エプロンを着けたWA2000が戻ってきた。
「おはよう、リサ。エプロン似合ってるな。そのまま嫁に行くか?」
「おはようジョージ。いっぺんその頭叩いてあげようか?そしたらその軽い口が重くなるかもね」
手厳しいお言葉を頂いてしまった。
なおその後ろでカラビーナが髪を結い上げエプロンを装着していたのを見逃さなかった。
「そういう訳ではいこれ」
「…え?あぁ、ありがとな」
差し出されたコーヒーを受け取る。
昨日カフェイン摂取のし過ぎで倒れるまで飲んだのを思い出す。
…せっかく相棒が興味を持ったことなんだし、付き合ってやらない道理は無い。
恐る恐る口を付ける。
「………あ……旨い」
「よし…!」
思わずリサが小さくガッツポーズを取る。
視線を向けると慌てて手を振った。
昨日出されたコーヒーは正直飲めた物では無かった。
「戦術人形ってのは末恐ろしいな…コツを掴んだらまたそのまま再現出来ちまう」
「私達の頭は比喩抜きでコンピューターだから。慣れればこんなもんよ」
「これで何時でもお前に淹れて貰えるな」
「基地に豆はないわよ」
「…そうだった」
「ジョージさん!わたくしのも!わたくしのも飲んでください!」
リサと俺の間にカラビーナが割り込んでくる。
…彼女の出すコーヒーは胸焼けを起こす程濃かったのを思い出す。
でも、せっかく淹れてくれた物を無碍にするほどロクデナシでは無かった。
「ありがとう、いただくよ」
瞳がキラキラさせながらガン見してくる。
飲みにくい…。
「…お、悪くない…けど、なんか変な味だな」
「ふ、ふふふ!
「ん?ああ……………( ゚д゚)ハッ!」
カラビーナが着ているワイシャツのボタンを上から外しながら近づいてくる。
リサが慌ててカラビーナを後ろから羽交い締めた。
「カラビーナ、あんたまさか!」
「お前ホント…ホント残念だな…」
「この際プライドは抜きでしてよ!どれだけジョージさんが汚れようと、最後にわたくしの隣に居てくれれば!!」
「お前が汚しに来てんじゃねぇか!」
やられた。
昨日散々チャンスがあったのにやらなかったのは今日油断させる為…。
薬を盛られた…恐らく媚薬の類。
「………ん?」
「あら?」
…それにしては、心臓もそんなに激しく鼓動をしていないし、体温もそんなに高くない。
「え、カラビーナ…怒らないから正直に言ってくれ」
「な、何でしょうか…?」
「盛った?」
「はい」
即答。
しかし、俺の体に変化は無い。
傭兵時代に投与された睡眠薬とか普通に聴いたのに。
「…何ともない。何でだ?」
「そ、そんな…?!」
「あ、ちょっと!」
カラビーナがリサの拘束を振り払って俺に飛び込んできた。
思わず受け止める。
微かなコーヒーの匂いと、何となく甘い匂いがした。
…が、
興奮は、無い。
「…せっかくお義母様に頂いたのに…」
「あの人俺をどうしたいんだ」
母の愛が怖い。
やっぱり親父は母さんが怖くて逃げたんじゃ…。
「まぁ、お前は充分魅力的なんだし手段さえ考えてくれれば危ないかもな?」
「え、ひぇ……はひ」
「…馬鹿…それで単純ね、アンタも」
リサに呆れられた気がする。
「…しかし、何で効かないんだ…?薬が古いからか?」
何となく不穏な要素を残しつつライフル達といちゃつく男。
ちなみにスプリングフィールドは裏で豆挽いてました。
媚薬が効かない理由はまた後日にでも。