【完結】借金から始まる前線生活   作:塊ロック

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ジョージ指揮官見習いの研修は続く。

グリフィンの本部と言うことは、別動の部隊も多く出入りする…つまり、今度は再会だ。


第二の刺客

 

「おはようございます、指揮官♡」

「う、おわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?!」

 

自分の顔超至近距離で挨拶するM4に起こされて起床する。

おかしい、昨夜しっかり鍵を締めたのに…。

 

「ちょ、降りろ!やめ、腕を抑え…」

「今日もいい天気ですよ指揮官。()()為に指揮官の道を進んでいる事も知ってます」

「離せ!」

「でも…昨日は遅くまで喫茶店に居ましたね…あの、ライフルと楽しそうに喋って」

「違う!スプリングフィールドとはたまたま昔一緒に戦ったことがあった縁が」

「指揮官…?」

「ヒェッ」

「確か今日は非番の日ですよね…ふふふ、今日は離しませんよ…?」

 

いつぞや対面した時と同じ様に瞳にハートマークが乱舞していらっしゃる。

M4の格好もまずい。

まず、少しサイズの大きいYシャツ以外何も来ていない。

…意外と着痩せするのかな、結構存在感のある二つの…ゲフンゲフン。

 

それはそうとやばい、食われる。

 

「指揮官…」

「M4、やめてくれ」

 

この子は、本当に俺の事を好いている訳じゃない。

電脳の異常からそう認識してしまっているだけだ。

 

こんなふうにして貰う謂れは無い。

 

 

「頼む…俺はまだ君の言う指揮官じゃないんだ」

「…」

「M4?俺達はまだ会ったばかりだ。お互いに知り合う所から始めよう、な?」

「…わかり、ました」

「ありがとう。素直な子は好きだよ」

「へ、ひ、ひゃい…」

 

おずおずと俺の上からM4が退いていく。

良かった、命拾いしたらしい。

 

「さ、M4。朝食に行こう」

「はい…その、着替えてから行きますね…」

 

そそくさと俺に与えられた宿舎の部屋からM4は出ていった。

 

「…やっぱりアレ俺のYシャツじゃねーか!!」

 

グリフィンに入ってやっと迎えた休日の始まりだった。

 

 

 

 

 

 

 

食堂。

朝のこの時間の食堂は割と混沌としている。

 

これから出撃する人形達が寸暇を惜しんで飯を掻き込んだり、非戦闘勤務員達が野次飛ばしてたりする。

そんな中、俺は隅の空席の多いところに座った。

向かいに当然の様にM4が座った。

 

「いただきます…んー、この飯が実質タダ…こんなに嬉しいことはない」

「…?指揮官は、今まで食事されていなかったのですか?」

「いや、ただ…傭兵の時はなるべく出費抑えたくて結構抜いてた」

 

削れる出費はとにかく削る。

正規軍でもPMCでもないから戦闘終了後に出来る限り敵拠点の物色とかもしていた。

 

「指揮官は、私達と違って食べないと」

「分かってるよ。少なくともここにいる間は食うさ」

 

戦術人形も生体パーツの維持のために栄養摂取が必要らしい。

人形と人間の境界線も随分と曖昧なもんだ。

 

「ごちそうさま。M4も今療養中なんだろ?たまには姉妹に会いに行ったらどうだ」

「え…そんな、指揮官…私を置いて行くんですか?」

 

M4の表情が絶望一色に染まっていく。

感情表現が豊かな子だな。

 

「違う違う。俺みたいな半端者に引っ付いてなくていいって事だよ」

「そんな事…」

「とにかく、そういう事だ。それじゃあな」

 

ちょっと強引だったけど、こうでも言わないとずっと引っ付いて来そうだ。

 

「………………………指揮官、夜を楽しみにしてますからね」

 

あーあー聞こえない俺はなんも聞いてないぞ!!

 

 

 

 

 

 

 

「ジョージ」

「ん?誰だ?」

 

廊下を歩いていると、名前を呼ばれた。

この基地で俺の名前を知っている奴なんてそう多くない。

 

振り向くと、透き通る白く長い髪をした少女が立っていた。

瞳はエメラルドの様に色鮮やかで、涙の様なタトゥーがその下に描かれていた。

 

「HK416か!久しぶりだな!まだくたばってなかったか」

「貴方こそ、グリフィンの制服なんて着てどうしたのよ」

 

HK416…404小隊と言う指揮官不在の人形小隊のメンバーだ。

傭兵時代によく共闘した覚えがある。

 

…少し頭に血が登りやすいのが難点だが、基本的に頭の回転も早く容赦が無い。

 

「俺か?つい最近グリフィンに入社してね」

「それ、本当なの?」

「ああ、本当だ。なんなら指揮官になる為に今研修中」

「!!!!」

 

驚いたように目を丸くした。

え?そこそんなに驚く?

 

「へぇ…ふふふ、それじゃいつかあなたの事を指揮官って呼ぶ日が来るかもね」

「そんときゃよろしくな。お前たちなら信頼出来る」

「えぇ、私は完璧よ…上手くやってみせるわ」

「そいつは頼もしい。M4とも上手くやってくれ」

「………………は?」

 

ビッシィ!!

 

何かが割れる音がした。

あれ、俺地雷踏んだ?

 

「M4ぉ?何故そんな名前が、今出るのかしら…?」

「え、あぁいや、俺が基地担当するようになったらアイツが配属されるらしくてさ。そんときゃよろしくって…」

「ジョージ」

 

いつの間にか壁際に追い詰められていた。

そのまま416が両手を壁に付いた。

 

丁度416と壁に挟まれる形になる…壁ダァン…。

もっとも、こいつの山は壁とは無縁な豊かさだが…。

 

「ジョージ、私は完璧よ…!あんな奴より!」

「ちょっと、416さん?」

「私が居れば充分ですよ…ねぇ?そう思わない?」

 

駄目だ、完全に聞こえてない。

こいつの前でM4の話は禁止だこれから…。

 

「いつか奴らに…!」

「わかった!分かったから、な?落ち着け」

「…ごめんなさい。熱くなりすぎたみたい」

「誰しもそういう所はあるさ…気にすんな」

「ほんと、ジョージは優しいわね」

「金以外なら相談に乗るぞ」

「…変らないわね、守銭奴なところ」

 

呆れたようなジト目で見られた。

このやり取りも懐かしい。

 

「404はしばらく本部にいるから、45たちにも顔合わせなさいよね」

「お、やっぱりあいつ等もいるのか。懐かしいなぁ」

「最後に会った時から結構経ってたもの。皆会いたがってるわ」

「416は?」

「私も…って何言わせるのよ!」

「ははは、相変わらずだな」

「全く…それじゃあね。研修、頑張って」

「おう、ありがとう。またな」

 

いやー、久々に会えて良かったね。

再会出来るってのはお互い無事じゃないと出来無いことだ。

 

それは喜ばしい。

 

「さて、ライブラリでも閲覧しにい………ヒェッ」

 

振り向いた通路の奥、曲がり角から何かがこちらを見ている。

 

…その瞳は、光が灯っていなかった。

 

「お、俺は何も見なかった…ああ、そうだとも」

 

逃げるようにしてその場から走り去った。

 

 




と言うわけで404小隊が到着。

しばらくは研修編なので色んな人形出したいなーとは考えてます。

次回「ジョージ!数合わせだ!合コン行くぞ!」

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