俺の、やるべき事をしよう。
「第一部隊、帰還しました」
グリズリーが気不味そうに報告してくれた。
場所は輸送車両の駐車スペース。
部隊長のグリズリーと…血だらけで気不味そうに目を反らしているスプリングフィールドが居た。
他のメンバーは先に補給と修復に向かわせた。
「あの、指揮官…」
「グリズリー、お疲れさん。いきなり部隊長なんて大役任せたけど、流石だな。経験が違う」
「いえ、そんな…私は」
「流石親父の口説いた女性だと思ったよ…後は任せろ」
軽く頭を撫でて、背中を押した。
…一礼して、グリズリーは去った。
残ったのは、俺と、スプリングフィールドだけ。
「指揮官…その」
「…
る」
「…え」
「無事でよかったよ」
それだけ告げて、俺はとりあえずこの後の業務を速攻で片付ける算段を付け始めた。
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日が随分と地平線に近づいた頃。
俺は屋上で一人空を見上げていた。
…残りの借金、返せるのいつになるのかな…。
「…指揮官、お疲れ様です」
そんな事を考えていたら、背後から声がかけられた。
振り返ると、未だ表情の曇ったスプリングフィールドが立っていた。
「お疲れ、春。異常はないか」
「はい…特には」
「そっか。なら良かった」
スプリングフィールドが隣まで歩いて来た。
「…指揮官、私は」
「良いよ、無理して言わなくて。けど…そうだな、凄かったよ」
母さんの武術を上手いこと模倣していた。
恐らく格闘技能を打ち込まれて最適化した結果なんだろう。
長物を持った格闘術にアレンジがされていた。
「怖いとか、恐ろしいとかでは…無いんですか?」
「カッコよかったぞ」
「…………それ、女性に言うことじゃないと思うんですけど」
「昔読んだコミックヒーローみたいだったぜ。特に最後のカウンター後ろ回し蹴り」
「…う、うぅ…あまり褒めないでください…」
春の顔が夕日に負けず劣らず赤くなっている。
…正直、怖くないと言えば嘘になる。
だが、それ以上に俺は魅せられていたのも事実だ。
「私は…ここに居ても良いのでしょうか」
「毎日春の淹れた珈琲が飲みたいから、居なくなられると困るな」
「…………………口説いてるんですか?」
「さて、どうだと思う?」
肩を竦めて笑った。
春は呆れた様に笑った。
「やっと笑ったな」
「笑わされたんですよ」
「はて、誰のせいだろうな」
「…本当に、貴方は優しいですね」
スプリングフィールドが伏し目がちにそう言った。
彼女に手を伸ばし、抱き寄せた。
特に抵抗はされなかった。
「お前の力が必要だ。だから、ここに居てくれ」
「…本気にしますよ?」
「返事は?」
「ふふ…強引ですね。…………はい。こんな私ですが、貴方の力になりましょう」
彼女は微笑む。
その顔は、夕日よりも眩しくて優しかった。
「…誰にでも優しいんでしょうね、貴方は」
「放っておけない性分でない」
「いつか、痛い目を見ますよ」
「わかってるさ」
そう言うが否や、スプリングフィールドが俺の襟を引っ張り仰向けに俺を転がした。
「いっ」
「…そうやって私の自制を試すんですから」
床に仰向けになった俺の上に座る。
…軽いなぁ。
「春。駄目だ」
「…これ以上は受け入れてくれないんですね」
「悪いがここから先はまだ踏み込ませるつもりは無い」
あくまで人と人形の線引き。
間違えてはいけない。
「…分かってます。貴方はそんな人だって…だから着いていく気になったんですから」
「ありがとう春。俺が押さえてみせる。だから、存分に力を奮ってくれ」
俺はこの日、彼女の凶暴性を受け入れた。
スプリングフィールド回、終了。
凶暴さと穏やかさの二面性を持つ彼女を受け入れた。
しかし、いつの日か…彼女達の想いに答えなければいけない日が来る。
答えを出さなくてはならない。