IOPの本社はグリフィン傘下の最も大きな市街と隣接している。
そのため、ここらに用事のある指揮官は大抵この街に寄ってから帰るのが基本となっていた。
「さて、トカレフ。何か希望はあるか?」
「希望…ですか?そんな、特には無いですけど」
空が赤みを帯びてきた夕暮れ時。
この区画は比較的夕日がきれいに拝める。
…この世界の空は、基本的に青くない。
昔は青い空が当たり前だったらしいが、管理区画を一歩出れば曇り空が続いている。
「綺麗ですね…S-12じゃ、こんなの見れません」
「向こうはまだまだ最前線だからな…戦局が安定すれば後方に管理区を設けるらしい」
「街が出来るってことですか?」
「ああ。燻ってるやつらに、あそこで戦う意味をようやくやれる」
後方に守るべき物があると自覚すれば、少しはやる気に関わってくるだろうか。
「…少なくとも私は、守らなきゃいけない人がずっと近くにいるんですけどね。私のモチベーション、ちゃんと管理してくださいね」
「勿論だとも、俺の
「何ですかそれ」
「昔、貴族を守る兵士の事を騎士と呼んでいたらしい…ま、俺はそんな身分じゃないがな」
金とは無縁の人生を今の所送っている。
「何ですかそれ」
「何なんだろうな」
「えぇ…」
「ははは…久しぶりだな、お前と二人だけなの」
「そう、ですね…」
「休みの間、何してた?」
「え?そうですね…指揮か…いえ、特に」
ばっ、と俺の上着を探る。
…襟の裏に、盗聴機が着いていた。
「…トカレフ?」
「〜♪〜♪」
口笛吹きながら明後日の方を向いている。
この子は本当に…。
「なぁ、WA2000のアレは、聴いたか」
「それが、指揮官の実家に着いた辺りから聞こえなくて」
バレたんだろうな、母さんに。
しかし気が付かなかったとは…不覚。
「あ、あはは…」
「笑って誤魔化さない。ったく、仕方の無い子だ」
「ジョージさんに言われたくありません」
「なにおー」
ぐしゃぐしゃとトカレフの頭を撫で回す。
何だかんだ彼女達の頭を撫でるのは、単純に髪がサラサラしてるからとか思ってたりする。
「も、もう!髪が乱れます!」
「ごめんごめん」
「もし、少し宜しいでしょうか」
二人で振り返る。
…全身を黒で統一した髪の長い少女が、そこに立っていた。
髪も服に負けず黒い。
黒のつば広帽を目深に被っているので、表情は伺い知れない。
「…何でしょうか」
トカレフが警戒しつつ、腰の銃に手を伸ばした。
「いえ、そちらの男性に」
「俺に何の御用でしょうか、レディ?」
「むっ…」
「この辺りに白い髪を二つ結びにした…丁度その人形と同じくらいの背格好をした子を知りませんか?どうも逸れてしまって」
なんと言うか、甘ったるい声がする。
頭の中でひたすら警鐘が鳴っているが、理由が解らない。
「力になれなくて申し訳無い」
「いえ、そんな…ありがとうございます。どこに行ったのかしら…あのお馬鹿さん」
「お馬鹿さん…」
「あら嫌だ。失言でしたね…それでは、ごきげんよう…ジョージィ?」
「!!!待て!!」
「指揮官!?」
身を翻して歩き去ろうとした女性を走って追いかける。
…くそ、気がつかなかったとか役に立たねぇトラウマだな!!
ウィングマンを抜き放ち銃を向け…。
「…チィッ、居ない」
間違いない、奴は…ドリーマーだ。
「なんでグリフィンの支配地域に鉄血が居るんだ…」
「何でなんでしょうか…」
今のでどっと疲れた。
丁度良い時間になったので、そろそろ向かおう。
ドリーマー、生存。
まだまだ因縁は続く。