彼女はそこに居た。
夜空を見上げる。
…見渡す程の、満天の星空だ。
あの人も、今この空を見上げているのだろうか。
「おい、M4。いつまで起きてるつもりだ?」
「姉さん…」
立ち寄った基地の屋上で、私は空を眺めていた。
隣には同じ様に髪に緑のメッシュの入った人形が座った。
M16姉さんだ。
「…星が、綺麗だなぁって」
「星か…たまにはこんな空を肴に飲むのも悪くないか」
「もう、そればっかり」
この人は何かにかこつけては飲もうとする。
私達人形はアルコールで機能が阻害される訳じゃないから別に勝手なのだけど。
でも、今日の私はちょっと変みたいだ。
「姉さん、そのお酒…私もちょっと貰っていいですか?」
「…珍しいな」
「たまには、良いじゃないですか」
「………変わったな。前まで見てると危なっかしくてしょうがなかったのに。急に逞しくなって」
「…指揮官に、いつまでも弱い姿を見せたくないもの」
「指揮官、か…」
姉さんがあまり面白くなさそうに相槌を打つ。
「その指揮官ってのは、やっぱり…アイツか」
「ええ…他に誰かいると?」
「…そんなにあの優男が良いのかね」
姉さんがいつも飲んでいるアルコールをグラスに分けてくれた。
受け取って、一口舐めるように飲んだ。
「…苦い」
「最初はそんなもんだ…で、話したい事あるんだろ」
やっぱり、姉さんにはお見通しだった様だ。
「…本当は、会いたくて仕方ないんです。でも、任務もあって…私は、あの人の配属先も知りません」
「誰も知らなかったもんな…あの指揮官の居場所」
寄った基地の指揮官に訪ねても、知らないの一点張りだった。
「っく、あの人は…何処に居るんでしょう」
「…お、おい…いい飲みっぷりだけどあんま無理すんなよ…?」
「うえぇ…ジョージさぁん…」
「…駄目だこりゃ」
会いたくて会いたくて、私の電脳はいつショートしてもおかしくない程だ。
「ったく…M4。明日にはここ…S-11出るんだから。キャンベル指揮官にちゃんと挨拶するんだぞ?」
「あい…」
「…それと、ほら」
姉さんに渡されたのは…グリフィンが発行している社内報だった。
…何故こんな物を?
「…見てみろよ、ここ」
「…『新人指揮官、ジョージ·ベルロックが鉄血ハイエンドモデルドリーマーを撃破…最前線で快進撃』…姉さん、これって」
「所属は書かれてないけど恐らくアイツだろう。結構骨のあるやつみたいだな」
「…頑張ってるんですね、ジョージさん」
同じ空の下で、めげずに戦い続けているのでしょうか。
「姉さん、お代わりください」
「M4?」
「私も、頑張らないと」
「…そうだな」
いつか、貴方の指揮下で戦えるその日まで…私は、生き残って、強くなってみせます。
…この後、飲みすぎて二人でダウンしていたところにAR-15が来て怒られてしまった。
「指揮官、待っててくださいね…」
次の目的地は…S-12地区だ。
ところ変わって後方にて。
…おや?キャンベル指揮官は確か。
なにげに40話ぶりの再登場でかなり困惑している…。