…と、言うより基地の立て直しがメインなのでどうしても手の止まる箇所が生じている。
そのせいで割と仕事が無かったり。
「さて、カラビーナ。俺の時間を二時間やる。夕方からトカレフの歓迎会だから、それまでな」
昼の後段。
約束通り業務をすべて終らせ、執務室でカラビーナと向き合っていた。
「そう、ですね…じゃあ」
カラビーナが目の前にやって来て、徐ろに帽子を外した。
…なんと言うか、拍子抜けするお願いだった様だ。
「…もっと他に無かったのか?」
「それじゃあ、うんと褒めてください。指揮官さん?」
「…仰せのままに。ありがとう、カラビーナ」
俺より頭一つ以上低い位置にあるカラビーナの頭をひたすら撫でてやる。
…髪の手触りが気持ちいい。
「いつも助かってる」
「そうでしょうそうでしょう」
「この前の狙撃もよくやってくれたな。皆褒めてた」
「ふふん」
「君の射撃はまるで芸術の様に精密だ」
「…指揮官さん?」
「真剣に打ち込む君の姿に、瞳に、指先に、全てに魅力がある」
「えっ、あの」
「君の所作に釘付けだ、カラビーナ」
「ひ、ひぇ…」
「どうしたんだカラビーナ?赤くなって。君の肌は白いから、朱が交じるとそれもまたアクセントだ」
「あわわわ…きゅう」
「え、ちょっと、カラビーナ?お前最近排熱機能駄目になってないか!?おい!」
…蒸気を出しながら固まってしまった。
最近カラビーナによくある症状で、そろそろ整備部に上げておいた方がいいかも知れないな…。
来客用ソファに横にして、その頭の近くに座る。
…こうしてみると、本当にただの女の子だよな。
「失礼します…あら、お邪魔でしたか?」
「GrG3。カラビーナが目を回してしまってね」
「ふふ、指揮官はまたカラビーナさんをからかったんですね」
「からかうとは人聞きの悪い。褒めてくれっておねだりされたからね」
「…どんな褒め方したんですか一体」
GrG3が呆れながら珈琲を淹れてくれた。
それをソファに座ったまま受け取る。
…いつの間にか膝の上にカラビーナの頭があるものだから動けなくなった。
「こいつ起きて…いや、寝てる…?無意識…?こわ…」
「ふふ、指揮官も本当に慕われてますね」
「これは、どうなんだろうな」
GrG3に目配せして対面に座らせた。
測らずとも休憩の様な雰囲気になる。
「私達がここに来てから、とても大変でしたね」
「…そうだな。三ヶ月間ひっきりなしに戦闘して」
「レベルも一桁でハイエンドにかち合うとも思っていませんでした」
「よく持ち堪えてくれた、ホントに…お前らはうちの自慢の子たちだよ」
「褒め過ぎですよ指揮官…私なんて取り柄もないですし」
「そんな事はないよ。君にしかできない事、今この基地で榴弾を扱えるのは君だけだ。君が居なかったら集団に勝つのは難しかった」
「指揮官…」
「…君はちょっと自己評価が低い。もっと胸張って良い」
「そう、ですか…?」
「そう。その方が良いいででででで」
カラビーナが目を瞑ったまま俺の太ももをつねりあげていた。
「寝ている女の子の上で他の女といちゃつくなんて…!」
「痛いって!悪かった悪かった…ははは」
「ふふふ…」
「何ですかGrG3さんも笑って…!」
「ブレないなお前ほんとに…」
なんと言うか、久し振りに穏やかに時間が過ぎていった気がする。
平穏って良いなぁ…。
そのまま、カラビーナとGrG3と談笑して午後は過ぎて行った。
日常編第二話、完。
びっくりするほど穏やかに過ぎていく時間。
あと一話で日常編は一旦終わり、次の再会へと話を動かします。