから二日、俺はずっと
たった一度の遭遇でそうなるかと言われれば、極度の緊張と肩へのダメージが重なったのかもしれないと軍医には言われた。
無意識に包帯の巻かれた首をなぞる。
かなり浅めに肉を食いちぎられたようで、簡易的な処置に留まっていた。
「全く…寝かせてもくれないのか…」
『ジョージさん…?大丈夫ですか…?』
自室のドアの向こうから声がかけられた。
…この基地で俺を『ジョージ』と呼ぶのはローニンと、彼女しかいない。
「…おいで、トカレフ」
「失礼します…ジョージさん、また…ですか」
「ああ…」
「…大丈夫、ですか?」
「ただの夢だ。大したことない」
「でも、寝汗が…風邪ひいちゃいますよ」
「そうだな…トカレフ、着替えるから…」
「お、お手伝いしましゅ!」
噛んだ。
それが分かっているのか、トカレフも真っ赤になる。
…まぁ原因がそれだけじゃないが。
「…背中、拭いてもらおうかな」
「ひゃ、ひゃい…」
ただ、俺としては誰かと話して気を紛らわせたかった。
上着を脱いで、背中をトカレフの方に向けた。
…そっとタオルが当てられた感触がする。
「…傷だらけですね」
「ん?あー、若いころの逃げ傷だよ」
「若いころって…ジョージさんはまだ20代じゃないですか」
「人間20超えたら時がたつのが早いのさ…」
「大変ですね、人間って」
「ああ…生きてるのは、大変だ」
それから、無言。
結局、背中を拭き終わるまで何も話さなかった。
…トカレフが後ろを向いている間に、全身の発汗の処置を済ませ着替える。
「それじゃあ、おやすみ…トカレフ。ごめんな、起こして」
「いえ…これくらい」
またベッドに横になると、トカレフが手を握ってきた。
「トカレフ?」
「大丈夫ですよ…大丈夫。私が、ここに居ますから」
「…ああ。心強い」
「安心して眠ってください…ジョージさん」
手に温かい感触を感じながら…また、微睡に沈んでいった。
この時期にインフルエンザに罹りました()
自分でもびっくりですわ。
薬でちょっと楽になり、寝れなくたったので暇つぶしに投稿しました。
皆さんも体調管理には気を付けてくださいね…連休も控えてますし。
さて、ジョージの方はというとまさかのドリーマーがトラウマ化。
夢だと分かっていてもどうにもできない状況が続いています。
…ヒロインがいれば見ないらしいが…このSSのヒロインって?