戦術人形部隊とライフルマン部隊は連携して戦力を漸減せよ。
戦闘開始から15分が経過した。
鉄血人形達の掃討は7割程済んでいた。
「GrG3、カラビーナ。状況は」
『第一部隊GrG3より。こちらは健在です。弾薬は五割ほど消費しました』
『第二部隊Kar98kより。こちらも健在、弾薬は三割ほどの消耗ですわ』
「了解。ライフルマンは一旦下がってくれ。パイロット、回収準備を」
作戦司令室にて、俺は前線に指示を出していた。
…え?俺は前線に出なくていいのかって?
毎回は流石に出ないよ…。
「ローニン、第二派の準備は」
『準備完了。いつでも行けるぜワークマンもスタンバってる』
「了解。ではこれより第二派を伴い工廠の制圧し、破壊工作を行う」
ここまでは順調。
特に問題も無く進んでいる。
やはり、ハイエンドを狩れたのが大きいのだろう。
敵の動きも統率がなく単調。
これなら楽に済む。
(こいつの出番も無かったかな)
すぐ横に置かれたゴツい対物ライフル的な代物、クレーバーに目を向ける。
あれから何度か試し撃ちしたが、とにかく弾速が遅い。
また携行弾数も多くなくまさに短期決戦用と言ったもの。
サブアームはRE-45オートと呼ばれるフルオートハンドガン。
発射レートも高く安定して使える為愛用している。
難点はレート故の弾持ちの悪さ。
好きなんだけど懐事情に考慮しなきゃいけないジレンマに泣ける1丁だ。
こんなもの持ち出した理由…ハイエンドモデルも今回は出て来ない。
興奮剤も用意はしてあるし、割と今回万全の体制で待ち構えていたのに。
(ま、出ないなら出ないに越した事は無いんだが…)
『す、スカウトチームより緊急連絡!ハイエンドです!鉄血ハイエンドモデルを確認!!タイプは…ドリーマー!!』
「ハァ!?ドリーマーだと!?すぐ映像と周辺戦力を回せ!」
コンソールを操作し、スカウトチームのカメラを表示する。
…長い黒髪を揺らす巨大なライフルを持った少女が佇んでいた。
何故?前破壊したはず!
…無意識に足が震え、額から流れる汗が増えた。
コンソールを操作する手が震える。
「くそ、落ち着け…落ち着けよジョージ…何のからくりかは知らないが、戻ってきたならまた地獄に叩き戻してやる…!」
とにかく、部隊に通達しなくては…?!
通信回線が開かない…!?
「拙い、拙い拙い!ハッキングだと!?嘘だろ?!」
ザーッ、と何かを傍受した。
…これは、まさか。
『久し振り、ジョージ』
「…淑女ってのはもう少し身持ちが固いほうが気安いより好感もてるね」
『ご挨拶ねぇ指揮官?貴方に会いたくて戻ってきちゃった』
「俺は二度と会いたくなかったね」
『あらぁ?声が震えてるわね?女の子と喋るのは緊張する?』
「俺はお前の事を女の子としては見てない」
『嘘!最初のあの情熱的な口説きは遊びだったの?』
…何だこいつ。
以前遭遇した時と明らかに対応が違う。
何だ、こちらを試すような真似をして。
何が目的だ?
「何が目的だ」
『目的?暇・つ・ぶ・し』
「脳味噌までカビたか」
『アッハハハ!また同じ台詞ね!良いわ!教えてあげる!これ、なーんだ?』
モニターがハックされ、映像が映し出された。
…その映像に、目を見開いた。
『アハハハハ!!!思った通りの反応だ!やっぱりコイツがお気に入り何だな!気まぐれで良いもん拾った!』
両足は原型を留めない程に潰され、手の指は全てあらぬ方向を向き、腹にいくつもの風穴が空いている。
顔にはいくつもの痣があり、瞼は閉じられている。
無意識に拳を握る。
体の震えは消えた。
しかし、しかし。
「…す」
『ハハハハ…は?』
「殺す、ブッ殺す!!テメェだけは!!」
『い、ひ、ひひははははは!!!良いよ!良いぞ!良いッ!その顔…その顔が見たかった!!貴方の憎悪に染まるその顔が!!たかだかお人形さんに本気になる貴方の哀れな姿が!!』
怒りが、恐怖を上回る。
コイツは、コイツだけは絶対に破壊する。
『さぁ指揮官!時間をあげましょう!部隊を準備する時間を!私を、殺しにいらっしゃい!あの不出来なオブジェの隣に飾ってあげる!!』
「…回線が復旧したか。全部隊に通達!目標ドリーマー、何としても破壊しろ!!」
施設部門に指示を出し、臨時作戦室と俺の装備一式の準備をさせる。
…置いてあったクレーバーを手に取る。
「必ず行く。待ってろ相棒」
襲撃、ドリーマー再び。
トラウマは怒りに塗り潰された。
ドリーマーの挑発にまんまと乗ってしまうジョージ。
相棒と部隊、2つを天秤に掛けなければならない。
だがしかし、ジョージは揺らがない。
天秤の支柱は、折れないのだから。