囚われの身のWA2000も発見する…が。
『こちらスカウト!戦線より離脱!』
「損害は!?」
『軽微です。補給に戻り援護に回ります』
「了解!」
工廠に潜入する。
中で戦闘が起こっており、銃撃音が聞こえる。
(屋内戦に発展しちまったか…しかしまさかドリーマーの奴がダミーを使ってくるとは)
グリフィンの戦術人形はダミーリンクシステムの確立により最大4体まで思考を反映させられるダミーを随伴させられる。
鉄血は量産品の人形の大量生産という形をとっていたため、ダミーの可能性を思考から排除していた。
『こちら第二部隊!屋内の第一部隊を援護します!』
「任せた。第一部隊、状況」
『こちら第一部隊!ドリーマーと交戦中…!屋内戦の為相手の射撃が通らないのが幸いしています!』
「そのまま遮蔽物を使い威嚇を続けろ!」
道中に雑魚は居ない。
段々と射撃音が近くなる。
…戦闘を行っているエリアは2階層分の吹き抜けのある広い部屋だ。
機材やら荷物やらで囲まれ、中心にぽっかりと空白地帯がある。
2階に上がり、窓から外に出て屋根伝いに目的の部屋の窓に到達する。
見下ろすと、中心の空白エリアに向けて、機材の陰からGrG3達が射撃を行っていた。
…中心地にドリーマーと、墓標の様に建てられた鉄骨の束。
よく見ると、そこにWA2000が吊るされていた。
今すぐ駆け出したい欲を抑え込み、様子をうかがう。
反対側にKar98kの率いる第二部隊が到着したのもこのタイミングだ。
『目標を発見!攻撃開始します!』
…あ、トカレフがこっちを見た。
目を見開いて驚いている…口に人差し指を立ててジェスチャーを送る。
不承不承と言った不機嫌極まりない顔で頷いた。
トカレフとG17がドリーマーの背後から奇襲を掛ける。
決まった、そう思ってしまったのだが…。
『!?』
『うおわぁ!?』
トカレフとG17の居たエリアへドリーマーが銃口だけ向けて発砲。
当たりこそしなかったが牽制としては充分だった。
(奇襲がバレてる…タイミングとしては完璧だった…いや、一度屋上でダミーに見られていたから警戒していた?)
決定打が与えられなかった今、弾を消費するだけの泥沼が生起してしまう。
拙いな…ここで俺も仕掛けるべきか?
クレーバーの威力は先ほど証明済である。
『第二部隊…奇襲失敗!射撃戦を開始します!』
「了解…奴の封じ込めは成功している。なるべく正面からの打ち合いは避けて削れ」
『了解!』
「トカレフ、G17。奇襲は悪くなかった。経験を持ち帰る為にここでロストは許さないからな」
『『は、はい!』』
「IDW、前に出すぎだ。向こうの攻撃、直撃はそのまま戦闘不能だ。なるべく避けるんじゃなくて遮蔽物で防げ」
『りょ、了解にゃ!』
「9A-91、GrG3。隙を見て突撃を掛ける。タイミングは支持する」
『了解!』
『指揮官、ちゃんと見てますね…あれ?』
『…指揮官、まさか…居るんですか!?』
あ、しまった。
トカレフの方を見ると、物凄い呆れ顔でこっちを見ていた。
仕方ない…。
「今上に居る。あんま見るなよ、バレるから。俺が狙撃して隙を作る。そこから集中砲火だ」
『了解』
クレーバーを構え、ドリーマーに狙いを付ける。
…積極的な動きを見せていない今がチャンスか…。
しかし、些かやる気がないというか、心底つまらなさそうにしている。
(好都合だが、な!)
トリガーを引く。
必殺の弾丸が頭部に吸い込まれ…。
「えっ」
ぐるん、と顔と腕をこちらに向け…ライフルを発砲。
「嘘ッ…?!」
「見つけたァ!!!」
「んなぁッ!?」
ドリーマーの表情が狂気に染まり、跳躍。
「シャァ!!」
「げ、ふっ…!?」
離脱を試みるも、すぐさま首を掴まれてそのまま後方…第二部隊の方へ放り投げられた。
気持ちの悪い浮遊感。
「や、べ…!?」
「ジョージさん!!」
「ごふっ…!?」
地面に衝突する前に、トカレフが飛び込んできて一緒に転がってしまった。
衝撃が殺された為大けがは無かった。
「ごほっ、お怪我は!?」
「す、すまん…助かった…」
「早く!」
トカレフのダミーに引っ張られて立ち上がる。
ドリーマーはこちらを見下ろし、嗤っている。
「やっぱり来てくれたのねジョージィ…?」
「…相棒は返してもらう」
「ふーん、聞いてる?相棒さん?」
急いで振り返る。
…鉄骨に吊るされたWA2000が、こちらを見ていた。
「
「
…俺は、躊躇わずにクレーバーをWA2000に向けた。
「ジョージさん!?WA2000さんですよ!?何してるんですか!?」
「こいつは、相棒じゃない…!」
「な、何を言ってるのジョージ…」
「…なぁ、相棒。別れる前に、俺の事なんて言ったか覚えてるか?」
「当り前じゃない!私の、大事な人だって」
引き金を引いた。
Kar98kが悲鳴を上げる。
WA2000だったものが弾け飛び…
「ふふ、はは…アッハハハハハ!!凄いわ、凄いわジョージ!!何で分かったの?何で
「答える義理なんざねぇ…降りてこい、ぶっ壊してやる…!!」
「指揮官さん!お、落ち着いてください…!」
懐から興奮剤を取り出す。
それを見たKar98kが血相を変えて腕をつかんだ。
「だめです、絶対にそれは駄目です…!」
「離せ」
「よっと」
ドリーマーが降りてくる。
その顔は嗜虐心に満ち溢れている。
「ふふへへ…良い顔してる。安心しな…大事な大事なお人形は別の場所に居る」
「言いたいことはそれだけか?」
「そうね…後は」
「「殺しあうだけだ!!」」
Kar98kを突き飛ばしてドリーマーの射線から退避させる。
そして、自分の右腕に興奮剤の針を刺した。
「ッ…!うおおおお!!」
視界が一瞬赤くなり、元に戻る。
いつもの感覚。
一時的に超人になる為に命を削っている感覚。
すぐにクレーバーのトリガーを引く。
…弾速が遅い為、すぐに避けられる。
第一、第二部隊も射撃を開始する。
「ここで仕留める!」
「まだ終わらせない!」
決戦、ドリーマー再び。
こいつとの因縁もあと1回続くのじゃ…。