「おはようございます、ジョージさん」
グリフィン本部、朝の廊下。
久しぶりに仕事が片付いたので、射撃訓練でもしておくかと思い射場に向かう最中。
声の主はニコニコと手を振っていた。
鮮やかな栗色の髪を結った落ち着いた雰囲気の女性。
…しかし、その肩にはライフル銃が担がれていた。
「おはよう、スプリングフィールド。今日も綺麗だね」
「あらあら。M4さんが怒りますよ。ねぇ?」
「…」
「え"っ」
丁度、俺の死角になるスプリングフィールドの後ろからM4が出てきた。
「え、M4…」
「指揮官、その、これ…」
おずおずと小箱が差し出される。
ピンクのリボンで可愛らしくラッピングされている。
…薬とか入って…。
「ジョージさん。今日がなんの日か知ってますよね」
「2月14日…えっ、まさか」
今どきチョコレートなんて中々手に入らない嗜好品だ。
それを、M4が俺の為に…?
「ありがとう、嬉しいよM4」
「は、はひ…」
箱を受け取ると、M4が顔を真っ赤にして俯いた。
「それにしても、よく手に入ったな…」
「私が余らしてた所に丁度来て、作り方も合わせて一緒に用意したんです」
「あ、あのスプリングフィールドさん!?」
「あらあら、これは言わないほうが良かったかしら」
「う、うううううう!!!」
感情がオーバーフローしてしまい何処かへ走り去ってしまった。
「ちょっとからかい過ぎちゃいました」
「お手柔らかにしてやってくれよ…」
「人払いの手間が省けました。はい、どうぞ」
スプリングフィールドから紙包を手渡された。
…甘い匂いがする。
「スプリングフィールド?」
「M4には悪いですけど。受け取って下さいね」
「ありがとう。…なんで俺に?」
「私、昔ほしい物があったんですよ」
唐突に語り出した。
あー、これはお返しにおねだりされる奴かな。
全くこの子も素直じゃな…。
「でも、その人は指揮官じゃないので私を見てくれないんです」
「…ん?人?」
「けれど、また再会して、そうしたら指揮官になるって言ってたんですよ」
へ、へえー。
それはまた俺と似た境遇の人が。
「…いつまでも待ってますからね、ジョージ」
「……………ヒェッ」
「あと、それ本命ですから。それではごきげんよう」
スプリングフィールドは眩しい笑顔で歩き去って行った。
「…………キミ、キャラ違クナイ?」
ようやく絞り出した言葉はそれだった。
ーーーー夜。
「なーんでバレンタインの夜に合コンなんだよ」
「来たなジョージィ…」
「キャンベル」
場所はグリフィンの支配都市の一角にあるバー。
ここが会場らしい。
「さってぇ、どんな子が来るか楽しみだぜ」
「気が早いぞベネット。もう少し情報を集めてから…」
「きっ、キサマら!?ここで何をしている!!」
おや、この声どこ家で書いた気が。
「げっ」
「ひっ」
ベネットとキャンベルは絶句してしまっている。
どれどれどんな人だろう。
…長い白髪を束ねた、険のある女性だ。
うーむ、ちょっとキツいイメージがあるが好みだ。
「お、おい…」
「お初にお目にかかります、麗しきレディ」
「「えっ」」
「なっ、き、貴様…」
「貴女も今夜の合コンに参加されるのですか?」
「む、そ、そうだが…」
「それは良かった。丁度お近づきになりたいと…」
「ジョージ、待て!早まるな!!」
「ジョージ…む、そうか貴様が…クルーガーさんがヘッドハントしたという」
「…クルーガー?」
はて、なぜ今あのヒゲおやじの名前が。
「ジョージ!その人は…グリフィンのヘリアントス上級代行官だ…」
ウッソだろ。
バレンタインだったので時事ネタを仕込むことに成功した。
さて、波乱の合コンスタートですね(
次回「乾杯!」「出来るかァ!!」