その電脳には、拷問の記憶が焼き付いていた。
「嫌…やだ…来ないで…!」
「わーちゃん!?わーちゃんどうしたんですか…きゃっ、」
「相棒!」
ドアを開けるのももどかしくて体当たり気味にぶつかる。
明かりは既に点いている…が、リサは隅で頭を抱えて震えていた。
春が手を伸ばしたら、その手を払い除けて拒絶している。
…相手が春だと認識で来ていないのか?
「ジョージさん、これって…」
「…ドリーマーに拉致されて拷問された時の記録がフラッシュバックしたのか」
「ジョージ、それってどういう事ですか!?わーちゃんが、拷問された!?」
「春…知らなかったか…それは」
「ジョージさん。今はリサさんを何とかしてあげて下さい。あの子には貴方が必要です」
「…ああ」
リサに近付く。
足音が近くなる度に、リサは泣き叫んだ。
痛ましい。
「嫌、嫌、嫌ぁぁぁぁぁ!!やめて、痛くしないで!!返して!!」
「…リサ。リサ?リーサ。どうしたんだい?こっちを向いて」
手を伸ばす。
その手ははたき落とされた。
戦術人形の腕力をそのまま受けたので、腫れ上がる。
「ジョージ…!」
「大丈夫だ」
近付く度にリサから反撃が飛んでくるが、避けない。
気が飛びそうになるほど痛い。
「リサ」
「…あ」
なんとか近付いて、震えるリサを抱きしめる。
そのまま俺の胸…心臓の鼓動が聞こえるように、耳を押し当てる。
「俺の声が聞こえるか?そのまま、鼓動を数えて、深呼吸だ」
「ジョー…ジ…?」
「よしよし…良い子だ。俺はここに居るよ…そのまま、目を閉じて」
「やだ…どこにも行かないで…」
「大丈夫だ。ずっと一緒にいる」
「置い……て…かないで………」
…軽く寝息が聞こえて、スリープに入った事を確認した。
「…はぁ」
「ジョージさん。そのままリサさんを寝かせて…一緒に休んできなさい」
「そう、します…痛った…その前にちょっと手当したい」
「ジョージさん、こちらに…」
「…ごめん、ちょっと動けないわ」
カラビーナが救急箱を用意していたが、リサを抱えていたので無理に動けない。
…カラビーナと春が俺のあちこちを冷やしたりしてくれた。
こりゃ明日痣になるわ。
「ジョージ。わーちゃんに、何が」
「…リサの部隊が、鉄血のドリーマーに襲われて…そのまま拉致された」
「それで、何を思ったのかずっと拷問されたていたらしいです…ハッキングされて、痛覚も切れず…」
「そんな、事が…」
手当ても終わったので、リサを抱えて立ち上がった。
…少しバランスを崩し掛けたが、二人に支えられた。
「ジョージ。一つだけ聞いていいですか」
「…答えられることなら」
「どうして、わーちゃんの記憶を消さないんですか」
「本人が、拒んだんだ。理由は判らない」
「…そう、ですか」
春は黙ってしまう。
俺は、そのままリサを寝室へ連れて行った。
…リサを寝かせる。
寝息も安定している。
これなら大丈夫そう…、
「…ん?」
服の袖をしっかり掴まれてしまっている。
…無理矢理離すのは、何だか気が引けた。
「…付き合うよ、相棒」
袖の代わりに手を握らせる。
…やらなきゃいけない事、増えたな…。
「…身体中痛ぇ…ったく、手加減無しで殴りやがって…」
空いている方の手で、リサの頬を軽く撫でた。
「…ごめんな。俺のせいで」
彼女の電脳に焼き付いてしまった記憶。
あの時WA2000の意見を封殺してまでバックアップの状態まで戻すべきだったんだろう。
俺は、それをしなかった。
「指揮官失格だな…」
「ジョー…ジ…」
呼ばれた気がして視線を上げる。
…リサは、眠っている。
「…寝言かよ。ほんと、人間かと思うよ…お前達は」
「一緒に…ずっと…」
「…あぁ。俺たちはバディだ。死ぬまでずっと」
一晩中、手は離されなかった。
わーちゃんにトラウマ持ち属性が追加されました。
勘違いして欲しくないので余計かもしれませんが言っておきます。
わーちゃん大好きですよ、誓約するくらい。
けど展開上こうなってしまう…誰か俺を殴ってくれ。