【完結】借金から始まる前線生活   作:塊ロック

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本部へ招集されたジョージ。
新人指揮官がドリーマーと戦闘し生き残ったと言う眉唾に対して、委員会から投げられた言葉はあることない事の嵐。

やっと解放され、与えられた部屋でひと息ついていた。



再会は微睡みの向こうへ

…なんと言うか、疲れた。

 

朝、日も登らない内に叩き起こされ覆面の人形達に拉致されたかと思えば本部まで連れてこられていた。

 

「…あ、そうだ社内報」

 

ローニンに頼まれていた社内報の存在を思い出す。

重い腰を上げて本社の儒品部へ向かった。

 

「…あ!おい、ジョージ!」

「…ん?あ、ベネット!お前、死んだはずじゃ」

「残念だったな。トリック…って死んでねぇよ」

「久し振りだなジョージ。金返せ」

 

名前を呼ばれ振り返ると、いつぞやの合コンコンビ…ベネットとキャンベルが立っていた。

 

「キャンベルまで。久し振りだな。お前らも呼ばれてたのか?」

「ああ。そっちも大変みたいだな…あ、俺S-11地区でお前の隣だからなんかあったらよろしくな。あと金返せよ」

「俺はD地区に左遷されちまった」

「何やったんだよベネット…。わりぃキャンベル。出世払いで」

「指揮官からどこに出世すんだよ! 」

 

暫く同期同士の他愛の無い会話が続いた。

ふと、懐しい序に気になっていた事を聞く。

 

「あ、なぁ二人共。相棒…WA2000を知らないか?」

 

…名前を出した瞬間、二人の表情が凍りついた。

 

「ジョージ、お前…聞いてないのか?」

 

恐る恐ると言った様子で、ベネットが聞いてきた。

キャンベルも少し、顔色が悪い。

 

「お、おいどうしたんだよ二人共…気味が悪いな」

「ああ、ジョージ。これを俺達に言わせるのは…ちと荷が重い」

「…待てよ、待ってくれ。この話は…マジなのか?」

「…ああ」

 

…相棒に、何かあった?

本社に来て合わなかったのは、そういう事なのか?

 

「…いや、ベネット…話そう。ここまで言ってしまったんだ」

「…分かった。良いかジョージ、気を確かに持って聞いてくれ」

 

ベネットが一拍、置く。

 

「WA2000は、任務から帰還中…鉄血のハイエンドモデルに襲撃され…行方不明…MIAだ」

 

俺は、その言葉を上手く飲み込めなかった。

   

「………うそ、だろ」

 

だから、出てきた言葉も…とても安っぽい物で。

そんな安っぽい保身を、現実は粉々に砕いてくれた。

 

「現に、戻って来ていない。回収された戦術人形の残骸が、一体分足りなかったんだ」

「各基地に警告が周ってきたんだが…まさか、ジョージの所にはいってなかったなんて」

「なぁ、ジョージ?相棒とは言え…その、人形だ。そのうち残骸も発見されて再生される…だから、あーっと…そんな重く捉えるな、な?」

「ベネット!言い方があるだろう」

「いや、んな事言われてもよ…」

「そう、か…二人共、ありがとう…また、一杯やろう」

「お、おい…ジョージ!」

 

二人の静止を聞かず、ふらふらと歩き出していた。

 

WA2000が、MIA。

このご時世行方不明になれば自力で生還する他生き残る道は無い。

 

そして、換えが聞く戦術人形に対して捜索が行われるケースは皆無だ。

…彼女は、IOPのハイエンドモデルでは無いのだから。

 

「は、はは…そっか、逝っちまったか…相棒…」

 

力なく笑ってしまった。

生死を共にした無二の相棒の喪失。

こんな仕事してれば嫌でも味わう感覚に、今のうちに慣れて置かねばならない。

 

「あれ、喫茶店が…」

 

気付けば馴染みのスプリングフィールドのカフェの前にまで来ていた。

…かつての賑わいも無く、閉鎖されている。

彼女も、何処かへ配属されたのだろうか。

 

「あらジョージさん」

「…カリーナか。久し振り」

「お久しぶりですねジョージさん。ツケの支払いは受付しておりましてよ?」

「…ツケにした覚えは無いんだが」

 

そんな様子をボンヤリ眺めていたら、近くをカリーナが通り掛かったのだった。

 

「またまたぁ。先日のハイエンド襲撃の時の輸送費、まだ払ってもらってませんよ?」

「…は?輸送費?」

「それとネゲヴ小隊の出動費ですね!占めてこの額です」

「…は?あのヒゲおやじ何してくれてんの?」

 

電卓を叩かれて見せられた数字に思わず悪態をついた。

 

「お支払いはいつになさいますか?」

「えっ…あー、その、何で経費になってねぇの…?」

 

基地…と言うか、()()()()()()()()()()()()()()なのだから会社から金が出るものでは無いのだろうか。

 

「ご存知ありませんでしたか?本部からの救援は基本的に指揮官のお給料から天引き何ですよ」

「えっ、初耳」

「ジョージさんはその天引きで贖える額を超えてしまったので別途振込が必要だったんです」

「えー…」

「と、言う訳でぇ…お買い物はいかが?」

 

とても良い営業スマイルが飛んできた。

いや買うものなんてねぇよ…と、思いながら、

 

「あ、そうだ。スプリングフィールド知らないか?」

「スプリングフィールドさんですか?…あー、お店閉めちゃってますもんね。スプリングフィールドさんは長めの有給を取られて」

「有給」

「今は何処かの片田舎のに行かれて修行中だそうですよ」

「修行」

「はい。スプリングフィールドさんの状況を鑑みていい刺激になるかもしれないと上も判断しまして」

「…人形、有給使えたんだ」

 

俺にはそんな代物ないけど。

 

「あ…その、ジョージさん…WA2000さんの事は…」

「…聞いたよ。大丈夫だ。少しかかるかも知れないけど、割り切るさ」

 

もうこの基地の人間は皆知ってることなんだろうな。

カリーナに気まずそうな顔で見られた辺り、相当表情に出てたのだろう。

 

「じゃあな。金は…あー、うん、また払う」

 

…参ったなぁ。

ここの所、何かに憑かれてるかのように立て続けに事が起きている。

 

「…生きてくのは、難しいな」

 

ため息が夜空に消えていった。

…今夜は、恐らく悪夢だろうと独りごちながら。

 

 




平成最後の更新で、少し物語が動きます。

WA2000のMIAの報告を受け、ジョージは。

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